105 / 116
第105話 聖魔の騎士
しおりを挟む
マナが泣き叫んだ。
「あああああ、そんな! 私を庇ったせいで!」
兄さんが叫ぶ。
「アキラ! 来たか、マナと一緒にメイを下げろ!」
マナがメイを後ろに下げる。
血が止まらない。
マナが回復のカードを使うが回復が間に合わない。
「血が、血が止まらないの!」
なん、だ、これは?
間に合ったと思ったのに!
何だこれは?
何なんだ、何なんだ!
ブラックハンドが笑いながら叫んだ。
「1人目! 次は誰が死ぬか!! 目を逸らさず見学ううううううううううううううう! はっはっはっは!」
「アキラああああ! 回復魔法だああああ!」
兄さんが叫んだ。
「俺は、回復魔法を使えないんだ、ライカさんや他の」
「もうみんな魔力が無い!! このままではマナが死ぬ!! アキラしかいないんだ!」
「はあ、はあ、俺は」
『アキラ、回復魔法だ』
クラック、だが、俺は!
前世から今までどんなに努力しても回復魔法を覚えられなかった。
その苦しさが、そのイメージが蘇る。
配信の声が聞こえる。
『そんな! マナを誰でもいい、助けてくれ!』
『ばかか、そんな事をしたら、今までただでさえ押されていたのにまた死ぬぞ!』
『たのむ、だれでもいい、回復魔法を使えさえすれば助かるんだ』
『今戦っている人間以外前に出ればすぐに殺される』
『アキラ! 頼む! メイを助けてくれ!』
『アキラを責めてもどうしようも出来ない。無理なんだ!』
『腹を貫かれたんだ。もう間に合わない。分るだろう!!』
『アキラに当たるな!』
「アキラあああ! 自分を信じろおおおお!」
兄さんが叫んだ。
その間も兄さんは押されている。
「俺は、ただのヒールすら使えない」
『ヒールだ! 俺と変われ! ヒールだ!』
「あ、ああ、まずは」
キュインキュイン!
「ヒール!」
黒い魔力が邪魔して発動しない。
『あきらめるな!』
キュインキュイン!
「ヒール!」
黒い魔力が邪魔して発動しない。
「ヒール!」
発動しない。
「ヒール!」
駄目だ!
何か、何かないか!
俺は、ライカさんの、あの時の言葉を思い出した。
あの時も、俺はヒールを使おうとしていた。
「ヒール!」
黒い魔力が混ざって発動しない。
「駄目か」
「アキラ、ヒールには愛が必要よ」
「そう、体に力を入れると、攻撃の魔力、黒い闇魔法に変換されてしまうわね。見ていて」
ライカさんが兄さんに杖を向けた。
「ヒール!」
兄さんが光に包まれた。
兄さんは赤くなって咳払いをした。
「そ、そうか、愛が必要、ならアキラは大丈夫だな」
「え? 全然出来ていないのに」
「いや、アキラは優しい、アキラは深い愛を持っている」
兄さんは真っすぐ俺の目を見て言った。
「そうね、優しい方が光魔法を使いやすいと思うわ」
「アキラには光魔法の適性がある。自分を信じろ」
そうだ、出来ない出来ないと思い込んで、体に力が入っていた。
俺は正座した。
大きく息を吸い込んで吐く。
優しいメイの笑顔を思い出す。
キュインキュイン!
「ヒール!」
発動した、でも、ヒールじゃ駄目だ。
前世の記憶がフラッシュバックした。
そう、そうだった、俺は前世でも、兄さんとライカさんに、同じような事を言われていたんだ。
次、何をすべきか分かっている。
キュインキュインキュインキュイン!
そう、ヒールじゃ駄目だ。
その上位、更に上の魔法を使うしかない。
魔力を使い尽くしてもいい。
後先を考えるな。
今を全力で!
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
「エクスヒール!」
メイをまばゆい光が覆った。
ああ、そうか、ただ助けたい、それだけでいいのか。
メイの傷が塞がり、呼吸が安定する。
これが、光魔法。
俺は闇魔法に邪魔されて光魔法を使えない。
そうやって闇魔法のせいにしてきた。
でも違う、俺の心の思い込みが俺を閉じ込めていた。
前世から分かっていた。
俺の適性は暗黒騎士じゃない、聖魔の騎士だった。
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!奇跡だああああ!』
『アキラが奇跡を起こした!』
『涙が止まらない』
メイが目を覚ました。
「ここ、は?」
「もう、大丈夫だから、今はゆっくり眠ってくれ」
「はい、アキラの光はとっても、温かい、です」
メイが気を失った。
『光魔法ヒールを取得しました』
『上級光魔法エクスヒールを取得しました』
『上級闇魔法ファイブマジックを取得しました』
『上級闇魔法カースウォーを取得しました』
「マナ、泣かないでくれ、もう助かった」
「ええ、ええ」
「俺が前に出て意識を集めたら、メイを連れてそっと後ろに下がっていて欲しい」
俺は立ちあがった。
六角に向かて歩く。
魔力を使いすぎた。
余裕は無い。
このままじゃ六角に押し負ける。
普通の攻撃じゃ駄目だ。
狂気のあの闇魔法、前世でよく使っていたあの攻撃が必要だ。
グレイブレイブを出現させると、4つある宝石の3つ目が輝いていた。
光魔法を強化する特殊能力が目覚めたからだろう。
「すー! はー!」
俺は六角の元に走った。
「ファイブマジック! カースウォー!」
俺の体を黒いオーラが包んだ。
「あああああ、そんな! 私を庇ったせいで!」
兄さんが叫ぶ。
「アキラ! 来たか、マナと一緒にメイを下げろ!」
マナがメイを後ろに下げる。
血が止まらない。
マナが回復のカードを使うが回復が間に合わない。
「血が、血が止まらないの!」
なん、だ、これは?
