続・最後の男

深冬 芽以

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22 結婚の条件

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 きっと、父親の言葉だ。

 そんな気がした。

 俺が彩と結婚するために越えなければならない最大の試練は、真だ。

 真は父親と母親の不仲を目の当たりにしていた。父親が母親を怒鳴る姿も。

 年齢以上にしっかりしているのは、自分が母親と弟を守らなければ、という責任感からかもしれない。本人は無自覚かもしれないが。

「仕事、好きなんだよ」 

「え?」

「仕事、楽しいから、働くのは嫌じゃないし、趣味とかないからあんま金使わないんだよ」

「……」

「好きな高校行っていいぞ? 大学も。それくらいの金はあるし、なくなっても働いていればどうにでもなる。俺は、彩の作った飯が食えたら、それでいい」

「なに、それ」と、真が苦笑いする。

「ご飯の為にお母さんと結婚するの」

「そうだよ」

「お母さんのご飯食べたいだけで、俺たちの為に何千万もお金使うとか、デメリットだらけじゃん!」

『デメリット』という言葉が引っ掛かった。

 中学二年生の使う言葉だろうか?

 最近の子供のことはわからないが、恐らく彩の言葉を聞いたのだろう。

「メリットも、ある」

「お母さんのご飯? 何千万もの価値なんか――」

「彩といると、幸せだ」

 自分がこんな台詞を口にするなんて、数年前の俺には想像もつかなかった。

「すげー、メリットだろ?」

 俺をこんな風に変えたのは、彩だ。

 その責任は、取ってもらう。

 最期まで。

「頼む、真。俺を――」

「いいよ!」

 俺の言葉に被せて、真がハッキリと言った。その声は、亮とよく似ていた。

「俺も亮も、そんなにいい子じゃないけど、悪い子にはならないと思うから、いいよ」

「え?」



「お母さんと結婚して、いいよ」



 真が、こぼれる前に涙を拭う。

「俺と亮は大きくなったらお母さんと一緒に暮らせなくなるかもしれないから、智くんはお母さんとずっと一緒に暮らしてよ」

 初めて、真に『智くん』と呼ばれた。

「お母さんのいい旦那さんになってくれたら、俺たちにとってもいいお父さんだと思うよ」

「し……ん」

「だけど、一つだけ条件があるんだ――」

 その条件には驚いたが、後になってそんな条件を出した真の優しさに、言葉を失った。

 俺はきっと、一生、真には勝てない。

 だが、肩を並べるくらいには、なりたい。

 子供だからとか、息子だからとか、関係ない。

 同じ男として、形は違えど同じ彩を愛する者として。

 時間は、ある。



 俺のこの先の人生は、彩と共にあるのだから――――。


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