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第三章 アルリナの影とケントの闇
そもそもとして
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私はうんざりとした思いを表すように、肩を落として彼らに話しかけた。
「あのな、そもそもとして、エクアは港町アルリナの民ではないのだが」
「え?」
「彼女は南方の大陸ガデリの北部にある『メッツェン』という町からやってきた旅人だ。エクア、こちらに来て、アルリナに籍を置くための手続きをしたか?」
「いえ、そんな手続きした覚えはありません。来てしばらくは、雇って頂いたお店を転々としていましたし。その後のお家の用意や滞在の準備は、ジェイドおじ様が全部してくれてたので」
「そういうわけだ。つまり、エクアはアルリナに長逗留しているが、籍を置いたわけではない!」
ここではっきりと断言し、彼らに事実を突きつけた。
小柄な戦士は後ろに立つ無骨そうな戦士に尋ねる。
「えっと、どうするんだ?」
「え~っと、アルリナの民じゃないなら、どこへ行こうと口は挟めないね……」
「な、な、な……」
言葉の詰まる小柄な戦士。
ようやく、この下らない茶番を終えられそうだ。
「ということだ。それでは、失礼する――フフン」
私は彼らから視線を切って、後ろを振り向いた。
その時、口元をはっきりと緩め、鼻で笑ってやった。
それはしっかりと小柄な戦士の耳に入り、彼は激昂した。
「ま、待てや、こらぁぁあ!」
「なんだ? もう引き留められる理由はないが」
「理由なんかどうでもいいんだよ! ムキ様がガキを連れてこいって言ってんだから、てめぇは引っ込んでろ!! 殺すぞっ!!」
「フフ」
笑いが零れ落ちる……これで本題に入れる。ここからが本物の茶番の始まりだ。
「て、てめぇ、何がおかしいぃぃ!?」
「ははは、あははは、あ~はっはっは! それはおかしいだろ!」
「なに?」
「シアンファミリーと言えば、港町アルリナの顔役と言っていい存在。そうだというのに、このような華奢な少女に会いたいがために傭兵どもを繰り出してくるとは! ムキ=シアンとは、さぞ、臆病なのだろうな!」
「てめぇええええ! ぶっ殺ぉぉす!」
小柄な戦士は手を剣柄に置き、前へ飛び出そうとした。
だが、ギウが私の前面に立ち、彼の動きを牽制する。
私はさらに仰々しく、高らかに、ムキ=シアンを罵倒していく。
「少女一人を所望するために傭兵の影に隠れる男、ムキ=シアン。なんと、情けない男だ! アルリナの町を我が物顔にしていると聞いたが、己自身は顔も出せないとは! ガラス細工のように繊細な御仁なのだろう! 外へ出るのが怖いとみえる!」
私は舞台の演者のように派手に体を振り、指先を戦士たちに向けた。
「見よ、この下品な連中を! 教養の欠片もなく礼儀も知らない。このような連中を部下としている、ムキ=シアンという男の中身が知れる!」
ムキ=シアンの屋敷がある高台に指先を突きつける。
「己を大きく見せるために高き場所に大きな屋敷を構えているのだろう。だが、それは器の小ささの裏返し。心根は腐れ落ち、こそこそ這い回る虫のようだ!」
「いい加減にしろ、てめぇ!! 殺す殺す、ぶっ殺す!!」
罵倒に次ぐ罵倒に耐え兼ねた小柄な戦士が剣を抜いた。
しかし、ギウがすぐさま彼の腹部を銛の柄頭で打つ。
「ギウ!」
「グハッ!」
彼は身体を前のめりして地面と唇を交わす。
私は多少なりとも教養のありそうな無骨そうな戦士に尋ねる。
「我々が君たちから咎められる道理はない」
「クッ……ケント様を咎めることはできなくとも、通行権を行使し、そちらのお嬢さんを町から出さない、という手段を――」
「彼女は私の客人だ。まさか、一傭兵の身でありながら、他領主の客人を侮辱するつもりか?」
「それは……」
「すでに、君たちは領主である私に無礼を働いているんだぞ。さらに事を構えれば、不利なのは君たちだと思うが?」
「し、しかしっ」
「君に、これ以上の行為を判断する権限はあるのか?」
「うっ……」
「理解してもらえてうれしいよ。ギウ、エクア。行こう」
私とギウはエクアを守るように寄り添い、傭兵たちから離れていく。
無骨そうな戦士は去り際の私たちへ、苦し紛れの言葉をぶつけた。
「ここは退きます。だが、ムキ=シアン様を虚仮にした落とし前は必ずつけさえてもらう。決して、ムキ様はあなたを許しやしない……」
「許さないだと? ならば、ムキにこう伝えておけ。一人とは言え、私はヴァンナス国より古城トーワを預かった領主。事を構える覚悟がお前にはあるのか? と……」
「承りました。だが、あまりムキ様を舐めないで貰いたい。このような多くの目がある場での侮辱……あの方は自分への侮辱を決して許さない」
