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2章 帝国の呪い
2-87 手を差し伸べたのは、
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「ベモガー、無事かっ」
叔父上が出入口から駆け込んできた。
コックコートの長袖を捲り、エプロンはしていないが、完全に料理人の姿である。
叔父上が直線的に駆け寄ろうとして、棺の周囲を飾る花々が舞う。
私を助けに来たヒーロー、なのだが、今ひとつ格好が様にならない。
叔父上は料理人姿のときは無精ヒゲをはやして、ちょいワル風を装っている。
いつもの軍服姿ならまさにヒーローなのだが、なぜそっちの格好で来たのか。
叔父上が着替えてたら、私は刺されていたに違いない。
仕方ないのだが。
「叔父上、とまってー。それ以上近寄ったら、ベモガー兄上の首を吹き飛ばすよー」
暗い声で、フィーアは俺の首筋に手を当てている。
ヒンヤリとして体温を感じない手が、真夏なのに気持ちいい思うにはほど遠い。
悔しそうな表情になった叔父上の足はとまる。
「ベモガーっ、魔法で防御はっ」
「できないっ。魔法が封じられている」
顔を歪ませる叔父上。
叔父上と私はほとんど同年輩。
叔父上の方が僅かに年上だが、公式の場以外ではお互いタメ口である。
「ははっ、油断したなあ。でも、さすがに一人で来るなんて無謀だよ、叔父上。棺のまわりに魔法障壁も張ったし、もう手も足も出ないでしょう?」
「得物を出してくれ」
叔父上は言った。
誰に?
姿を隠した護衛でもいるのか。
、、、?
肩に何かいる。
薄暗いので良く見えないが。
「、、、クロ、包丁じゃなくて、長剣とかないか」
叔父上が包丁を手に持ったが、肩にのっている黒ワンコに返却している。
「そりゃ、料理人の得物は包丁だが、今、必要なのは武器」
黒ワンコの目が、あーはいはい、わっかりましたー、みたいな返事をしている気がするのはなぜだろう。
そして、なぜか叔父上が望んでいる長剣ではなく、大剣が叔父上の手に。
ずっしりと重そう。
「クローーーー?何で、メーデが振るいそうな大剣を出すんだ?メーデならともかく、私じゃあ振り回される」
とか言いながら、ウキウキ顔で両手で持ち直すのは何でかな?
確かに、大剣って男なら一度は憧れるんだよな。
皇族は剣の訓練も必須だが、振らない剣は触らせてももらえない。
大剣は危ないので触る必要がありません、とか幼い頃に言われて。叔父上もその口だったか。
メーデのような大男が振り回すのは違和感がないが、小柄で細身な男が大剣を持っているのも格好良いと感じる。
まあ、叔父はわりと細身だが、訓練はしているし身長もほどほどにある。
料理人姿の人間が長剣だろうと大剣だろうとかまえるのは違和感しかないが。
「へ?これ、クロウがくれたのか?廃棄物処理のためじゃあないよな。魔剣の類か。魔力を吸ってるな」
黒ワンコはワンワン言っているようにしか聞こえないが、叔父上と会話しているのはわかる。
「え、叔父上?」
フィーアも私も叔父上のその大剣について冷や汗が流れてくる。
魔力をえげつなく吸い取ってないか?
叔父上の魔力量なら本人は問題ないだろうが、その攻撃を受ける側はどうなる?
「ポシュの魔剣エクスカリバー、実は私も欲しいと思っていたんだ。とりあえず、フィーアの魔法障壁をぶっ潰すか」
「叔父上ーーーっ?」
顔面蒼白になる。
叔父上は私も殺す気か?
