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2章 帝国の呪い
2-35 夢の忠告
はずだったのに。
素肌で抱き締めて寝たのに。
「クロウがここに来るのは無理なのか?」
「あははー、そんなにガッカリしないでくださいよー、セリムさん」
息子さんが椅子を勧めると、温かい紅茶が出てくる。
いつもの夢の光景が広がっている。
広がっている?
俺は首を傾げる。
「なぜ、あの四匹は戦闘を?」
爆音が轟く。
ポシュと黒ワンコ三匹が魔法を駆使して戦い合っている。
何やってんだ、アレ。
炎とか氷とか強風とか、尋常じゃないだろ。
「ここは夢のなかだからね。現実では魔法を使えなくとも想像すればできてしまう。そもそも、ポシュくんは相当な魔導士だからね、魔力さえあれば普通に発動できるからね。とは言っても、アレは遊びの延長線上で、殺しあっているわけじゃないから安心して」
遊びでアレだと安心できるレベルじゃねえんだが。夢と言っても。
「あ、クロウの奥さんは?」
姿が見えないことなんて今まであったか?
今日は留守?
今までにないパターンか?
「ああ、あの下で泥塗れになっている」
息子さんが指さした先に。
まったく気づかなかったーっ。
ポシューっ、手加減しろーっ。
本人は嬉しそうな笑顔で、泥に塗れているが。
魔法に巻き込まれてるーっ。
長い髪の毛が爆発したーーっ。
「まあ、夢のなかだし」
「それはそうだが」
それで良いのか。
一応、全員楽しそうには見える。
「彼らが遊んでいる間に、こちらは真面目な話をしましょう」
「真面目な話?」
「まずはおめでとうございます」
「ありがとうございます?」
って、いきなり真面目な話ではなさそうなんだが。
何だ?父親との仲を茶化そうというのか?それとも、祝うようにみせかけて?
「警戒しないでくださいよー。その中指の指輪の意味を教えておこうと思いまして」
「死んでも一緒にいられる指輪じゃないのか」
「、、、その通りなんですけど、セリムさんが正しく理解しているのが怖い。正式名称、死が二人を別つとも、という魔法の指輪です。そのままの意味なんですけど、二人が死んでも一緒にいるための指輪です」
想像通り。
「指輪を銀色にしたのは、セリムさんの予想通りでセリムさんの髪の色だからです。ちなみに銀製ではありません」
「へえ、」
何で作られているかは教えてくれないようだ。
「結婚指輪としてコレを渡すのではなく、最初にコレを渡すのが父さんらしくもあり父さんらしくないのかもしれません。おそらくセリムさんを失うのが恐ろしすぎて、何か機会があったらセリムさんの指に騙し討ちでもハメちゃおうっという気が隠し切れてなかった」
「良いことづくめじゃないか」
「セリムさんはそのままのセリムさんでいてくださいねー」
やはり茶化す気じゃないのか?
