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デビュタントボール2
しおりを挟むキラキラ、キラキラと何処かしこも輝いていてミュラーはほぅ、と簡単の吐息を零す。
王宮で開催される成人の舞踏会。
参加している貴族の令嬢達も、この煌びやかな世界に負けない位にとても輝き、美しく笑っていた。
どこか夢の世界にいるようで、ふわふわとした感覚が抜けない。
最後に、公爵家の令嬢が入場したのを見届けると、暫し歓談の時間が設けられた。
ミュラーのハドソン家とも、親交のある貴族から度々祝いの言葉を贈られて、ミュラーがお礼の言葉を返す。
そうしている内に、視界の端にキラリと煌めく金色が目に入った。
ミュラーがはっとして、そちらの方向へ顔を向けると、そこには見知った男性がこちらに向かって歩いて来ていた。
その翡翠色の瞳を優しげに細め、微笑みをたたえながらミュラーがいる方へ近付いて来た。
レオンの横には、アウディも笑いながら手を振りこちらに近付いて来てくれている。
「ミュラー、成人おめでとう」
「ミュラー!おめでとう!」
「ありがとうございます、レオン様、アウディ」
ミュラーはにこやかに微笑むと、つい、とドレスの裾を持ち上げ膝を折る。
「ああ、やっぱりミュラーにとっても似合っているね…綺麗だよ」
レオンはミュラーのその美しく結い上げられたそのアメジストの髪の毛を煌びやかに彩るリナリアの髪飾りに触れると、嬉しそうに笑った。
その横で、アウディが「兄上にしては凄くセンスの良い贈り物ですね」とからかうように言い、レオンに小突かれている。
和やかに会話を交わすミュラー達に、周囲はざわめいている。
「あの二人は、もう終わったんじゃ?」「別れていなかったのか?」等、ヒソヒソと話しているようだ。
そんなざわざわとした雰囲気の中から、ひょっこりと顔を出し、ぱぁっと表情を輝かせてこちらに近付いてくる令嬢達がいる。
「ミュラー!」
「っ、アレイシャ!それに、ルビアナさんにエリンさん!」
三人は、ミュラーの隣にいる人物に気付くと
慌てて淑女らしく挨拶をする。
「あら、やだ私ったらはしたない。こんばんわ、アルファスト侯爵様、アウディ様」
アレイシャの挨拶に続けてルビアナとエリンも膝を折った。
「ああ、こんばんわ。いい夜が令嬢達に訪れるよう…成人おめでとう」
レオンが微笑みながら三人に向かってそう返すと、アレイシャがこちらに身を寄せてぽそり、と呟いてくる。
「お邪魔はしたくないので、私たちはこれで失礼するわね。また話しましょう」
「─アレイシャっ」
にやり、と笑いながらそう伝えるとふふふっと声を出しながら手を振り、ルビアナとエリンを呼びミュラー達から離れていく。
離れる際に、アレイシャはつぃ、とレオンへ視線を向けるとその視線に気付いたレオンが口元に笑みを浮かべながら小さく頷いた。
(この間のニックの件もあったからミュラーが心配だったけれど、今日はレオン様がべったり張り付いているからきっと平気そうね)
アレイシャは手に持っていた扇で自分の口元を覆うと、大事な友人の長年の恋が叶う事を願いながら自分の家族の元へと戻って行った。
自分の家族の元へと戻って行く友人達の背中を眺めながら、ミュラーは自分の頬が染まっている事に気付いていた。
(邪魔なんかじゃないのに…!)
寧ろ、今は逆に友人達に囲まれていたかった。
レオンのその瞳に見つめられる度に、ぞわぞわと体が震える。無性に叫び出したくなるような、そんな熱の篭った瞳を向けられるのが初めてで、ミュラーはレオンの元へ振り向くのが怖かった。
父親も、自分達と程よく距離を置きながら、ハドソン家と親交のある貴族と話している。
もだもだとしていると、カツリと音が聞こえて
自分の横にレオンが並び立った。
ミュラーの顔を覗き込むように、腰を折りこちらの顔を見つめてくる。
「はは、ミュラー、顔がリンゴみたいだ。可愛い」
リーンウッド嬢と何の話をしてたの?と笑いながら話しかけてくるレオンにミュラーは何とも言えない表情で「なんでもないです…」と答えた。
そうしている内に、王族が舞踏会のホールへと続く大階段を降りてくるのが目に入った。
一斉に頭を垂れ、王族を迎えるべく礼を行う。
この国の国王に、続いて王妃。
王太子である第一王子に年の離れた第二王子、次いで王女がその大階段を優雅に降りてくると、舞踏会に参加している貴族達を一度ぐるりと見回すと国王が口を開いた。
「我が国にて成人を迎える淑女達に大いなる祝福が訪れる事を願う、そなた達も本日この時から大人となる。家の名に恥じぬような人生を送って欲しい。」
そう言葉を話す国王の声音には、深い慈しみの感情を感じる。しっかりと厚みのある重厚感溢れる声に、ミュラーはしっかりとその言葉を噛み締めた。
その言葉が終わると、国王が王妃に向かって手のひらを差し出すと、王妃をエスコートしながら大階段をゆっくり降りダンスホールへと歩を進める。
国王がホールへ移動したのを見届けた宮廷音楽家達は、ゆっくりと音楽を奏で始める。
美しい音色に乗って、二人が美しく踊り始めるのを、ミュラーはうっとりと眺めた。
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