魔法障壁をぶっ潰すだけで終わる気がしない。
「くそっ」
フィーアは俺の頭を押さえ、棺に俺を隠して、自分も体勢を低くする。
叔父上が嬉々とした顔で大剣を振るった。
爆音の後。
パララ、、、と、瓦礫と化した一面の壁から、名残の欠片が降ってくる。
「うわ、すごい威力だな。こりゃ過剰防衛ってヤツになるんじゃないか。帝城の壁、一部とはいえ壊れたなあ。魔法で補強されている壁だったのに」
フィーアが張った魔法障壁なんて元からなかったかのように綺麗に消えている。
叔父上の攻撃を受けた頑丈だったはずの壁は崩壊し、霊廟の建物が見えてしまった。
帝城は魔法の攻撃でもびくともしない、と言われていたのだが。
かなり強力な魔法でもヒビひとつつけること叶わず、と言われているくらいなのだが。
スッと立った叔父上が。
「、、、クロ、普通の剣を出してくれ」
えー?何言ってやがるんですかー?という目で叔父上を見る黒ワンコ。
目は口ほどにものを言う。
弱いんだからそのくらいの大剣持ってなよ、とでも言いたげな。
弱い?
叔父上が?
解釈を間違ったかな、と思ってもう一度素直な心で見直しても、黒ワンコの目は言っている。
「魔力消費量も莫大なんだから、変更してよ」
黒ワンコがそっと小瓶を渡している。
「いや、魔力回復薬じゃなくて、、、まあ、ありがたく飲むけど」
飲むんかーいっ。
しかも、魔力消費量が莫大だったってきちんと自覚しているじゃないかっ。
あんな攻撃喰らったら、死ぬだけじゃなく、遺体として多少の肉片くらいは残っていたのだろうか?
「くそっ、あの大魔導士がこの場に来なかった時点で、勝機は我が手にあるものだと思ったのに。そんな武器を持たせるとは」
「ああ、いや、大剣を扱えるメーデに渡さなかったのは個人的私怨によるもので、私の手元にあるのは、ただの運だ」
運だけで、その武器をもらえるというのは認識が間違っていると思うが?
確かに大剣ならばメーデという印象があるが、それだけの関係性が構築されてなければ大魔導士だってそれほどの武器を与えることはない。
ゴミのように大量に魔剣を所持しており、捨てるように他人に与えるヤツがいたら見てみたい。
「大魔導士殿が叔父上にその剣を与えたのなら、それなりの情があるからだろ」
呆れたように言ってやった。
「あ、そうそう、ベモガー、その大魔導士殿は大魔導士と呼ばれるのを極端に嫌う。本人には名前で呼べ、絶対に」
「いや、今はそんなこと言ってないんだけど」
会話が噛み合ってないぞ、叔父上。
叔父上が笑顔で私を見た。
「トリステラのように死んだ方がマシだという窮地に陥りたくないのならば、絶対に名前で呼べ」
「え、トリステラ?死んだ方がマシって、、、え?」
会話がどこまでも脱線している気がするが、コレがトリステラに用意された棺だったはずなのだが?
今日の葬儀はトリステラの葬儀ではなかったか?
「クロウと名前で呼んでいれば、大樹海に放り込まれることはない。皇帝陛下だってトリステラ以上の馬鹿をやっているのにクロウに許されているのは、人を人として扱っているからだ」
「まさか、トリステラはクロウ殿に大樹海に飛ばされたのかっ」
「あ、そうそう、その話はサザーラン皇帝陛下には内緒ね」
可愛く言っても騙されないぞ。
「内緒って、葬儀までして、そんなことをしたら」
「皇帝陛下にバレたら、人員がねー」
叔父上の不吉な言葉に、私はフィーアの手を振り払い立ち上がった。
「まさか、大樹海の大捜索を?」
にっこりと笑う叔父上に、秘密の共有を強制的にさせられたことを悟った。
皇帝陛下に命令されたら終わりだ。
あの大樹海の大捜索をしなければなくなる。
今は大きな戦争をやってないとはいえ、軍人が足りているとは言い難い。
今回のように突発的なことも起こる。
出入口に人影がいるのが見えた。
「うわー、聞かなきゃ良かった」
「隊長、あと一分遅ければ良かったんじゃないですか?」
皇帝直属の精鋭部隊の数人がいち早く駆けつけてくれた。
叔父上があの大剣で放った爆音である。
広い帝城だが、さすが精鋭部隊だ。
「フロレンス、どうしよう」
「聞かなかったフリでもしてください」
なーんかごにょごにょ言っているけど。
皆、頭を抱えているけど。
確かに私も聞きたくなかったけど。
「げっ、何だ、この壁っ」
「うわー、、、まさか、その大剣で?」
それと同時に、精鋭部隊は周囲の状況を確認し始めていた。
「ああ、うるさいなあ」
