その捕虜は牢屋から離れたくない

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2章 帝国の呪い

2-21 魔剣と腕輪

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「それが研究開発から渡された剣か?」

 俺が手に持っていたのは魔剣エクスカリバーの方である。

「、、、ポシュ、その沈黙は何だ?」

「コレはクロウが作っていた魔剣エクスカリバー。帝国がコレ以上の剣を作るまで使っていいよと言われた。魔石は帝国が調達してね、とも言っていた」

 俺の答えに、メーデも少々沈黙。

「、、、ああ、うん。研究開発が作った剣はどこだ」

「これ」

 腕輪の装飾部分をこすると、剣が現れる。

「うおっ、すごいな、剣を腕輪に収納できるのか」

「コレもクロウが作ってくれた」

 腕輪の装飾部分の絵柄は黒ワンコの顔である。腕輪は細くて、黒ワンコも小さいのでよく見ないとわからないが。

「クロウが?ええと、それは魔剣エクスカリバーも一緒に収納できるのか」

「うん、空間収納できないと不便だろうからと、大きい鞄一つ分くらいは他に入れられるって」

 そのときのセリムの視線が痛かったが、クロウがお前には今度もっと良いものをあげるから期待しておけ、と言われて機嫌が直っていた。
 セリムは魔槍ももらっているし、銀ワンコもクロウからもらっているはずだし、婚約申請書まで皇帝陛下に提出しているし、これ以上何が欲しいんだ。クロウ自身か。気持ちはわかるけど。

「待て、ポシュ」

「ん?」

「お前、魔導士だったから変には思わなかったのか」

「何を?」

「空間収納魔法は魔導士にしか使えない。魔導士でも使えない者も少なくない。その魔法は今まで魔道具になった例がない」

「あっ、あー、そうだった。そういえば」

 魔法が使えていたときは普通に使っていたから、他の人の不便さなんて気にしたことがない。
 羨ましい羨ましいと言われ続けて、いいように利用されていた気がするが。

 あれ?
 俺が魔法で収納していた物って今どうなっているんだ?
 魔法が使えないと、あの空間から取り出すことができない。
 日常的に使用する生活必需品は普通に購入していたので気にすることもなかったが、戦時は武器や物資を移動するのに使用したが、少し前までは適当にポイポイ入れていた、何かを。
 魔法がなくなるとは思っていなかったから、けっこうな量になっていた気が。
 武器とかも入れていたっけ?

「小さいものでも大ごとだぞ」

「セリムの魔槍だって銀ワンコが吐き出しているじゃないか」

「あのワンコたちを同列にするんじゃない。アレは人外。クロウが手懐けている間は放置一択。現在、無害なものまで敵に回すことはない。いや、今はアレのことは置いとけ。その魔剣エクスカリバーを使うのも皇帝陛下の許しが必要だ。行くぞっ」

 メーデが私服に大剣を背負って出かける準備をしている。

「どこに」

「皇帝陛下のところに決まっているだろっ」

「軍服に着替えた方が良いんじゃないか」

「お前はお忍び姿の皇帝陛下に会ったんだろ」

「ああ、下町に行くのか」

 夜の街に繰り出す皇帝陛下。
 今日も居酒屋でクロウと一緒に飲んでいるのだろうか。




「何で仕事でもないのに、お前たちがやってくるわけ?」

 一人で寂しくぐびぐび酒を飲んでいるオッサンがそこにいた。
 お忍び姿が板についているな。こちらが素なのかもしれない。

「こう、、、サザさん、こちらを」

 皇帝陛下と言おうとして、メーデは言い直した。
 メーデも俺も帝都では目立ちすぎる。
 そして、今、ここに、洩れてはいけない会話を制御できる者はいない。

「剣?ああ、研究のヤツらが作ったヤツかー。はははっ、英雄にふさわしい剣って言ったから外見を聖剣エクスカリバーにしてみたのかー?」

「そちらはクロウが作った魔剣です」

「、、、は?じゃあ、研究のヤツらが作った剣は?」

「こちらです」

「、、、うん、聖剣エクスカリバーを見た後じゃ、武骨極まりないデザインだな。っていうか、魔剣?」

「魔剣エクスカリバー、クロウが言うには本物と出力が違うと」

 メーデが説明してくれた。
 俺、ついてくる必要あった?

