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第四章 権謀術策
交差する思惑
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小柄な戦士はいまだ納得できていないようだ。
そこで私は、彼にある提案を行った。
「君たちはムキの罰が怖いのか? ならば、私たちを過大評価して報告するといい」
「は、どういうことだよ?」
「君たちは勇ましく古城に攻撃を仕掛けた。だが、ギウはもちろん私も凄腕で手強かった。さらにはギウの仲間たちがいた。これでは手勢数十人程度じゃ歯が立ちません、とな」
「あ、ああ、なるほどな」
「ただし報告の際に、必死な思いで命乞いをしないとどうなるかわからんぞ」
「そりゃまあ、ムキ様の性格からしたらなぁ。なるほど、過大にねぇ……」
小柄な戦士は顎に手を置き、ふむふむと頷いている。
その彼から少し離れた場所で網に絡まっている無骨そうな戦士が、訝し気な表情で私を見ていた。
「どうして、俺っちたちを助けるような真似を? それにそんな報告をすれば次は、っ!?」
彼は突然目を大きく見開き、唇を震わせる。
そして、何度も瞬きを交え、無言で頭を振り始めた。
どうやら彼は、先に続く展開に気づいてしまったようだ。
それでも、放置しても良いのだが……放置した場合、面倒事が増えるので彼をアルリナへ戻すわけにはいかない。
「そこの君。悪いが捕虜になってもらうぞ。さすがに黙って全員を返すわけにはいかないからな」
「俺っちを捕虜に?」
「ちょっと待ってくれ!? こいつを捕虜にするなら、俺を捕虜にしてくれ!」
小柄な戦士は網に絡まり、思うように身動きが取れない中でも必死に体を動かし、無骨そうな戦士を庇うように彼の腕を掴んだ。
「兄貴……」
「こいつとは古い付き合いで、俺の大切な仲間なんだ。だから、こいつを酷い目に遭わせるわけにはいかねぇ」
「……兄貴。ありがとう。そんな風に思ってくれていたなんて……でも、大丈夫。ケント様」
「なにかな?」
「今回の件で『大義』はそちらにあります。俺っちには終わりまでは見通せませんが、ケント様にははっきりと終着が見えているのでしょう」
「ふむ、それで?」
「俺っちたちを解放してください。必ずや、ムキ様を説得してみせます!」
「信用の担保は?」
「それはっ」
彼はそばにいる兄貴分をしっかりと見つめ、私に視線を戻す。
その視線は大切な誰かを思う心。彼にとって大切なのはムキよりも……。
見られた当の兄貴分は、何が何やらさっぱり、という態度を見せている。
弟分の想いをわからぬ兄貴分はさておき、この無骨そうな戦士は兄貴分と違い、状況の半分ほどを理解できているようだ。
「そうか。わかった、君たちを解放しよう。ムキを説得してくれ。無用な争いは避けたいからな」
「はい、必ずや、ご期待に沿えます!」
無骨そうな戦士の声が闇夜を叩き起こす。
私は彼の言葉を信じ、傭兵たちを解放した。
傭兵たちは無骨そうな戦士に従い、素直に古城トーワから立ち去っていく。
彼らの背中を見送る私の近くに、エクアとギウが寄り添う。
「いいんですか、逃がしても? 特にあちらのおっきな戦士さんは、ケント様の策に気づいているみたいですけど」
「ギウギウ」
「敵が策に気づいていることに対して不安を覚えるだろうが、彼は兄貴分を守るためにこちらに協力する」
「その根拠となるのは?」
「ムキの性分からみて、このまま手ぶらで帰ればどんなに謝罪を口にしようが、あの兄貴分は責任を取らされ殺される」
「あのおっきな戦士さんはそれを止めるために、ケント様側に?」
「そうなる。そのために彼は、一世一代の芝居を打つつもりだろう……」
――森の中
古城トーワから意気消沈と無言で歩き続ける傭兵たち。
その沈黙に耐え兼ねて、小柄な戦士が無骨そうな戦士に話しかけた。
「あのよぉ、本当にムキ様を説得して、矛を収めさせるつもりかよ?」
「まさかっ、そんなことをするつもりなんてさらさらないよ」
「なに?」
「俺っちはムキ様にお会い次第、全軍を以ってケントを討ち取るよう進言するつもり」
「おいおいおい、マジかよ?」
「本気だよ。そうじゃないと、俺っちも兄貴もムキ様に殺されてしまう」
「ん?」
「ムキ様は失敗を許さない。すでに俺っちたちは一度失敗している。二度目となると……」
「そ、そうだな。で、でも、どうする? このまま手ぶらで帰ったら!」
「まずはケントの言い訳を借りる。次に進言を行い、同時にケントを討つことを誓うんだ。もし、失敗すれば、俺っちたちの首を差し出すと!」
