雑魚で貧乏な俺にゲームの悪役貴族が憑依した結果、ゲームヒロインのモデルとパーティーを組むことになった

ぐうのすけ

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第44話 溢れ出し

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 メイをなだめていると警報が鳴った。

『13ゲートの防壁北にイノシシが向かっています。冒険者は至急集合してください。繰り返します。13ゲートの防壁北にイノシシが向かっています。冒険者は至急集合してください』

 ざわざわざわざわ!
 西高校の生徒が騒ぎ出した。

「やばくね? 北の防壁は修復中だろ?」
「イノシシだろ? 池を飛び越えて突撃されたらまた破壊されるぞ!」
「しゃああ、稼ぎ時だぜ!」

「お前、死んだな」
「なんでだよ! 儲け時だろ!」
「そういう奴が死ぬんだよ」
「死なない!」
「うん、稼ぎ時だと思うならどんどん前に出ていいぞ。自己責任だ」

 校長が近づいてきた。

「みんなは休みなさい! 私は北に行きます」

 校長も、リツカやマナも北に向かって行った。

「……イナセ、今から焼肉なんだけど、来ねえか? 無料で招待するべ」
「いいのか? パーティーでやる予定だったんだろ?」
「イナセは俺達を庇ってくれた」
「もう勝負は終わった。打ち上げだ」
「いっしょにやんべ」

「俺は行きたい」
「行こう」
「行きます☆」


 俺達6人はハンダの家で焼肉を始めた。
 メイはすっかり泣き止んでケロッとしている。

「兄さんとメイの成長痛はどんな感じなんだろ?」
「昨日よりはいいですよ」
「私は問題無い」

「……嘘だべ、もっと食え」
「いただこう」

 兄さんは痩せて見える。
 連続でソウルアップをした影響だろう。

「アキラも食べましょう」
「食え食え」
「いただきます」

 メイはスマホを見ながら焼肉を食べる。

「おお! イノシシ10メートル級、1体撃破、後9体です」
「順調、なのか」
「多分順調です。でも、犠牲は出てますよ」
「マガジンに、弾を込めておいた方が良いかもな」

 3人は無言でマガジンに弾をセットし始めた。

 カチャカチャカチャカチャ!

「あ、いや、何も無い可能性もあるから」
「いや、万が一には備えて置くべ」
「私も出番が来るかもしれない」
「私もやっちゃいますよ☆」
「出るとしたら、防壁を突破されて状況が悪くなってじゃないべ
 
 出るしかない理由が特にない状態でソウルアップしたばかりの2人が出るのはまずい、

「まだ緊急じゃないべ、それより食え食え」
「箸が止まらない」

 横を見ると兄さんがご飯と肉を口にかきこんでいた。

「2体目撃破です」
「順調なのかもな」
「はふんふぁふぁはんふんはおへばひょうくおうはいっきに」

「兄さん、何を言っているか分からない」
「ゴクリ、多分だが、モンスターが半分になれば状況は一気に有利になる」
「10メートル級が半分になれば、か」

「3人とも食べないのか?」
「弾を込めておかないと落ち着かないべ」
「だな」
「その通りだ」

「全部食べてしまうぞ」
「まだまだたくさんあるから遠慮せず食うべ」
「俺達に気を使ってないか? 俺達が負けたのは俺の弱さとタイミングの問題だった。3人は何も悪い事をしていない」

「そうだ。むしろ嫌われ役をやらされたとも言える」
「そうですよ」
「そう言って貰えると助かるべ」

「それに、メイはすぐにCランクになる」
「……え?」
「パーティーを組んで、サモンモンスターとスティールソードで経験値を稼ぎ続けられるからな」
「きゅう♪」
「きゅうもやる気満々だな」

「それって、アキラだけが動き続ける感じになりますよね?」
「多分、すぐに上がる」
「でも、ソウルアップにはスキルの訓練も必要ですよ」

「ソウルアップの条件は能力値の上昇かスキルのアップしかないから、まずは能力値を上げてみよう。駄目だったら手を変えればいい」
「悪いですよ」
「良いから良いから」
「いや良くないですよ」

「何度も食事をごちそうしてくれたお礼をしたい」
「それはお母さんです」
「それにな、消せる悩みなら、消した方が良いだろ?」

「あう、何ですかそのイケメンキャラは、何ですかその笑顔は」
「アキラは前からイケメンだ」
「イナセはイケメンキャラだべ」

 ハンダがスマホをかざした。

 掲示板には『アキラ君がかっこいい』とか『アキラ君で濡れる』とか書いてある。

「多分おっさんがネタで書いているんだろ」
「アキラ、自信を持て、お前は素晴らしいんだから」
「そこで言わなくていいから!」

 ウオーン! ウオーン! ウオーン! ウオーン!

「警報、か」
「アキラの予想通りだべ」
「緊急警報か」

『防壁西にウサギが向かっています。繰り返します!防壁西にウサギが向かっています。高校生を含めた冒険者は防壁西に集合してください』

「北に集合しているのに今度は西か」
「歩いて向かおう」
「おいらも弾の準備は出来たべ」
「共同戦線ですね!」

 6人で歩いて防壁に向かった。

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