 メーデはフロレンスらに脳筋呼ばわりされるが、俺よりも言葉遣いが鍛え上げられている。長年の経験の差だと思いたい。
 皇帝陛下がじっと魔剣を見ている。

「んー、俺がもらいたいくらいの剣だが、、、まあ今回は英雄に譲ろう」

 皇帝陛下が魔剣を俺に返す。
 ホッとして受け取る。
 メーデが俺の顔を見ていた。俺がメーデに視線を移すとパッと皇帝陛下に向き直る。

「魔石は帝国が用意しろと」

「まあ、そうなるわな。魔力消費量も段違いで低く抑えられているんだろ。そういう技術がリンク王国にはあったという話なのに、どうしてアイツらは有効活用しなかったんだろうな」

「その点は諜報員から聞いた方が正確なのでは。とりあえず、この魔剣をポシュが使用しても問題ないと?」

「ああ、仕方ない。それにこっちだってクロウの手が入っているだろ」

「え?」

 それはまだメーデに伝えてなかった。
 慌てて答える。

「はい、そうです。クロウが魔法陣を改変し、段違いに威力を上げてもらいました。リーウセンも協力してました」

「とは言っても、元々の剣本体の性能が天地ほど違うからなあ。アイツら英雄にふさわしい剣にしろって俺が言ったのに普通の剣を用意しやがって。失敗するのを恐れたとしても、なあ」

 皇帝陛下がニヤリと笑った。
 いつものニヤリとは違い、ひたすら黒い笑顔。目が笑っていない。

 あ。
 コレは研究開発が怒られるヤツだ。
 明朝、大変なことになりそうだ。

「こっちの剣は俺が預かるわー。お前はクロウの剣を持ってりゃ幸せなんだろ」

 そりゃ幸せですが。

「ポシュ、お前は命より大切な魔剣をどこにやった?抱きしめて寝そうなくらいなのに」

「腕輪にしまいました」

 大切なものはなくす前にしまっておかないと。

「あ、こちらもクロウから渡されたそうです。大きい鞄くらいの荷物は入ると」

「クロウーーーーっっ」

 メーデの追加の説明で、とうとう叫んだ。
 大声で。
 周囲は酔っ払いを見る生温かい目で包まれているが。

「あー、なんですか?」

 うおっとっ。
 振り返るとクロウがいた。横にセリムも。ついでにリーウセンも。リーウセンはセリムに引き摺られて来たようだが。

「お、今日は来ないかと思った」

 皇帝陛下のお顔が平常運転のニヤリ笑顔に戻った。

「来なくていいなら来ませんよ。呼び出した張本人のくせに」

「リーウセンもお前も呼び出しても来なくなったじゃねえかっ」

「仲のいい友人でもないのに、毎日呼び出さないでくださいよ。それでも二日に一度は飲んでいるのに、騒がないでください」

 二日に一度?充分多いな。仲いいな。羨ましい。そんなに飲んでいたのか。

「ううっ、クロウが仲のいい友人じゃないって言ったーっ」

 本当に酔っぱらってねえの?このオヤジ。

「で、今日はその件ですか?帝国ってその程度の研究者しかいないんですか?それとも、英雄が舐められているんですか?それとも、皇帝陛下が舐められているんでしょうかねえ」

 ズケズケズケ。

「うぐっ、クロウが心をえぐってくる」

「うわー、言いたくても誰も言えなかったことを」

 メーデ、お前もそういう言葉は心にしまっておけ。だから、脳筋だって言われちゃうんだぞ。

「クロウっ、俺にも剣作って。腕輪作って」

 心をえぐられたはずなのに、あっさりと復活する皇帝陛下。付き合いきれん。

「え?嫌ですよ。何で敵国の皇帝に作るんですか?捕虜の俺が」

「ふっ、捕虜だからこそお前に無理やり作らせることもできるんだぜー」

「ええ、じゃあ、呪殺の腕輪やら、神殺しの剣やら作りましょうか」

 にっこりにこにこ営業スマイルでの瞬殺。

「あ、やめて。そういうのはいいから」

「ちなみに神殺しの剣とは、神にしか効かない剣なので人や人外、魔物相手にはまったく役に立たない剣です。神を殺せる剣なので相当な威力はあるんですが」

 クロウも説明するな。
 、、、実は、もうすでに隠し持ってたりしない?

「神が見えない身にはまったく必要のない剣じゃないかー」

 皇帝陛下も言うべきことはそこじゃない。
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