「そこまで……」
「する必要がある! 覚悟を示すことで、三度目のチャンスをもぎ取る。だから、兄貴も覚悟をしておいて!」
そこで私は、彼にある提案を行った。
「君たちはムキの罰が怖いのか? ならば、私たちを過大評価して報告するといい」
「は、どういうことだよ?」
「君たちは勇ましく古城に攻撃を仕掛けた。だが、ギウはもちろん私も凄腕で手強かった。さらにはギウの仲間たちがいた。これでは手勢数十人程度じゃ歯が立ちません、とな」
「あ、ああ、なるほどな」
「ただし報告の際に、必死な思いで命乞いをしないとどうなるかわからんぞ」
「そりゃまあ、ムキ様の性格からしたらなぁ。なるほど、過大にねぇ……」
小柄な戦士は顎に手を置き、ふむふむと頷いている。
その彼から少し離れた場所で網に絡まっている無骨そうな戦士が、訝し気な表情で私を見ていた。
「どうして、俺っちたちを助けるような真似を? それにそんな報告をすれば次は、っ!?」
彼は突然目を大きく見開き、唇を震わせる。
そして、何度も瞬きを交え、無言で頭を振り始めた。
どうやら彼は、先に続く展開に気づいてしまったようだ。
それでも、放置しても良いのだが……放置した場合、面倒事が増えるので彼をアルリナへ戻すわけにはいかない。
「そこの君。悪いが捕虜になってもらうぞ。さすがに黙って全員を返すわけにはいかないからな」
「俺っちを捕虜に?」
「ちょっと待ってくれ!? こいつを捕虜にするなら、俺を捕虜にしてくれ!」
小柄な戦士は網に絡まり、思うように身動きが取れない中でも必死に体を動かし、無骨そうな戦士を庇うように彼の腕を掴んだ。
「兄貴……」
「こいつとは古い付き合いで、俺の大切な仲間なんだ。だから、こいつを酷い目に遭わせるわけにはいかねぇ」
「……兄貴。ありがとう。そんな風に思ってくれていたなんて……でも、大丈夫。ケント様」
「なにかな?」
「今回の件で『大義』はそちらにあります。俺っちには終わりまでは見通せませんが、ケント様にははっきりと終着が見えているのでしょう」
「ふむ、それで?」
「俺っちたちを解放してください。必ずや、ムキ様を説得してみせます!」
「信用の担保は?」
「それはっ」
彼はそばにいる兄貴分をしっかりと見つめ、私に視線を戻す。
その視線は大切な誰かを思う心。彼にとって大切なのはムキよりも……。
見られた当の兄貴分は、何が何やらさっぱり、という態度を見せている。
弟分の想いをわからぬ兄貴分はさておき、この無骨そうな戦士は兄貴分と違い、状況の半分ほどを理解できているようだ。
「そうか。わかった、君たちを解放しよう。ムキを説得してくれ。無用な争いは避けたいからな」
「はい、必ずや、ご期待に沿えます!」
無骨そうな戦士の声が闇夜を叩き起こす。
私は彼の言葉を信じ、傭兵たちを解放した。
傭兵たちは無骨そうな戦士に従い、素直に古城トーワから立ち去っていく。
彼らの背中を見送る私の近くに、エクアとギウが寄り添う。
「いいんですか、逃がしても? 特にあちらのおっきな戦士さんは、ケント様の策に気づいているみたいですけど」
「ギウギウ」
「敵が策に気づいていることに対して不安を覚えるだろうが、彼は兄貴分を守るためにこちらに協力する」
「その根拠となるのは?」
「ムキの性分からみて、このまま手ぶらで帰ればどんなに謝罪を口にしようが、あの兄貴分は責任を取らされ殺される」
「あのおっきな戦士さんはそれを止めるために、ケント様側に?」
「そうなる。そのために彼は、一世一代の芝居を打つつもりだろう……」
――森の中
古城トーワから意気消沈と無言で歩き続ける傭兵たち。
その沈黙に耐え兼ねて、小柄な戦士が無骨そうな戦士に話しかけた。
「あのよぉ、本当にムキ様を説得して、矛を収めさせるつもりかよ?」
「まさかっ、そんなことをするつもりなんてさらさらないよ」
「なに?」
「俺っちはムキ様にお会い次第、全軍を以ってケントを討ち取るよう進言するつもり」
「おいおいおい、マジかよ?」
「本気だよ。そうじゃないと、俺っちも兄貴もムキ様に殺されてしまう」
「ん?」
「ムキ様は失敗を許さない。すでに俺っちたちは一度失敗している。二度目となると……」
「そ、そうだな。で、でも、どうする? このまま手ぶらで帰ったら!」
「まずはケントの言い訳を借りる。次に進言を行い、同時にケントを討つことを誓うんだ。もし、失敗すれば、俺っちたちの首を差し出すと!」
「そこまで……」
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