フィーアを無視した展開は、それはそれは当事者にとって面白くないことこの上ないだろう。
叔父上が出入口から駆け込んできた。
コックコートの長袖を捲り、エプロンはしていないが、完全に料理人の姿である。
叔父上が直線的に駆け寄ろうとして、棺の周囲を飾る花々が舞う。
私を助けに来たヒーロー、なのだが、今ひとつ格好が様にならない。
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いつもの軍服姿ならまさにヒーローなのだが、なぜそっちの格好で来たのか。
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仕方ないのだが。
「叔父上、とまってー。それ以上近寄ったら、ベモガー兄上の首を吹き飛ばすよー」
暗い声で、フィーアは俺の首筋に手を当てている。
ヒンヤリとして体温を感じない手が、真夏なのに気持ちいい思うにはほど遠い。
悔しそうな表情になった叔父上の足はとまる。
「ベモガーっ、魔法で防御はっ」
「できないっ。魔法が封じられている」
顔を歪ませる叔父上。
叔父上と私はほとんど同年輩。
叔父上の方が僅かに年上だが、公式の場以外ではお互いタメ口である。
「ははっ、油断したなあ。でも、さすがに一人で来るなんて無謀だよ、叔父上。棺のまわりに魔法障壁も張ったし、もう手も足も出ないでしょう?」
「得物を出してくれ」
叔父上は言った。
誰に?
姿を隠した護衛でもいるのか。
、、、?
肩に何かいる。
薄暗いので良く見えないが。
「、、、クロ、包丁じゃなくて、長剣とかないか」
叔父上が包丁を手に持ったが、肩にのっている黒ワンコに返却している。
「そりゃ、料理人の得物は包丁だが、今、必要なのは武器」
黒ワンコの目が、あーはいはい、わっかりましたー、みたいな返事をしている気がするのはなぜだろう。
そして、なぜか叔父上が望んでいる長剣ではなく、大剣が叔父上の手に。
ずっしりと重そう。
「クローーーー?何で、メーデが振るいそうな大剣を出すんだ?メーデならともかく、私じゃあ振り回される」
とか言いながら、ウキウキ顔で両手で持ち直すのは何でかな?
確かに、大剣って男なら一度は憧れるんだよな。
皇族は剣の訓練も必須だが、振らない剣は触らせてももらえない。
大剣は危ないので触る必要がありません、とか幼い頃に言われて。叔父上もその口だったか。
メーデのような大男が振り回すのは違和感がないが、小柄で細身な男が大剣を持っているのも格好良いと感じる。
まあ、叔父はわりと細身だが、訓練はしているし身長もほどほどにある。
料理人姿の人間が長剣だろうと大剣だろうとかまえるのは違和感しかないが。
「へ?これ、クロウがくれたのか?廃棄物処理のためじゃあないよな。魔剣の類か。魔力を吸ってるな」
黒ワンコはワンワン言っているようにしか聞こえないが、叔父上と会話しているのはわかる。
「え、叔父上?」
フィーアも私も叔父上のその大剣について冷や汗が流れてくる。
魔力をえげつなく吸い取ってないか?
叔父上の魔力量なら本人は問題ないだろうが、その攻撃を受ける側はどうなる?
「ポシュの魔剣エクスカリバー、実は私も欲しいと思っていたんだ。とりあえず、フィーアの魔法障壁をぶっ潰すか」
「叔父上ーーーっ?」
顔面蒼白になる。
叔父上は私も殺す気か?
魔法障壁をぶっ潰すだけで終わる気がしない。
「くそっ」
フィーアは俺の頭を押さえ、棺に俺を隠して、自分も体勢を低くする。
叔父上が嬉々とした顔で大剣を振るった。
爆音の後。
パララ、、、と、瓦礫と化した一面の壁から、名残の欠片が降ってくる。
「うわ、すごい威力だな。こりゃ過剰防衛ってヤツになるんじゃないか。帝城の壁、一部とはいえ壊れたなあ。魔法で補強されている壁だったのに」
フィーアが張った魔法障壁なんて元からなかったかのように綺麗に消えている。
叔父上の攻撃を受けた頑丈だったはずの壁は崩壊し、霊廟の建物が見えてしまった。
帝城は魔法の攻撃でもびくともしない、と言われていたのだが。
かなり強力な魔法でもヒビひとつつけること叶わず、と言われているくらいなのだが。
スッと立った叔父上が。
「、、、クロ、普通の剣を出してくれ」
えー?何言ってやがるんですかー?という目で叔父上を見る黒ワンコ。
目は口ほどにものを言う。
弱いんだからそのくらいの大剣持ってなよ、とでも言いたげな。
弱い?
