「出来損ないの妖精姫」と侮辱され続けた私。〜「一生お護りします」と誓った専属護衛騎士は、後悔する〜

高瀬船

文字の大きさ
30 / 86
一章

30話

しおりを挟む


 大ホール内は、かつてないほど煌びやかに装飾されていて、食事や飲み物の種類も豊富。そこかしこで、招待された貴族達が談笑していた。

 そこへ、ホプリエル侯爵と夫人。
 そしてフォスターのエスコートのもと、エルローディアが姿を現すと、ホール内には溢れんばかりの歓声が上がった。

 皆から羨望、嫉妬・妬みの目が向けられ、エルローディアは自分の背にぞくぞくと震えが走る。
 恍惚の表情を浮かべ、集まった貴族達を心の中で嘲笑う。

(ああ、本当に気持ちいい……! 皆が、私を羨ましがり、憧れの目を! 妬みを! 嫉妬を向けてくる! この下々の人間達の前で、今日私がこの国随一の護衛騎士と契約を結ぶのね。ああ、これ程の気持ちよさはないわ!)

 エルローディアは、そう心の中で叫ぶと、ちらりと隣を歩くフォスターを見やる。
 エルローディアの視線に気付いたのだろう。
 フォスターがとろり、と蕩けるような瞳を向けてきて、エルローディアは胸中でほくそ笑む。

(ウェンディから、この男も奪ってやった……! あんな子供みたいな出来損ないには、この男は勿体ないわ。私のように美しく、妖艶な女の隣にこの男は相応しいの)

 エルローディアは、心の中の醜さなど微塵も浮かべず、フォスターに笑みを返してやる。

 嬉しそうに頬を染め、破顔するフォスターに、エルローディアはもっと自分の体を寄せた。
 ぎゅう、と甘えるようにフォスターの体に身を押し付け、唇が弧を描く。

 集まった貴族達は、仲睦まじい二人の様子に、この専属契約も無事成立するだろうと誰もが思った。

 ホールの中心部に到着し、侯爵が高らかに声を上げる。

「今日は、我が侯爵家の娘であるエルローディアと、護衛騎士フォスター・シュバルハーツの専属護衛騎士契約を見届けに来て下さり、感謝している! ぜひ、二人の記念すべき一日の証人となってくれ!」

 自信に満ち溢れた侯爵の声に、再び歓声が上がる。

 侯爵は、使用人が恭しく持って来た契約書類を受け取ると、エルローディアとフォスター。
 両名の名前を呼んだ。

「二人とも、こちらへ。これから、契約に入る」
「はい、お義父様」
「はい、侯爵」

 皆が固唾を飲んで見守る中、侯爵は慣れた様子で契約準備に取り掛かる。

 ウェンディとフォスターの契約を破棄した時と同様、今度は契約を成立させるための言葉を発し、両名に視線で促した。

 後は、エルローディアとフォスターが小刀で指先を切り、契約書類に血を垂らすだけ。
 こんなに簡単な手順で、専属契約が結ばれるのだ。

(とうとう、この時が来たわね。……もっと仰々しく、華々しく契約の手続きをしたいけど……お義父様にこれ以上は我儘を言えないし。これで我慢するわ)

 ふん、と鼻で笑うような素振りを見せつつ、エルローディアはフォスターから小刀を受け取り、自分の指先を浅く切った。

 微かな痛みと共に、血が滲む。
 エルローディアはそのまま契約書類に血を垂らした。

「──エルローディア・ホプリエル。フォスター・シュバルハーツ。この契約に異論は無いな?」
「勿論ですわ」
「この命が尽きるその時まで、エルローディア様を守ると誓います」

 エルローディアとフォスター。
 二人が答えた瞬間、契約書類から淡い光が発せられる。

 観客からは「おお」とか「凄い」などと、感嘆の声が上がる。

 エルローディアはにんまり、と口角を上げたまま、その時を待った──。

 光がエルローディアとフォスターの体を包み込み、そして──。

 ──バチン!!