息子さんは慌てて真面目な顔に戻した。
「セリムさんはルッツ副隊長のこと気にしているでしょう」
「そりゃ、仕方ないだろ。クロウも気にしているようだし、クロウが選ぶ可能性はアイツの方が高かった」
「父さんが気にしたのは、彼の能力、剣技に愛されし者だからですよ」
「やはり、強い者の方が好きなのか」
俺が間髪入れずに言うと、息子さんはほんの微かにとまる。
「最初に、ルッツ副隊長の能力について説明しましょう。剣技に愛されし者とは文字通り剣技に愛される、剣においては最強と言われる能力です。ルッツ副隊長のように努力を怠らない方は、訓練方法も感覚的にわかるので、最短で剣技を身に着けることができます」
「ああ、」
知ってる。リンク王国で剣の腕は並ぶ者なし。
騎士の中で最強と言われていた。
「けれど、剣技に愛されるというのは、相手も剣の場合に限ります」
「、、、は?」
「つまり、努力を重ねたルッツ副隊長に剣で勝てる者は万に一人もいませんが、剣以外でそれなりの実力者ならば普通に勝ててしまうんですよね。それが剣技に愛されし者の限界なんです。セリムさんだって槍でやり合うときは互角だったり有利だったりしたことがあるでしょ」
「訓練だからな」
互角と言えば互角なこともあるが、真剣勝負かと言われると疑問が残る。
「例えば、大剣のメーデさんも相当な実力者ですが、アホみたいにルッツ隊長へ相手の土俵でしかない剣で挑めば負けます。ただし、メーデさんが剣を使わず体術等で争えば、普通にメーデさんの勝ちとなるわけです。メーデさんの方が体格、戦術から経験等、剣以外のすべてにおいて勝りますからね」
アホみたいに。。。
アイツはそのアホをやらかす寸前だったのか。
もし、アレがナーズ隊長ではなくルッツ副隊長が当番の日だったのならば。
「冷静になって彼の能力を鑑みれば、剣以外で戦う選択する判断をします。けれど、メーデさんは剣で叩きのめしたい欲求が強いので無理でしょうねえ」
「脳筋かっ」
「ルッツ副隊長が相手なら大剣が使い物にならなくなった方が良いはずですよ。メーデさんは素手でも戦えますから」
「怪物かっ」
「けど、そのメーデさんにセリムさんは魔槍グングニルで対抗できるのですから、その言葉そっくりお返ししますね」
え?脳筋も返されるのか?
俺が脳筋だということは知っているけどさあ。
「魔槍グングニルは結局のところクロウの実力だ。俺はもっと力を蓄えなければ」
「父さんはセリムさんにもう筋肉は要らないと思ってますけど、」
申し訳なさそうに俺を見るな。
「力というのは筋肉のことだけじゃなくて、」
「ええ、わかってます。けれど、目的を見失わないでください。父さんにとってすでにセリムさんはなくてはならない人物。そこに胡坐をかきたくない気持ちはわかりますが、魔槍グングニルを作れても、父さんには扱えないのですから安心してください」
「製作者なのに使えないのか?」
「魔槍グングニルは自ら持ち主を選ぶ槍なんです。父さんは持つのもやっと。投げるというより落とすしかできない人物を持ち主として選択するかというとさすがに無理でしょう」
「俺に渡すとき、普通に持っていた気がするけど」
「父さんも普通に身体強化の魔法を使えますよ。魔槍グングニルを魔法で軽くできないのなら、魔法で自分の筋力を上げるしかないわけでして。それに、全身筋肉なセリムさんにぷよっ腹を笑われないように、身体強化の魔法を使って涙ぐましい筋トレしているんですから」
ちょーっと全身筋肉って言葉に引っかかるなー。
そこじゃないとはわかっているんだけど。
「筋肉ってほどではないが、クロウは普通にお腹も引き締まっていたけど」
抱き心地、触り心地のいいお腹でした。
「そりゃ、全身筋肉たちに囲まれてたら、父さんだって自分の肉体が少しはヤバイと思うでしょ。それにナナキさんの食事でおいしく育っちゃっているから、というよりナナキさんの食事って動く人のために考えられた食事なんですよ。本を一日中読んでいる人向けじゃないので、何もしなければぷよっ腹になるのは当たり前なんですよねー。甘いもので餌付けもされているし」
また全身筋肉って言ったよ。わざとだな。
「セリムさん、魔槍グングニルは投げることで真価を発揮する武器です。手元にあるままで戦えるのなら、それはセリムさんの実力があるからこそ。そこは自信を持ってください」
それは励ましなのか、何なのかわからないが、力を追い求め過ぎるなという忠告か。
クロウは自分を守る力を充分過ぎるほど持っているのだから。
投槍として用いれば、必中必殺の槍、魔槍グングニル。
貴方のために、自分を守るために戦える力はもうすでに手に入っている。
クロウを守るために必要なのは他の力だ。
「ありがとう」
「いえいえ」
父さんが幸せならそれでいい、という表情の彼がいた。
素肌で抱き締めて寝たのに。
「クロウがここに来るのは無理なのか?」
「あははー、そんなにガッカリしないでくださいよー、セリムさん」
息子さんが椅子を勧めると、温かい紅茶が出てくる。
いつもの夢の光景が広がっている。
広がっている?
