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書籍該当箇所こぼれ話
SS ある雨の日
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シーリンの街に着いてしばらく経った頃のお話です。
**********
街での生活に慣れてきたある日。
朝起きて宿の部屋から外を眺めると、外はしとしとと雨が降っていた。
「あ~。今日は雨か……」
「「……うぅ~」」
天気を見て僕がそう呟くと、アレンとエレナがとてもわかりやすく落ち込んでいた。
何故かというと――昨日の晩、寝る前に「明日は街の外に行って遊ぼうか」と約束していたからだ。
アレンとエレナは、それをとても楽しみにしていたのだ。
「「うぅ~」」
僕が悪いわけではないが、ここまでガッカリした様子を見せられるとさすがに罪悪感が湧いてくる。
ん~……。
「……小降りだし、外套を羽織れば大丈夫かな?」
ちゃんと着込んでさえすれば、多少は濡れてもずぶ濡れになる心配はないだろう。
「どうする? 行く?」
「「いくー!」」
曇っていた表情を一転させ、アレンとエレナは笑顔で僕の足に抱きついてきた。
「よし! じゃあ、まずは朝ご飯を食べよう!」
「「うん!」」
他人がいるところではまだあまり感情を表に出さない二人だが、僕達だけの場所だと無邪気な様子を見せるようになってきた。
そんなアレンとエレナの様子に、頬を緩めながら朝ご飯を食べるために僕達は部屋を出た。
食堂で朝ご飯を済ませた僕達は、頭から外套をすっぽりと被って街の外――南の草原へとやって来た。
「「うきゃ~」」
街を出た途端、アレンとエレナはぴしゃぴしゃと水溜まりを踏みながら思いっきり走り出した。
「転ぶなよー」
「「はーい」」
走り回っていると思ったら、アレンとエレナは突然しゃがみこんだ。
ん? 何かを見つけたかな?
僕はしゃがんでいる二人のもとへ行き、上から覗き込んだ。
すると、そこにはカエルの姿が見えた。魔物ではない、手のひらよりも小さな普通のカエルだ。
「これはカエルだよ」
「「かえるー」」
アレンとエレナは飛び跳ねるカエルの動きが気に入ったようだ。
「ぴょんぴょん」
「けろけろー」
二人は飛んで移動するカエルの後を追って、飛び跳ねる真似しながら追いかけていく。
うんうん、こういう風にはしゃぐ姿を見ると、雨でもわざわざ遊びにきた甲斐があったってもんだ。
カエルを追い回した後は、二人の気の向くままにあちこちと移動し、興味を示したものを観察して歩いた。
「「おにーちゃん! あっちにいくー」」
「はいはい」
森の中を散策し、今度は街の近くの草原へ戻るようだ。
お、雨も止んできたな。
「ほら、アレン、エレナ。虹が出てるよ」
雲の隙間から太陽が顔を出すと、空に大きな虹が架かった。
僕はすぐにアレンとエレナに空を見るように声をかける。
「にじー、すごーい」
「にじー、きれー」
初めて見る虹にアレンとエレナは指をさしながら大はしゃぎしていた。
「「おにーちゃん、これもにじー?」」
「ん?」
下に……虹?
空を見上げていたはずなのアレンとエレナが、今度は地面を指さしていた。
「……え?」
二人の指す方へ目を向けると、七色の花弁の花――「彩虹花」が地面いっぱいに咲いていた。
彩虹花は雨が降った後、虹が出る瞬間に咲き、虹が消える瞬間に枯れてしまうという花だ。しかも咲く場所はランダム。何処に咲くのか全く予想ができない花なのだ。
発見条件が難しいため、当然レア素材だ。
「これは彩虹花。薬草だよ」
陽の光が当たり、花びらがキラキラと光っている。
これにお目に掛かれるなんて、とんでもなく幸運のはずだ。
「「やくそう!!」」
「アレン、とるー」
「エレナもとるー」
「え?」
薬草と聞くなり、アレンとエレナは彩虹花の採取をし始めた。
貴重な薬草だから採っておくことにこしたことはないが、今日は遊びに来たはずなんだけどなぁ……。
まあ、薬草採りも楽しそうにしているから、二人がそれでいいのなら……いいか? うん、いいことにしよう。
それじゃあ、僕も採ろうか。
「「あれー?」」
充分な量の花を摘んだ頃、虹が消えると同時に彩虹花は一瞬で枯れ果て、草原はもとの姿へと戻った。
「「なくなっちゃったー」」
「本当に何にもないな……」
摘み取った花はそのままの状態で残っているというのに、それ以外は枯れた残骸すら見当たらない。
摘んだ花を持っていなかったら、今まで見ていたのは幻だったんでは? と疑っていただろう。
「不思議だねー」
「「ねー」」
「今日は楽しかった?」
「「たのしかったー」」
最後の最後で素材採集となったが、アレンとエレナは充分に楽しんだようだった。
「じゃあ、そろそろ帰ろうか」
「「うん」」
◇ ◇ ◇
「きゃーーー!!」
貴重な薬草である彩虹花を《無限収納》の肥やしにしておくのはもったいないかなぁ~と思い、少し売却しようとギルドに寄ることにした。
そこで、取りだした彩虹花を見たルーナさんが絶叫した。
しかも、叫びすぎて「げほげほっ」と咽せている。
「これ、彩虹花じゃないですかっ!? 凄い凄いっ!!」
「あ~……これを売却でお願いできますか?」
「喜んでー!!」
喜ぶんじゃないかなぁ~とは思っていたが、あまり多くない量であるのにもかかわらず予想以上の喜びようであった。
