銀眼の左遷王ケントの素人領地開拓&未踏遺跡攻略~だけど、領民はゼロで土地は死んでるし、遺跡は結界で入れない~

雪野湯

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第七章 遺跡に繋がるもの

勇者は……

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――続・フィナの説明(個人の感情込み)


 ヴァンナスが魔族の脅威と対抗しつつ、周辺国相手に勝ち続けるには勇者の力が必要。
 だけどもちろん、彼らにも寿命がある。寿命は私たち人間族とあまり変わらないみたい。
 そこでヴァンナスは勇者増産計画を考えたの。

 勇者の血を引く者たちだけで村を作らせた。村の名前はテラ。
 そこで彼らを洗脳した。
 生まれながらにヴァンナスへ忠誠を誓わせ、それが当たり前であるように教育していく。

 でも、計画の当初誕生した、スカルペル人と地球人の間にできた子どもたちの力はいまいちだった。
 そこでなるべく、スカルペル人と交配させることなく、地球人の血を引く者同士で子どもを作らせていく。
 もちろん、彼らにはそれが当たり前だと教育していった。

 血の濃ゆくなった彼らは初代の勇者と比べ力は弱いものの、定期的に勇者と名乗れる力量を持つ存在をヴァンナスに供給できるようになった。それでも二十年で数人単位だけどね。
 彼らはヴァンナスに尽くすことが当たり前だと思い、ヴァンナスのために剣を振るい続けるだけの存在。


 エクアはこの話を聞いて、小さく呟く。

「ひどい……」
「ひどいどころじゃない。血が濃ゆくなったせいで障害をもたらす遺伝子が顕在化しやすくなる。結果、生まれてくる子どもたちは何らかの障害を持ってしまう可能性が高まる。それでもヴァンナスは彼らに子どもを作ることを強要した……」

 そう言って、フィナは私をじろりと睨む。
 私は軽く頭を掻き、言い訳することなく彼女の今までの言葉を肯定した。


「その通りだ。ヴァンナスは地球人たちの犠牲によって成り立っている」
「最悪よね」
「ああ、最悪だ。私もこれを知った時は、反吐が出る思いだった」
「今は出ないの?」

「どうだろうな。少数を犠牲にして大多数の幸福を追求することが当たり前の世界に飛び込み、以前ほど嫌悪感を感じなくなったが……」
「毒されてるよ、それ」
「そうだな……改めて、今の話を聞くと、色々思うことはある」
「変える気は?」
「私にはそこまでの力も権限もない。そして、勇気もない。君だってそうではないか?」
「それは……」

 一度、組み立てた機構。
 それを打ち壊せば、どれだけの血が流れるか?
 ヴァンナスが間違っているのは確かだ。
 だが、正しさと引き換えに失うものは、数万、数十万、数百万の命。
 これは正しさだけを見て歩める道ではない。

 
 空気が冷気のように私たちを包む。
 エクアは薄氷はくひょうを踏むように、小さな声を上げる。
「あの……お二人がどんなにいろんなことを知っていても、できないこととできることがあると思います。あまり、自分たちを追い詰めないでくださいね」
「エクア……ふふ、ありがとう。救われた思いだ。だが、フィナに言っておくことがあるっ」
「何よ?」

「あまり、エクアに余計なことを言うな。必要以上に機密事項を話すべきではない。それにこれはまだ、錬金術士が理論派と実践派に分かれる前の話。君たちにも咎がある話だ。ヴァンナスだけを責めるのは卑怯だぞ」

「わかってる。でも、だからこそよ。だからこそ、何も知らない誰かに話したいって思いがあるんじゃない」
「後悔を誰かになすりつけるな」
「別にそんなつもりじゃ……いえ、そうね。ごめんなさい、エクア」
「そ、そんな謝罪なんて」

 
 エクアは困ったように両手をわたわたさせて、フィナに言葉を返す。
 だが、謝罪を口にすべきは私もだ。
 すぐにフィナの口を閉ざすことができたはずなのに、私は止めなかった。
 私もフィナ同様に、関係者ではない誰かに話を聞いてほしい思いがあったのかもしれない。
 いや、それ以上に、私はフィナがどこまで知っているのか、探りを入れていた……。
 そのことは忘れ、今はエクアに対する想いで心を埋める。


「はぁ、いい歳して、十二歳の少女に縋るとは情けない」
「なによっ、悪かったって言ってるでしょ!」
「君だけのことじゃない。私のことも含めてだ」
「あ……」
「もう、この話はやめにしよう。あまり、楽しい話ではないからな」

 と、私は話を終えようとした。
 だが、エクアが最後にぽつりと零した言葉。
 これに反応したフィナの態度を見て、私はある確信に至り、口元を薄っすら綻ばせた。


「今の勇者さんたちも、色々窮屈なんでしょうね」
「え? うん、そうだろうね。そうそう、今のヴァンナスのつるぎを担う勇者レイって、なぜかとんでもなく強いのよね」
「はぁ、勇者だから強くて当たり前じゃ?」

「そうじゃないのよ。初代勇者を遥かに上回る勇者なの。今まで子孫が初代勇者を越えたことはないから不思議なのよねぇ。ねぇ、ケント、何か知ってる?」
「知らない。というよりも、この話はやめにしようと言っただろ。ほら、二人とも一階に戻るぞ」

 
 私は言葉で二人をき立てて、地下室から追い出す。
 彼女たちの背中を見つめながら、私は心の底から安堵した。


(テイローの名を継ぐ、実践派のおさフィナ。彼女は知らないようだ。彼女が知らないということは、実践派は把握していないのだな……………………すでに地球人の血を引く勇者の末裔たちは絶滅しており、今いる勇者たちの正体が何者かであることを……)
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