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10・赤ちゃんの作り方
しおりを挟むあの騎士さんと出会ってから
僕の毎日は物凄く変わってしまった。
何故って、あの騎士さんが。
僕の初めてのお友達が、
僕の婚約者になったんだ。
名前はガイディスって言うけれど、
僕はガイって呼んでる。
最初、上手く呼べなかったからだけど
ガイって呼ぶのは世界中で
僕だけだっていうから、
僕はそれだけで嬉しくなる。
だって僕だけ、特別ってことだもん。
ガイは騎士をしているけれど、
僕が成人を迎えて結婚できる年になったら
騎士を辞めてバーンズ侯爵家に
婿入りしてくれるんだって。
だから今から徐々にだけれど、
僕と一緒にバーンズ侯爵家で
当主になるための勉強をしてくれているんだ。
僕もガイと一緒に居れるのは嬉しいし、
この家に僕が必要とされてるみたいで
学ぶのも楽しい。
兄様は本当の母様が持っていた爵位を継いで
お嫁さんを貰うんだって言っていた。
兄様がこの家を出てしまうのは悲しいけれど、
いつでも会えるよ、って言ってくれた。
それにお嫁さん……未来の義姉さんも
とっても素敵な人なんだ。
僕のことを可愛い、可愛いって
いつも笑顔で言ってくれるし、
とっても優しい。
あと、兄様がカッコイイってこと、
ちゃんとわかってくれている。
兄様は見た目が怖そうに見えるから
誤解されやすいみたいだけれど、
義姉様はちゃんとそれを
理解してくれているんだ。
そんなところも、僕は嬉しい。
ってことをガイに言ったら、
「まぁ、団長がカッコイイのは
本当だからな」と頷いてくれた。
少しもったいぶった言い方だったけれど
ガイも兄様のことをカッコイイって
思ってるってことだ。
だからガイも義姉様とは
仲良くできると思う。
女の人が苦手だって言ってたけれど、
きっと義姉様は別に違いない。
今度、紹介できたらいいんだけどな。
そんなガイは毎日は無理だけど
週に何度も僕に会いに来てくれる。
会いに来てくれた日は
一緒に勉強したり、
時間が無い時はお茶を飲んで過ごしている。
僕は毎日が楽しくて仕方がないんだ。
僕が成人する前にはちゃんと
婚約を整えて、ガイの両親に挨拶に
行くことも決まっている。
ガイと結婚するってことは
家族が増えるってことだ。
それも凄いと思う。
ふふ、って笑ったら、
「ご機嫌ですな」とセバスに
声を掛けられた。
しまった。
セバスに領地経営のことを
教えて貰っている最中だった。
「ごめんなさい」って言ったら、
「いえ、そろそろ休憩しましょう」と
侍女に合図をしてお茶を準備してくれる。
「今日はガイは来ない日だよね」
僕が確認するとセバスは頷いた。
「そのように聞いております。
ですが、ぼっちゃまは
ガイディス様が来られない日も
真面目に勉強されて
素晴らしいと思っております」
「うん。だって僕にできることは
ちゃんとやりたいんだ」
僕は体が弱くてあまり外に出れないから、
その代わりに、考えたり、知識を得たり
するのは当たり前だと思う。
けれど僕がそう言うと
「当たり前ではありません」と
セバスは首を振った。
「そうやって努力ができる坊ちゃまを
セバスは誇りに思いますぞ」
なんて真顔で言うものだから
僕は少し恥ずかしくなった。
なごやかな空気になって、
僕はそうだ、と思い出す。
「ねぇ、セバス」
「はい、なんでしょうか」
「ちょっと教えて欲しいんだけど」
僕の言葉にセバスは机を見た。
「何かわからない箇所でも?」
「ううん、そうじゃなくて」
僕は慌てて手を振る。
領地経営に関しては大丈夫だと思う。
過去の事例から、
天災が起こった場合の対処法や
税に関すること。
この国の法律や
貴族社会のこと。
また、必要ないかもしれないけれど、
他国の言葉や法律も学んでいるし、
記憶力には自信がある。
社交はしたことがないから、
やってみないとわからないけれど、
貴族の相関図は覚えたし、
当主の名前や家族、領地の状況や
名産などもだいたいは覚えることができた。
ただ名前と顔が一致しないので
それは本当に本人と会ってからになる。
とはいえ、兄様は僕には
無理に社交する必要はないと
言ってくれているから
焦ってはいない。
それに、ちょっとづつだけど、
学院に行くことで
僕にも自然に話をしてくれる
クラスメイトができたので、
僕が覚えた貴族相関図もただの