アレンとエレナはルーナさんの激しい反応に、若干怯えて僕の足に張りついていた……。
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街での生活に慣れてきたある日。
朝起きて宿の部屋から外を眺めると、外はしとしとと雨が降っていた。
「あ~。今日は雨か……」
「「……うぅ~」」
天気を見て僕がそう呟くと、アレンとエレナがとてもわかりやすく落ち込んでいた。
何故かというと――昨日の晩、寝る前に「明日は街の外に行って遊ぼうか」と約束していたからだ。
アレンとエレナは、それをとても楽しみにしていたのだ。
「「うぅ~」」
僕が悪いわけではないが、ここまでガッカリした様子を見せられるとさすがに罪悪感が湧いてくる。
ん~……。
「……小降りだし、外套を羽織れば大丈夫かな?」
ちゃんと着込んでさえすれば、多少は濡れてもずぶ濡れになる心配はないだろう。
「どうする? 行く?」
「「いくー!」」
曇っていた表情を一転させ、アレンとエレナは笑顔で僕の足に抱きついてきた。
「よし! じゃあ、まずは朝ご飯を食べよう!」
「「うん!」」
他人がいるところではまだあまり感情を表に出さない二人だが、僕達だけの場所だと無邪気な様子を見せるようになってきた。
そんなアレンとエレナの様子に、頬を緩めながら朝ご飯を食べるために僕達は部屋を出た。
食堂で朝ご飯を済ませた僕達は、頭から外套をすっぽりと被って街の外――南の草原へとやって来た。
「「うきゃ~」」
街を出た途端、アレンとエレナはぴしゃぴしゃと水溜まりを踏みながら思いっきり走り出した。
「転ぶなよー」
「「はーい」」
走り回っていると思ったら、アレンとエレナは突然しゃがみこんだ。
ん? 何かを見つけたかな?
僕はしゃがんでいる二人のもとへ行き、上から覗き込んだ。
すると、そこにはカエルの姿が見えた。魔物ではない、手のひらよりも小さな普通のカエルだ。
「これはカエルだよ」
「「かえるー」」
アレンとエレナは飛び跳ねるカエルの動きが気に入ったようだ。
「ぴょんぴょん」
「けろけろー」
二人は飛んで移動するカエルの後を追って、飛び跳ねる真似しながら追いかけていく。
うんうん、こういう風にはしゃぐ姿を見ると、雨でもわざわざ遊びにきた甲斐があったってもんだ。
カエルを追い回した後は、二人の気の向くままにあちこちと移動し、興味を示したものを観察して歩いた。
「「おにーちゃん! あっちにいくー」」
「はいはい」
森の中を散策し、今度は街の近くの草原へ戻るようだ。
お、雨も止んできたな。
「ほら、アレン、エレナ。虹が出てるよ」
雲の隙間から太陽が顔を出すと、空に大きな虹が架かった。
僕はすぐにアレンとエレナに空を見るように声をかける。
「にじー、すごーい」
「にじー、きれー」
初めて見る虹にアレンとエレナは指をさしながら大はしゃぎしていた。
「「おにーちゃん、これもにじー?」」
「ん?」
下に……虹?
空を見上げていたはずなのアレンとエレナが、今度は地面を指さしていた。
「……え?」
二人の指す方へ目を向けると、七色の花弁の花――「彩虹花」が地面いっぱいに咲いていた。
彩虹花は雨が降った後、虹が出る瞬間に咲き、虹が消える瞬間に枯れてしまうという花だ。しかも咲く場所はランダム。何処に咲くのか全く予想ができない花なのだ。
発見条件が難しいため、当然レア素材だ。
「これは彩虹花。薬草だよ」
陽の光が当たり、花びらがキラキラと光っている。
これにお目に掛かれるなんて、とんでもなく幸運のはずだ。
「「やくそう!!」」
「アレン、とるー」
「エレナもとるー」
「え?」
薬草と聞くなり、アレンとエレナは彩虹花の採取をし始めた。
貴重な薬草だから採っておくことにこしたことはないが、今日は遊びに来たはずなんだけどなぁ……。
まあ、薬草採りも楽しそうにしているから、二人がそれでいいのなら……いいか? うん、いいことにしよう。
それじゃあ、僕も採ろうか。
「「あれー?」」
充分な量の花を摘んだ頃、虹が消えると同時に彩虹花は一瞬で枯れ果て、草原はもとの姿へと戻った。
「「なくなっちゃったー」」
「本当に何にもないな……」
摘み取った花はそのままの状態で残っているというのに、それ以外は枯れた残骸すら見当たらない。
摘んだ花を持っていなかったら、今まで見ていたのは幻だったんでは? と疑っていただろう。
「不思議だねー」
「「ねー」」
「今日は楽しかった?」
「「たのしかったー」」
最後の最後で素材採集となったが、アレンとエレナは充分に楽しんだようだった。
「じゃあ、そろそろ帰ろうか」
「「うん」」
◇ ◇ ◇
「きゃーーー!!」
貴重な薬草である彩虹花を《無限収納》の肥やしにしておくのはもったいないかなぁ~と思い、少し売却しようとギルドに寄ることにした。
そこで、取りだした彩虹花を見たルーナさんが絶叫した。
しかも、叫びすぎて「げほげほっ」と咽せている。
「これ、彩虹花じゃないですかっ!? 凄い凄いっ!!」
「あ~……これを売却でお願いできますか?」
「喜んでー!!」
喜ぶんじゃないかなぁ~とは思っていたが、あまり多くない量であるのにもかかわらず予想以上の喜びようであった。
アレンとエレナはルーナさんの激しい反応に、若干怯えて僕の足に張りついていた……。
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