俺は首を傾げる。
「なぜ、あの四匹は戦闘を?」
爆音が轟く。
ポシュと黒ワンコ三匹が魔法を駆使して戦い合っている。
何やってんだ、アレ。
炎とか氷とか強風とか、尋常じゃないだろ。
「ここは夢のなかだからね。現実では魔法を使えなくとも想像すればできてしまう。そもそも、ポシュくんは相当な魔導士だからね、魔力さえあれば普通に発動できるからね。とは言っても、アレは遊びの延長線上で、殺しあっているわけじゃないから安心して」
遊びでアレだと安心できるレベルじゃねえんだが。夢と言っても。
「あ、クロウの奥さんは?」
姿が見えないことなんて今まであったか?
今日は留守?
今までにないパターンか?
「ああ、あの下で泥塗れになっている」
息子さんが指さした先に。
まったく気づかなかったーっ。
ポシューっ、手加減しろーっ。
本人は嬉しそうな笑顔で、泥に塗れているが。
魔法に巻き込まれてるーっ。
長い髪の毛が爆発したーーっ。
「まあ、夢のなかだし」
「それはそうだが」
それで良いのか。
一応、全員楽しそうには見える。
「彼らが遊んでいる間に、こちらは真面目な話をしましょう」
「真面目な話?」
「まずはおめでとうございます」
「ありがとうございます?」
って、いきなり真面目な話ではなさそうなんだが。
何だ?父親との仲を茶化そうというのか?それとも、祝うようにみせかけて?
「警戒しないでくださいよー。その中指の指輪の意味を教えておこうと思いまして」
「死んでも一緒にいられる指輪じゃないのか」
「、、、その通りなんですけど、セリムさんが正しく理解しているのが怖い。正式名称、死が二人を別つとも、という魔法の指輪です。そのままの意味なんですけど、二人が死んでも一緒にいるための指輪です」
想像通り。
「指輪を銀色にしたのは、セリムさんの予想通りでセリムさんの髪の色だからです。ちなみに銀製ではありません」
「へえ、」
何で作られているかは教えてくれないようだ。
「結婚指輪としてコレを渡すのではなく、最初にコレを渡すのが父さんらしくもあり父さんらしくないのかもしれません。おそらくセリムさんを失うのが恐ろしすぎて、何か機会があったらセリムさんの指に騙し討ちでもハメちゃおうっという気が隠し切れてなかった」
「良いことづくめじゃないか」
「セリムさんはそのままのセリムさんでいてくださいねー」
やはり茶化す気じゃないのか?