「ふん、どうだか。臆病者に私とやり合う覚悟があるかな?」
私は最後の最後までムキ=シアンを侮辱し、この場を去った……。
「あのな、そもそもとして、エクアは港町アルリナの民ではないのだが」
「え?」
「彼女は南方の大陸ガデリの北部にある『メッツェン』という町からやってきた旅人だ。エクア、こちらに来て、アルリナに籍を置くための手続きをしたか?」
「いえ、そんな手続きした覚えはありません。来てしばらくは、雇って頂いたお店を転々としていましたし。その後のお家の用意や滞在の準備は、ジェイドおじ様が全部してくれてたので」
「そういうわけだ。つまり、エクアはアルリナに長逗留しているが、籍を置いたわけではない!」
ここではっきりと断言し、彼らに事実を突きつけた。
小柄な戦士は後ろに立つ無骨そうな戦士に尋ねる。
「えっと、どうするんだ?」
「え~っと、アルリナの民じゃないなら、どこへ行こうと口は挟めないね……」
「な、な、な……」
言葉の詰まる小柄な戦士。
ようやく、この下らない茶番を終えられそうだ。
「ということだ。それでは、失礼する――フフン」
私は彼らから視線を切って、後ろを振り向いた。
その時、口元をはっきりと緩め、鼻で笑ってやった。
それはしっかりと小柄な戦士の耳に入り、彼は激昂した。
「ま、待てや、こらぁぁあ!」
「なんだ? もう引き留められる理由はないが」
「理由なんかどうでもいいんだよ! ムキ様がガキを連れてこいって言ってんだから、てめぇは引っ込んでろ!! 殺すぞっ!!」
「フフ」
笑いが零れ落ちる……これで本題に入れる。ここからが本物の茶番の始まりだ。
「て、てめぇ、何がおかしいぃぃ!?」
「ははは、あははは、あ~はっはっは! それはおかしいだろ!」
「なに?」
「シアンファミリーと言えば、港町アルリナの顔役と言っていい存在。そうだというのに、このような華奢な少女に会いたいがために傭兵どもを繰り出してくるとは! ムキ=シアンとは、さぞ、臆病なのだろうな!」
「てめぇええええ! ぶっ殺ぉぉす!」
小柄な戦士は手を剣柄に置き、前へ飛び出そうとした。
だが、ギウが私の前面に立ち、彼の動きを牽制する。
私はさらに仰々しく、高らかに、ムキ=シアンを罵倒していく。
「少女一人を所望するために傭兵の影に隠れる男、ムキ=シアン。なんと、情けない男だ! アルリナの町を我が物顔にしていると聞いたが、己自身は顔も出せないとは! ガラス細工のように繊細な御仁なのだろう! 外へ出るのが怖いとみえる!」
私は舞台の演者のように派手に体を振り、指先を戦士たちに向けた。
「見よ、この下品な連中を! 教養の欠片もなく礼儀も知らない。このような連中を部下としている、ムキ=シアンという男の中身が知れる!」
ムキ=シアンの屋敷がある高台に指先を突きつける。
「己を大きく見せるために高き場所に大きな屋敷を構えているのだろう。だが、それは器の小ささの裏返し。心根は腐れ落ち、こそこそ這い回る虫のようだ!」
「いい加減にしろ、てめぇ!! 殺す殺す、ぶっ殺す!!」
罵倒に次ぐ罵倒に耐え兼ねた小柄な戦士が剣を抜いた。
しかし、ギウがすぐさま彼の腹部を銛の柄頭で打つ。
「ギウ!」
「グハッ!」
彼は身体を前のめりして地面と唇を交わす。
私は多少なりとも教養のありそうな無骨そうな戦士に尋ねる。
「我々が君たちから咎められる道理はない」
「クッ……ケント様を咎めることはできなくとも、通行権を行使し、そちらのお嬢さんを町から出さない、という手段を――」
「彼女は私の客人だ。まさか、一傭兵の身でありながら、他領主の客人を侮辱するつもりか?」
「それは……」
「すでに、君たちは領主である私に無礼を働いているんだぞ。さらに事を構えれば、不利なのは君たちだと思うが?」
「し、しかしっ」
「君に、これ以上の行為を判断する権限はあるのか?」
「うっ……」
「理解してもらえてうれしいよ。ギウ、エクア。行こう」
私とギウはエクアを守るように寄り添い、傭兵たちから離れていく。
無骨そうな戦士は去り際の私たちへ、苦し紛れの言葉をぶつけた。
「ここは退きます。だが、ムキ=シアン様を虚仮にした落とし前は必ずつけさえてもらう。決して、ムキ様はあなたを許しやしない……」
「許さないだと? ならば、ムキにこう伝えておけ。一人とは言え、私はヴァンナス国より古城トーワを預かった領主。事を構える覚悟がお前にはあるのか? と……」
「承りました。だが、あまりムキ様を舐めないで貰いたい。このような多くの目がある場での侮辱……あの方は自分への侮辱を決して許さない」
「ふん、どうだか。臆病者に私とやり合う覚悟があるかな?」
私は最後の最後までムキ=シアンを侮辱し、この場を去った……。
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