叔父上が?
解釈を間違ったかな、と思ってもう一度素直な心で見直しても、黒ワンコの目は言っている。
「魔力消費量も莫大なんだから、変更してよ」
黒ワンコがそっと小瓶を渡している。
「いや、魔力回復薬じゃなくて、、、まあ、ありがたく飲むけど」
飲むんかーいっ。
しかも、魔力消費量が莫大だったってきちんと自覚しているじゃないかっ。
あんな攻撃喰らったら、死ぬだけじゃなく、遺体として多少の肉片くらいは残っていたのだろうか?
「くそっ、あの大魔導士がこの場に来なかった時点で、勝機は我が手にあるものだと思ったのに。そんな武器を持たせるとは」
「ああ、いや、大剣を扱えるメーデに渡さなかったのは個人的私怨によるもので、私の手元にあるのは、ただの運だ」
運だけで、その武器をもらえるというのは認識が間違っていると思うが?
確かに大剣ならばメーデという印象があるが、それだけの関係性が構築されてなければ大魔導士だってそれほどの武器を与えることはない。
ゴミのように大量に魔剣を所持しており、捨てるように他人に与えるヤツがいたら見てみたい。
「大魔導士殿が叔父上にその剣を与えたのなら、それなりの情があるからだろ」
呆れたように言ってやった。
「あ、そうそう、ベモガー、その大魔導士殿は大魔導士と呼ばれるのを極端に嫌う。本人には名前で呼べ、絶対に」
「いや、今はそんなこと言ってないんだけど」
会話が噛み合ってないぞ、叔父上。
叔父上が笑顔で私を見た。
「トリステラのように死んだ方がマシだという窮地に陥りたくないのならば、絶対に名前で呼べ」
「え、トリステラ?死んだ方がマシって、、、え?」
会話がどこまでも脱線している気がするが、コレがトリステラに用意された棺だったはずなのだが?
今日の葬儀はトリステラの葬儀ではなかったか?
「クロウと名前で呼んでいれば、大樹海に放り込まれることはない。皇帝陛下だってトリステラ以上の馬鹿をやっているのにクロウに許されているのは、人を人として扱っているからだ」
「まさか、トリステラはクロウ殿に大樹海に飛ばされたのかっ」
「あ、そうそう、その話はサザーラン皇帝陛下には内緒ね」
可愛く言っても騙されないぞ。
「内緒って、葬儀までして、そんなことをしたら」
「皇帝陛下にバレたら、人員がねー」
叔父上の不吉な言葉に、私はフィーアの手を振り払い立ち上がった。
「まさか、大樹海の大捜索を?」
にっこりと笑う叔父上に、秘密の共有を強制的にさせられたことを悟った。
皇帝陛下に命令されたら終わりだ。
あの大樹海の大捜索をしなければなくなる。
今は大きな戦争をやってないとはいえ、軍人が足りているとは言い難い。
今回のように突発的なことも起こる。
出入口に人影がいるのが見えた。
「うわー、聞かなきゃ良かった」
「隊長、あと一分遅ければ良かったんじゃないですか?」
皇帝直属の精鋭部隊の数人がいち早く駆けつけてくれた。
叔父上があの大剣で放った爆音である。
広い帝城だが、さすが精鋭部隊だ。
「フロレンス、どうしよう」
「聞かなかったフリでもしてください」
なーんかごにょごにょ言っているけど。
皆、頭を抱えているけど。
確かに私も聞きたくなかったけど。
「げっ、何だ、この壁っ」
「うわー、、、まさか、その大剣で?」
それと同時に、精鋭部隊は周囲の状況を確認し始めていた。
「ああ、うるさいなあ」
フィーアを無視した展開は、それはそれは当事者にとって面白くないことこの上ないだろう。
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