息子さんは慌てて真面目な顔に戻した。
「セリムさんはルッツ副隊長のこと気にしているでしょう」
「そりゃ、仕方ないだろ。クロウも気にしているようだし、クロウが選ぶ可能性はアイツの方が高かった」
「父さんが気にしたのは、彼の能力、剣技に愛されし者だからですよ」
「やはり、強い者の方が好きなのか」
俺が間髪入れずに言うと、息子さんはほんの微かにとまる。
「最初に、ルッツ副隊長の能力について説明しましょう。剣技に愛されし者とは文字通り剣技に愛される、剣においては最強と言われる能力です。ルッツ副隊長のように努力を怠らない方は、訓練方法も感覚的にわかるので、最短で剣技を身に着けることができます」
「ああ、」
知ってる。リンク王国で剣の腕は並ぶ者なし。
騎士の中で最強と言われていた。
「けれど、剣技に愛されるというのは、相手も剣の場合に限ります」
「、、、は?」
「つまり、努力を重ねたルッツ副隊長に剣で勝てる者は万に一人もいませんが、剣以外でそれなりの実力者ならば普通に勝ててしまうんですよね。それが剣技に愛されし者の限界なんです。セリムさんだって槍でやり合うときは互角だったり有利だったりしたことがあるでしょ」
「訓練だからな」
互角と言えば互角なこともあるが、真剣勝負かと言われると疑問が残る。
「例えば、大剣のメーデさんも相当な実力者ですが、アホみたいにルッツ隊長へ相手の土俵でしかない剣で挑めば負けます。ただし、メーデさんが剣を使わず体術等で争えば、普通にメーデさんの勝ちとなるわけです。メーデさんの方が体格、戦術から経験等、剣以外のすべてにおいて勝りますからね」
アホみたいに。。。
アイツはそのアホをやらかす寸前だったのか。
もし、アレがナーズ隊長ではなくルッツ副隊長が当番の日だったのならば。
「冷静になって彼の能力を鑑みれば、剣以外で戦う選択する判断をします。けれど、メーデさんは剣で叩きのめしたい欲求が強いので無理でしょうねえ」
「脳筋かっ」
「ルッツ副隊長が相手なら大剣が使い物にならなくなった方が良いはずですよ。メーデさんは素手でも戦えますから」
「怪物かっ」
「けど、そのメーデさんにセリムさんは魔槍グングニルで対抗できるのですから、その言葉そっくりお返ししますね」
え?脳筋も返されるのか?
俺が脳筋だということは知っているけどさあ。
「魔槍グングニルは結局のところクロウの実力だ。俺はもっと力を蓄えなければ」
「父さんはセリムさんにもう筋肉は要らないと思ってますけど、」
申し訳なさそうに俺を見るな。
「力というのは筋肉のことだけじゃなくて、」
「ええ、わかってます。けれど、目的を見失わないでください。父さんにとってすでにセリムさんはなくてはならない人物。そこに胡坐をかきたくない気持ちはわかりますが、魔槍グングニルを作れても、父さんには扱えないのですから安心してください」
「製作者なのに使えないのか?」
「魔槍グングニルは自ら持ち主を選ぶ槍なんです。父さんは持つのもやっと。投げるというより落とすしかできない人物を持ち主として選択するかというとさすがに無理でしょう」
「俺に渡すとき、普通に持っていた気がするけど」
「父さんも普通に身体強化の魔法を使えますよ。魔槍グングニルを魔法で軽くできないのなら、魔法で自分の筋力を上げるしかないわけでして。それに、全身筋肉なセリムさんにぷよっ腹を笑われないように、身体強化の魔法を使って涙ぐましい筋トレしているんですから」
ちょーっと全身筋肉って言葉に引っかかるなー。
そこじゃないとはわかっているんだけど。
「筋肉ってほどではないが、クロウは普通にお腹も引き締まっていたけど」
抱き心地、触り心地のいいお腹でした。
「そりゃ、全身筋肉たちに囲まれてたら、父さんだって自分の肉体が少しはヤバイと思うでしょ。それにナナキさんの食事でおいしく育っちゃっているから、というよりナナキさんの食事って動く人のために考えられた食事なんですよ。本を一日中読んでいる人向けじゃないので、何もしなければぷよっ腹になるのは当たり前なんですよねー。甘いもので餌付けもされているし」
また全身筋肉って言ったよ。わざとだな。
「セリムさん、魔槍グングニルは投げることで真価を発揮する武器です。手元にあるままで戦えるのなら、それはセリムさんの実力があるからこそ。そこは自信を持ってください」
それは励ましなのか、何なのかわからないが、力を追い求め過ぎるなという忠告か。
クロウは自分を守る力を充分過ぎるほど持っているのだから。
投槍として用いれば、必中必殺の槍、魔槍グングニル。
貴方のために、自分を守るために戦える力はもうすでに手に入っている。
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