間に合ったと思ったのに!
何だこれは?
何なんだ、何なんだ!
ブラックハンドが笑いながら叫んだ。
「1人目! 次は誰が死ぬか!! 目を逸らさず見学ううううううううううううううう! はっはっはっは!」
「アキラああああ! 回復魔法だああああ!」
兄さんが叫んだ。
「俺は、回復魔法を使えないんだ、ライカさんや他の」
「もうみんな魔力が無い!! このままではマナが死ぬ!! アキラしかいないんだ!」
「はあ、はあ、俺は」
『アキラ、回復魔法だ』
クラック、だが、俺は!
前世から今までどんなに努力しても回復魔法を覚えられなかった。
その苦しさが、そのイメージが蘇る。
配信の声が聞こえる。
『そんな! マナを誰でもいい、助けてくれ!』
『ばかか、そんな事をしたら、今までただでさえ押されていたのにまた死ぬぞ!』
『たのむ、だれでもいい、回復魔法を使えさえすれば助かるんだ』
『今戦っている人間以外前に出ればすぐに殺される』
『アキラ! 頼む! メイを助けてくれ!』
『アキラを責めてもどうしようも出来ない。無理なんだ!』
『腹を貫かれたんだ。もう間に合わない。分るだろう!!』
『アキラに当たるな!』
「アキラあああ! 自分を信じろおおおお!」
兄さんが叫んだ。
その間も兄さんは押されている。
「俺は、ただのヒールすら使えない」
『ヒールだ! 俺と変われ! ヒールだ!』
「あ、ああ、まずは」
キュインキュイン!
「ヒール!」
黒い魔力が邪魔して発動しない。
『あきらめるな!』
キュインキュイン!
「ヒール!」
黒い魔力が邪魔して発動しない。
「ヒール!」
発動しない。
「ヒール!」
駄目だ!
何か、何かないか!
俺は、ライカさんの、あの時の言葉を思い出した。
あの時も、俺はヒールを使おうとしていた。
「ヒール!」
黒い魔力が混ざって発動しない。
「駄目か」
「アキラ、ヒールには愛が必要よ」
「そう、体に力を入れると、攻撃の魔力、黒い闇魔法に変換されてしまうわね。見ていて」
ライカさんが兄さんに杖を向けた。
「ヒール!」
兄さんが光に包まれた。
兄さんは赤くなって咳払いをした。
「そ、そうか、愛が必要、ならアキラは大丈夫だな」
「え? 全然出来ていないのに」
「いや、アキラは優しい、アキラは深い愛を持っている」
兄さんは真っすぐ俺の目を見て言った。
「そうね、優しい方が光魔法を使いやすいと思うわ」
「アキラには光魔法の適性がある。自分を信じろ」
そうだ、出来ない出来ないと思い込んで、体に力が入っていた。
俺は正座した。
大きく息を吸い込んで吐く。
優しいメイの笑顔を思い出す。
キュインキュイン!
「ヒール!」
発動した、でも、ヒールじゃ駄目だ。
前世の記憶がフラッシュバックした。
そう、そうだった、俺は前世でも、兄さんとライカさんに、同じような事を言われていたんだ。
次、何をすべきか分かっている。
キュインキュインキュインキュイン!
そう、ヒールじゃ駄目だ。
その上位、更に上の魔法を使うしかない。
魔力を使い尽くしてもいい。
後先を考えるな。
今を全力で!
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
「エクスヒール!」
メイをまばゆい光が覆った。
ああ、そうか、ただ助けたい、それだけでいいのか。
メイの傷が塞がり、呼吸が安定する。
これが、光魔法。
俺は闇魔法に邪魔されて光魔法を使えない。
そうやって闇魔法のせいにしてきた。
でも違う、俺の心の思い込みが俺を閉じ込めていた。
前世から分かっていた。
俺の適性は暗黒騎士じゃない、聖魔の騎士だった。
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!奇跡だああああ!』
『アキラが奇跡を起こした!』
『涙が止まらない』
メイが目を覚ました。
「ここ、は?」
「もう、大丈夫だから、今はゆっくり眠ってくれ」
「はい、アキラの光はとっても、温かい、です」
メイが気を失った。
『光魔法ヒールを取得しました』
『上級光魔法エクスヒールを取得しました』
『上級闇魔法ファイブマジックを取得しました』
『上級闇魔法カースウォーを取得しました』
「マナ、泣かないでくれ、もう助かった」
「ええ、ええ」
「俺が前に出て意識を集めたら、メイを連れてそっと後ろに下がっていて欲しい」
俺は立ちあがった。
六角に向かて歩く。
魔力を使いすぎた。
余裕は無い。
このままじゃ六角に押し負ける。
普通の攻撃じゃ駄目だ。
狂気のあの闇魔法、前世でよく使っていたあの攻撃が必要だ。
グレイブレイブを出現させると、4つある宝石の3つ目が輝いていた。
光魔法を強化する特殊能力が目覚めたからだろう。
「すー! はー!」
俺は六角の元に走った。
「ファイブマジック! カースウォー!」
俺の体を黒いオーラが包んだ。
20
あなたにおすすめの小説
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
転生?したら男女逆転世界
美鈴
ファンタジー
階段から落ちたら見知らぬ場所にいた僕。名前は覚えてるけど名字は分からない。年齢は多分15歳だと思うけど…。えっ…男性警護官!?って、何?男性が少ないって!?男性が襲われる危険がある!?そんな事言われても…。えっ…君が助けてくれるの?じゃあお願いします!って感じで始まっていく物語…。
※カクヨム様にも掲載しております
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる