15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~

深冬 芽以

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3.後悔していますか?

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「時計、修理に出したから」

 チェストの上に置かれていた時計がなくなっていることには気がついていた。

 和輝が、引き出しにしまったのだろうと思っていたから、聞きもしなかった。

「あんまり高くなりそうなら、直さなくても――」

「――直すよ」

 珍しく、きっぱりと言った。



 私からのプレゼントだと思い出した……?



 そうだとしても、今、夫の腕には元カノとお揃いの腕時計がある。



 私がそれを知っていることまでは、知らないからね。



 夫の持ち物は多くない。

 あまり欲のない人で、気に入ったものを長く使う。

 そして、気に入ったものは大抵長持ちする。

 私が夫の好きなところの一つだ。

 私は安物買いに走りがちだから、真似なければと思う。

 だが、その気に入ったものを見つけるまでは、並々ならぬ吟味に時間をかける。

 加えて、優柔不断だ。

 最後は、彼の反応を見て、私が後押しする形だ。

 それをわかっているから、彼は私を連れて歩きたがる。

 実家の修繕も、そうだ。

「おばーちゃん家に私の部屋作ってくれないかなぁ」

 後部座席から和葉が言った。

 由輝は塾があるから置いて来た。

「なんで和葉の部屋?」

「別宅、みたいな?」

「何か、お母さんに隠したいものでもあるわけ?」

「ないよぉ。けど、なんかいーじゃん! 家に帰りたくない時の家出先」



 それ、私が欲しいわ。



「そもそも、雨漏りした屋根とか壁の修理だろ。リフォームとは違うんだから」

「いーじゃーん! 思い切ってリフォームしちゃおうよ。畳の部屋なくしてさ」

「和葉。お祖母ちゃんにそんなこと言っちゃダメだからね」

 和輝の実家は築四十数年。

 和輝が生まれる少し前、お義父さんとお義母さんが結婚した少し後に建てられた。

 私と和輝が結婚した頃に水回りのリフォームをしただけで、他はほぼ手つかず。外壁もひび割れてきてようやく塗り直すくらい。

 お義父さんが長男で、いずれ親の面倒を見ることになったら大々的にリフォームをするつもりで手をかけずにいたのだが、当のご両親は早々に施設に入り、早々に亡くなってしまったから、家に手をかけるタイミングを逃したらしい。

「屋根の修理だけで済めばいいけど」

「んー……。剝がして見たらあちこちイカレてるってことになりそうだよな」

「そういうのも含めて和輝に相談したいんじゃない?」

「別に、詳しくないけど」

「二人だけで決めるのが心配なんでしょ」

 最近は、高齢者を狙ったリフォーム詐欺もあるとワイドショーで見た。

 せめて、工事業者がまともかは確認しないと。

 そんな心積もりで赴いたのに。

「バリアフリーにリフォームしようと思うの」



 バリアフリー!? 屋根は?



「折角なら、屋根だけじゃなくて全部リフォームした方が安くしてもらえるみたいなのよ」と、お義母さんが昨日の日付の入った見積書や図面を広げる。

「一千八百万!? 建て直しも同然だろ」

 まさかの金額に、和輝も声が大きくなる。

「そうなの! でね? 平屋が流行ってるんですって、今。知ってた? 確かに、私たち二人じゃ二階に上がることもほとんどないし、車も手放したから、車庫を潰して家を広げたらって言われたの。段差をなくして、お風呂も座れるようにして? 台所の上の棚も手が届かないから要らないし」
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