 と、耳障りな大きな音を立てて、光が弾け、その衝撃にエルローディアとフォスターの体が激しく弾かれた。

「きゃああああっ!!」
「──ぐっ」

 光が弾けた衝撃が、エルローディアとフォスターの体を襲う。
 それは、物凄い痛みとなって二人の体を駆け巡った。

 そして、弾かれた二人はそのまま無様に大ホールの床に派手に転倒してしまったのだった。

 
しおりを挟む
感想 128

あなたにおすすめの小説

妹の身代わり人生です。愛してくれた辺境伯の腕の中さえ妹のものになるようです。

桗梛葉 (たなは)
恋愛
タイトルを変更しました。 ※※※※※※※※※※※※※ 双子として生まれたエレナとエレン。 かつては忌み子とされていた双子も何代か前の王によって、そういった扱いは禁止されたはずだった。 だけどいつの時代でも古い因習に囚われてしまう人達がいる。 エレナにとって不幸だったのはそれが実の両親だったということだった。 両親は妹のエレンだけを我が子(長女)として溺愛し、エレナは家族とさえ認められない日々を過ごしていた。 そんな中でエレンのミスによって辺境伯カナトス卿の令息リオネルがケガを負ってしまう。 療養期間の1年間、娘を差し出すよう求めてくるカナトス卿へ両親が差し出したのは、エレンではなくエレナだった。 エレンのフリをして初恋の相手のリオネルの元に向かうエレナは、そんな中でリオネルから優しさをむけてもらえる。 だが、その優しささえも本当はエレンへ向けられたものなのだ。 自分がニセモノだと知っている。 だから、この1年限りの恋をしよう。 そう心に決めてエレナは1年を過ごし始める。 ※※※※※※※※※※※※※ 異世界として、その世界特有の法や産物、鉱物、身分制度がある前提で書いています。 現実と違うな、という場面も多いと思います(すみません💦) ファンタジーという事でゆるくとらえて頂けると助かります💦

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

余命六年の幼妻の願い~旦那様は私に興味が無い様なので自由気ままに過ごさせて頂きます。~

流雲青人
恋愛
商人と商品。そんな関係の伯爵家に生まれたアンジェは、十二歳の誕生日を迎えた日に医師から余命六年を言い渡された。 しかし、既に公爵家へと嫁ぐことが決まっていたアンジェは、公爵へは病気の存在を明かさずに嫁ぐ事を余儀なくされる。 けれど、幼いアンジェに公爵が興味を抱く訳もなく…余命だけが過ぎる毎日を過ごしていく。

夫「お前は価値がない女だ。太った姿を見るだけで吐き気がする」若い彼女と再婚するから妻に出て行け!

佐藤 美奈
恋愛
華やかな舞踏会から帰宅した公爵夫人ジェシカは、幼馴染の夫ハリーから突然の宣告を受ける。 「お前は価値のない女だ。太った姿を見るだけで不快だ!」 冷酷な言葉は、長年連れ添った夫の口から発せられたとは思えないほど鋭く、ジェシカの胸に突き刺さる。 さらにハリーは、若い恋人ローラとの再婚を一方的に告げ、ジェシカに屋敷から出ていくよう迫る。 優しかった夫の変貌に、ジェシカは言葉を失い、ただ立ち尽くす。

君といるのは疲れると言われたので、婚約者を追いかけるのはやめてみました

水谷繭
恋愛
メイベル・ホワイトは目立たない平凡な少女で、美人な姉といつも比べられてきた。 求婚者の殺到する姉とは反対に、全く縁談のなかったメイベル。 そんなある日、ブラッドという美少年が婚約を持ちかけてくる。姉より自分を選んでくれたブラッドに感謝したメイベルは、彼のために何でもしようとひたすら努力する。 しかしそんな態度を重いと告げられ、君といると疲れると言われてしまう。 ショックを受けたメイベルは、ブラッドばかりの生活を改め、好きだった魔法に打ち込むために魔術院に入ることを決意するが…… ◆なろうにも掲載しています

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください

シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。 国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。 溺愛する女性がいるとの噂も! それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。 それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから! そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー 最後まで書きあがっていますので、随時更新します。 表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。

1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。

尾道小町
恋愛
登場人物紹介 ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢  17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。 ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。 シェーン・ロングベルク公爵 25歳 結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。 ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳 優秀でシェーンに、こき使われている。 コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳 ヴィヴィアンの幼馴染み。 アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳 シェーンの元婚約者。 ルーク・ダルシュール侯爵25歳 嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。 ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。 ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。 この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。 ジュリエット・スチール公爵令嬢18歳 ロミオ王太子殿下の婚約者。 ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳 私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。 一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。 正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?

処理中です...