記号の記憶では無くて、
生きた情報として
記憶できてきた。
これは、ガイの
アドバイスのおかげだ。
学院で友達ができない理由は、
僕が学院に行ったり
行かなかったりしているから、
クラスメイト達も僕に
どう接していいかわからないのだろうと
教えてくれたのだ。
僕は高位貴族になるから
自分から話しかけてくれる生徒は
少ないだろうし、
逆に粗相をしたと思われたくないから
積極的に話しかけるのは
下位貴族であればあるほど難しい。
だから体調が良い日は
できるだけ学院に行って、
近くの席の子たちにだけでも
挨拶をしつづけたらどうか。
そう言われて僕は
できるだけ学院に行くようになった。
そして毎朝、頑張って
隣の席のクラスメイトに
話しかけていたら、
徐々に話しをすることができて
仲良くなることができたんだ。
僕は嬉しくて、ガイにも
兄様にも毎日のように
友だちと話をしたことを伝えた。
はしゃぎすぎて熱を出した時は
叱られたけれど、
でも、僕は嬉しかったんだ。
それに初めて、クラスメイトから
心配していると
お見舞いの手紙も貰った。
僕は嬉しすぎてその手紙を
宝箱に入れている。
ただ。
学院で僕は本当に
世間知らずだってことがわかった。
クラスメイトたちはみんな、
社交デビューをすでに
念頭に置いていて、行動していたんだ。
デビューの衣装とか、
婚約者の話しとか。
あと、将来の子どもの話しまで
する女子もいた。
そこで僕は「子どもができる方法は
大人になれば自然にわかる」という
言葉を思い出した。
みんな学院に通う間に
自然に知ることができたんだ!
そう思って僕はクラスメイト達の
話を耳を大きくして聞くことにした。
どこかでそんな話題がされているのかもしれない。
そう思ったけれど、
なかなかそんな話は聞こえてこない。
そこで僕は思い切って
セバスに聞くことにした。
クラスメイト達に聞かなかったのは
「そんなことも知らないの?」と
思われるのが嫌だったからだ。
「子どもってどうやったら生まれるの?
僕、頑張って学院に行ってるけど
自然にわかることは無さそうなんだ」
普段動揺する仕草を見せたことが無い
セバスの動きが、一瞬、止まった。
「セバス?」
どうしたの?と聞くと
セバスは、いえ、と短く答え
僕を見た。
「自然にわかる、とは?」
質問したのに、
質問が返ってきてしまった。
でも無視はできないから
僕は家庭教師に聞いた話をした。
でも学ばないと自然にわかるなんて
無理だと思う、という結論まで
ちゃんと言葉にする。
そうでないと「自然にわかるまで
頑張ってください」とか
言われたら困るし。
セバスは僕の言葉に
ふむふむ、と頷いた。
「ぼっちゃまも成長されたのですね。
セバスは嬉しゅうございます」
と涙を拭う仕草をされる。
成長したと喜んでくれるのば
僕も嬉しいけれど。
「だからね。セバス。
赤ちゃんのーー」
「ぼっちゃま」
僕が話しを続けようとしたら
セバスがいきなり声を大きくした。
僕はびっくりして口を閉ざした。
セバスが僕の言葉を遮るのも、
大きな声を出すのも初めてだった。
「それに関しては、
私は申し上げることができないのです」
驚いて固まる僕に、
セバスは申し訳なさそうな顔でいう。
「え? なんで?」
知らないじゃなくて、
言えないの?
「その『自然にわかること』は
婚約者など、未来の伴侶となるべき
方から教わるもの。
つまり、ぼっちゃまのご学友たちは
ご自身の婚約者に話を聞いたのでしょう」
「そう、なんだ」
「はい。
子どもの話しは、どこの貴族でも
重要かつ、慎重になるものです」
そうか。
跡取り問題もあるもんね。
「ですので、うかつに
外でその話をする者がいるはずもないのです」
「わかった。
だから誰もその話を
してなかったんだ」
僕は素直に頷いた。
「ごめんね、変なこと聞いて」
「いいえ。
大丈夫でございます。
さぁ、では休憩時間は終わりにして
今度は領地が飢饉に陥った場合の
対策を一緒に考えてみましょう」
セバスは口調を変えて
僕にノートを見るように促す。
僕もそこからまた領地経営の話に
意識が向かったので、
その話をしたことをすっかり忘れていた。
もちろん、その日の夜に
セバスから兄様にこのことが
報告されたことも、
僕には知る由も無かった。
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