続・最後の男

深冬 芽以

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22 結婚の条件

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 ロビーを突きあたると、左右に通路が別れている。片方は外来受付へ、片方は入院病棟へ。俺は入院病棟の受付に立っている、マスクをした男性に声をかけた。

「婦人科に入院している、堀藤彩さんに面会したいのですが」

「ご家族ですか?」と言いながら、男性は持っているタブレットをタップする。

「え? いえ。友人……です」

 一気に、気持ちが落ち込んだ。

 他人に示す、俺と彩の関係が『友人』であることに、改めてショックを受ける。

「申し訳ありませんが、ご家族以外は患者さん本人からいただいている面会者リストにお名前がある方でなければ面会できません。確認しますので、お名前をお聞きしていいですか?」

「溝口……智也です」

 確認するまでもない。

 彩が、俺を面会者のリストに含んでいるはずがない。

 わかっていても、それを突きつけられるとツライ。

「申し訳ありません。お名前はありませんので、面会は出来ません」

「そうですか」

 俺はふらふらと受付を離れ、ロビーの壁際に並ぶソファに倒れ込んだ。



 ここまで来て――。



 命に係わらなくても、心配だ。

 彩が何も言わずに俺と別れようとしたのは、病気が原因だったのだろうか。



 病気の女なんて智也の負担でしかない、とか考えそうだしな……。



 背中を丸めて項垂れていると、ふっと目の前が暗くなった。顔を上げると、亮が満面の笑みで俺を見下ろしていた。

「やっぱり、智くんだ!」

「亮?」

「お母さんに会いに来たの?」

「え? ああ」

 亮の背後十メートルくらいのところに、真も見えた。

 明らかに不機嫌そう。

「兄ちゃん! やっぱり智くんだよ」と、亮が振り返って真に言った。

「亮、静かにしろ」

 半年振りくらいに会った真は、以前より背が伸びて、顔つきも大人っぽくなった。亮は身長よりも体つきががっちりしている。子供の成長のなんと早いことか。

「お母さんには会えないよ」と、真が亮の隣に立って、言った。

「俺たちも会えないから、ここでばあちゃんを待ってるだけだし」

「そっか……」

「お母さんと別れたんじゃないの」

 彩がそう言ったのか。

 真がそう感じたのか。

「……別れたっつーか、振られた?」と、俺は苦笑いをした。

「……」

 情けなさすぎて、泣けてくる。

 俺は両手で頭を抱えた。

「真は俺が嫌いか?」

「は?」

「やっぱ、俺がお母さんと付き合ってんの、嫌か?」

「そんなこと――」

「どうしたら、許してくれる?」

 情けなさに輪をかけるように、俺は中学生の子供に縋った。他に、打つ手がわからない。

「俺は、お母さんのことめちゃめちゃ好きなのに、家族じゃないからって蚊帳の外とか、嫌なんだよ。だから――」

「かやのそと、ってなに?」

 亮が聞いた。

「仲間外れ、ってこと」と、真が当然のように答える。

「智くん、仲間じゃないしょ」

「例えばのはな――」

「智くんはお母さんの旦那さんになるんでしょ?」



 え――――?



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