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番外編*十五年目の煩悩
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しおりを挟む店内に客は俺と、和葉より少し年上に見える制服を着た女の子が三人だけ。雑貨を見て笑っている。
「柚! それは後で俺か瞳がやるから、もう帰れって」
店長の声。
「でも――」
「――そうですよ、永吉さん。俺がやっときますから」と、学生らしい男。
「じゃあ、お願いします」
もうすぐ出てくるようだ。
俺は替え芯を持ってレジに行く。
眼鏡をかけた真面目そうな、俺よりも背の高い男が、小さな替え芯のバーコードを打ち、小さな袋に詰めた。
「ありがとうございました!」
元気だな、と思った。
俺は受け取った袋を鞄に入れる。
「じゃあ、お先に失礼します」
「おう、お疲れ」
レジの後ろから柚葉が出てきて俺と目が合う。
「あ、和――」
「――柚! 首になんかついてる」
後ろからぬっと伸びてきた筋肉質な手が、柚葉の首に触れた。
「えっ? ひゃ――」と、柚葉が肩を竦める。
「――値札! どっからつけてきたんだよ」と、店長が指先に張り付いた値札を笑って見せた。
「え? やだ。値札取れてる商品ある?」と言いながら、柚葉が首筋を押さえる。
「いや? 金額入ってないから、ラベラーから取れたんだろ」
「そ? ならいいけど」
ははは、と笑った店長が俺を見た。
「あ! 柚の旦那さん。こんにちは」
「こんにちは」と、俺も返す。
うまく笑えている気がしない。
「え? 永吉さんの旦那さん? あ、えと、奥さんにはいつもお世話になってます」と、学生が頭を下げる。
「いえ、こちらこそ」と、俺も頭を下げる。
やはり、ぶっきら棒になってしまっていると思う。
「じゃな、柚。お疲れ」
「うん。お疲れさまでした」
「お疲れさまでーす」
店長と学生に見送られて、俺たちは店を出た。
なんだろう。
悶々とする。
「どうしたの? 先に帰ってるんじゃなかった?」
「ちょっと遅くなったから、駅前で軽く食ってた」
「あ、そうなの? 大丈夫? 仕事」
「大丈夫」
家に帰ると、ちょうど和葉が帰って来た。
俺は着替えて、一泊と明日の学校の準備を済ませた和葉を、柚葉の実家に送って行った。
「ね? なに食べに行くの?」
「んー……」
考えていなかった。
「昨日は焼肉だしねぇ」
「んーー……」
いつも、外食は子供たちの食べたいもの優先で、特にこだわりも好みもない俺は言われるがままに車を走らせるだけ。
「せっかくだから、子供たちが一緒じゃ食べられないものがいいよね」
「んーーー……」
ふと気が付く。
こういう時、柚葉が何を食べたがるか、知らないな。
己の不甲斐なさに、また落ち込む。
だが、ため息が出そうになって、ひゅっと止めた。
あ……!
「昔よく行った定食屋、まだあるかな」
「え?」
「俺ん家の近くの」
「ああ!」
「行ってみるか」
「うん」
柚葉が好きだった。
好きな総菜が選べる定食屋で、夜は酒も提供する。
柚葉は酒を飲まないけれど、当時俺が住んでいたマンションが徒歩圏内だったから、その店でだけ俺はビールを飲んだ。
懐かしさ半分と、変わってしまった街並みに寂しさ半分で思い出話なんかしながら店を目指す。
「あ……った」
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