銀眼の左遷王ケントの素人領地開拓&未踏遺跡攻略~だけど、領民はゼロで土地は死んでるし、遺跡は結界で入れない~

雪野湯

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第七章 遺跡に繋がるもの

ギウと古代遺跡

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――三日後

 
 フィナが古城トーワに訪れて三日が経った。
 彼女はゴリンたちをあごで使い、地下の天井に穴を開けさせ、換気口をつけている。
 自分の城に意図しない改良を加えられて私はなんとも形容しがたい感情に包まれるが、風呂へ水を送り出すポンプと風呂釜を修理してもらったので、これを相殺し、なんとか収めるとしよう。

 余談になるが、ポンプの設置してある井戸は城の外壁がいへきのすぐそばにあったらしい。しかし、私が訪れた時は、その周辺は深い草に覆われていたため気づかなかったようだ。

 そのポンプや風呂釜だが、錆びついて劣化している部分があるものの、それはゴリンが応急処置をとり、動かすための魔導機構や動力となる魔石はフィナが修理や代用品を駆使し直してくれた。
 これらを僅か数時間で終わらせたのは、正直驚きだった。


 おかげで大工たちに暖かな風呂が提供できるようになって良かった。
 その実力が認められたためか、表向き、一介の少女錬金術士であるフィナに対して大工たちは一目置いている。
 だからこそ、あの不遜で態度のでかい少女にあごで使われてもあまり不満のない様子。

 彼女の存在に功罪あるが、今のところ功が勝っているようだ。

 
 さて、話は変わるが、現在私は、ワントワーフに銃弾の製造を依頼するための準備を行っている最中だ。
 彼らの領地は半島と大陸を分断するファーレ山脈の袂――半島の最北東に位置するトロッカー鉱山。
 このトロッカー鉱山に向かうメンバーは、私・エクア・フィナだ。

 護衛の意味を込めてギウにも来てほしかったのだが、ワントワーフに会いに行く道中、古代人の遺跡に立ち寄ると伝えると、彼は奇妙な反応を見せて同行を嫌がった。


――前日・執務室


「そういうわけで、古代人の遺跡を覗いていこうと思う。ギウ、護衛を頼んだぞ」
「ギウ……」
「どうした、ギウ?」

 ギウは北の荒れ地の方角に顔を向けて、身体を震えさせる。
「ぎう~、ぎう」
「もしかして、遺跡に近づきたくないのか?」
「……ギウ」
「そうか、わかった。ならば、君は城に残り、ゴリンたちと共に城の修復に尽力してくれ」

 
 彼が遺跡に近づきたくない理由を知りたかった。
 だが、怯えるような姿を見せる彼にあまり深く問うのは酷かと思い、私は言葉を飲み込んだ。
 
 ギウはあの遺跡のことを詳しく知っているのだろうか?
 知って、恐怖するような場所なのだろうか?
 それとも、汚染のことは知っているだろうから、単純にそれに対して恐れを抱いているのか?
 もしくは、ギウという種族は遺跡を神聖視、あるいは悪しきものと見ているのか?

 いずれにせよ、私に危険が及ぶ可能性があるのならば彼は私を止めるはず。
 遺跡が実際にどのようなものかは自身の目で見て判断しようと思う。


 こういった事情で、ギウを抜いた三人で遺跡を経由し、ワントワーフに会いに行くことになった。
 フィナとエクアは各々旅支度をしている。

 私は旅支度を終えて、出発前にニワトリたちを小屋に戻そうと奮闘していた。
 小屋はゴリンたちが作ってくれたものだ。
 おかげでようやく、朝っぱらからニワトリの鳴き声が城内に響く環境からのがれることができた。
 だが、ニワトリたちは生意気にも城での生活が忘れられないようで、放牧した後に小屋へ戻ろうとしない。

 
 私は両手をバタバタさせながら大声を上げて彼らを追い立てる。
「こけ~、こここここ、こけ~こここ!」
 この姿をフィナに見られた。

「……あんた、なにやってんの?」
「見てわからないか? ニワトリたちを小屋に戻そうとしているのだ」
「のだ、って、大の男がコケコケ言って……」
「言いたくて言っているわけじゃないっ。こうやって脅さないとこいつらは言うことを聞かん。こけ~こここここ!」
「はぁ、一応領主でしょ。他の人に任せなさいよ……仕方ない、ちょっとどいて」


 フィナは華麗に舞う私の両手を降ろさせて、ニワトリの前に立つ。
 そして、造作もなく一羽の巨大ニワトリを抱え上げて、小屋に放り込んだ。
 さらにニワトリを捕まえ、放り込む。放り込む。放り込む。放り込む。


「はい、こんなもんね。追い立てるなんて面倒だから、捕まえた方が早いよ」
「よく、彼らを捕まえることができるな。つつかれるのが怖くないのか?」
「ニワトリ如きにつつかれることを怖がってるあんたにびっくりよ。そんなんで、古代遺跡の探索なんてできるの?」

「探索じゃない、覗くだけだ。結界もあるしな。君の方こそ、大丈夫なのか? 何か危険なことがあっても、悲しいが私の実力だとエクアを守るのが精一杯だ」
「大丈夫よ。こう見えても私、魔族を三匹同時に相手にしても勝てるくらいの実力があるから。自分の身もまともに守れなさそうな領主様くらいなら、ついでに守ってあげられるよ」
「うぐぅ……それは頼もしいなっ」


 フィナはチロルハットのつばを指先でピンと跳ねて微笑む。
 それに対して私は、ひくつく頬を見せて言葉を吐き飛ばすのがやっとだった。
 だがしかし、フィナの言うとおり、私の実力は不足している。
 それとは真逆に、彼女の実力はギウの認めるところ。
 
 ギウに同行を断られた際にフィナが護衛役として買って出たが、ギウはそれを認めた。
 執務室でのナイフの投げ合いで、二人は互いの実力を知ったようだ。
 彼女の口にする、『魔族を三匹同時に相手』の言葉も誇張ではないのだろう。
 となると、彼女の実力は一流の戦士を超えるレベルだということ。


 魔族相手に一対一で勝てるならば、一流の戦士。
 複数を相手に勝てるならば、それ以上の戦士。
 つまりは己のみだけではなく、誰かを守れる戦士。多くの人から賛美され、讃えられる存在。
 さらに村や町そのものを守れるならば、勇者と呼ばれる存在になるだろう。

 私は戦士とは程遠い、彼女の流れるような女性のラインを見つめ、言葉を落とす。
「見た目は少女だというのに、知識と実力を兼ね備えた錬金術師というわけか」
「そ。見た目は美少女だけど、超絶天才で超強い戦士ってわけ。世界一の錬金術師の名は伊達じゃないよ」

「ははは、この旅路で、その戦士の部分が発揮されないことを祈ろう」
「ええ~、何かあった方が面白くない?」
「ないっ。それよりも、準備ができたのだろう?」
「うん。エクアも準備を終えて、北側の防壁のそばで待ってるよ」
「そうか、ならば急いで向かおう」
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