銀眼の左遷王ケントの素人領地開拓&未踏遺跡攻略~だけど、領民はゼロで土地は死んでるし、遺跡は結界で入れない~

雪野湯

文字の大きさ
79 / 359
第七章 遺跡に繋がるもの

ギウと古代遺跡

しおりを挟む
――三日後

 
 フィナが古城トーワに訪れて三日が経った。
 彼女はゴリンたちをあごで使い、地下の天井に穴を開けさせ、換気口をつけている。
 自分の城に意図しない改良を加えられて私はなんとも形容しがたい感情に包まれるが、風呂へ水を送り出すポンプと風呂釜を修理してもらったので、これを相殺し、なんとか収めるとしよう。

 余談になるが、ポンプの設置してある井戸は城の外壁がいへきのすぐそばにあったらしい。しかし、私が訪れた時は、その周辺は深い草に覆われていたため気づかなかったようだ。

 そのポンプや風呂釜だが、錆びついて劣化している部分があるものの、それはゴリンが応急処置をとり、動かすための魔導機構や動力となる魔石はフィナが修理や代用品を駆使し直してくれた。
 これらを僅か数時間で終わらせたのは、正直驚きだった。


 おかげで大工たちに暖かな風呂が提供できるようになって良かった。
 その実力が認められたためか、表向き、一介の少女錬金術士であるフィナに対して大工たちは一目置いている。
 だからこそ、あの不遜で態度のでかい少女にあごで使われてもあまり不満のない様子。

 彼女の存在に功罪あるが、今のところ功が勝っているようだ。

 
 さて、話は変わるが、現在私は、ワントワーフに銃弾の製造を依頼するための準備を行っている最中だ。
 彼らの領地は半島と大陸を分断するファーレ山脈の袂――半島の最北東に位置するトロッカー鉱山。
 このトロッカー鉱山に向かうメンバーは、私・エクア・フィナだ。

 護衛の意味を込めてギウにも来てほしかったのだが、ワントワーフに会いに行く道中、古代人の遺跡に立ち寄ると伝えると、彼は奇妙な反応を見せて同行を嫌がった。


――前日・執務室


「そういうわけで、古代人の遺跡を覗いていこうと思う。ギウ、護衛を頼んだぞ」
「ギウ……」
「どうした、ギウ?」

 ギウは北の荒れ地の方角に顔を向けて、身体を震えさせる。
「ぎう~、ぎう」
「もしかして、遺跡に近づきたくないのか?」
「……ギウ」
「そうか、わかった。ならば、君は城に残り、ゴリンたちと共に城の修復に尽力してくれ」

 
 彼が遺跡に近づきたくない理由を知りたかった。
 だが、怯えるような姿を見せる彼にあまり深く問うのは酷かと思い、私は言葉を飲み込んだ。
 
 ギウはあの遺跡のことを詳しく知っているのだろうか?
 知って、恐怖するような場所なのだろうか?
 それとも、汚染のことは知っているだろうから、単純にそれに対して恐れを抱いているのか?
 もしくは、ギウという種族は遺跡を神聖視、あるいは悪しきものと見ているのか?

 いずれにせよ、私に危険が及ぶ可能性があるのならば彼は私を止めるはず。
 遺跡が実際にどのようなものかは自身の目で見て判断しようと思う。


 こういった事情で、ギウを抜いた三人で遺跡を経由し、ワントワーフに会いに行くことになった。
 フィナとエクアは各々旅支度をしている。

 私は旅支度を終えて、出発前にニワトリたちを小屋に戻そうと奮闘していた。
 小屋はゴリンたちが作ってくれたものだ。
 おかげでようやく、朝っぱらからニワトリの鳴き声が城内に響く環境からのがれることができた。
 だが、ニワトリたちは生意気にも城での生活が忘れられないようで、放牧した後に小屋へ戻ろうとしない。

 
 私は両手をバタバタさせながら大声を上げて彼らを追い立てる。
「こけ~、こここここ、こけ~こここ!」
 この姿をフィナに見られた。

「……あんた、なにやってんの?」
「見てわからないか? ニワトリたちを小屋に戻そうとしているのだ」
「のだ、って、大の男がコケコケ言って……」
「言いたくて言っているわけじゃないっ。こうやって脅さないとこいつらは言うことを聞かん。こけ~こここここ!」
「はぁ、一応領主でしょ。他の人に任せなさいよ……仕方ない、ちょっとどいて」


 フィナは華麗に舞う私の両手を降ろさせて、ニワトリの前に立つ。
 そして、造作もなく一羽の巨大ニワトリを抱え上げて、小屋に放り込んだ。
 さらにニワトリを捕まえ、放り込む。放り込む。放り込む。放り込む。


「はい、こんなもんね。追い立てるなんて面倒だから、捕まえた方が早いよ」
「よく、彼らを捕まえることができるな。つつかれるのが怖くないのか?」
「ニワトリ如きにつつかれることを怖がってるあんたにびっくりよ。そんなんで、古代遺跡の探索なんてできるの?」

「探索じゃない、覗くだけだ。結界もあるしな。君の方こそ、大丈夫なのか? 何か危険なことがあっても、悲しいが私の実力だとエクアを守るのが精一杯だ」
「大丈夫よ。こう見えても私、魔族を三匹同時に相手にしても勝てるくらいの実力があるから。自分の身もまともに守れなさそうな領主様くらいなら、ついでに守ってあげられるよ」
「うぐぅ……それは頼もしいなっ」


 フィナはチロルハットのつばを指先でピンと跳ねて微笑む。
 それに対して私は、ひくつく頬を見せて言葉を吐き飛ばすのがやっとだった。
 だがしかし、フィナの言うとおり、私の実力は不足している。
 それとは真逆に、彼女の実力はギウの認めるところ。
 
 ギウに同行を断られた際にフィナが護衛役として買って出たが、ギウはそれを認めた。
 執務室でのナイフの投げ合いで、二人は互いの実力を知ったようだ。
 彼女の口にする、『魔族を三匹同時に相手』の言葉も誇張ではないのだろう。
 となると、彼女の実力は一流の戦士を超えるレベルだということ。


 魔族相手に一対一で勝てるならば、一流の戦士。
 複数を相手に勝てるならば、それ以上の戦士。
 つまりは己のみだけではなく、誰かを守れる戦士。多くの人から賛美され、讃えられる存在。
 さらに村や町そのものを守れるならば、勇者と呼ばれる存在になるだろう。

 私は戦士とは程遠い、彼女の流れるような女性のラインを見つめ、言葉を落とす。
「見た目は少女だというのに、知識と実力を兼ね備えた錬金術師というわけか」
「そ。見た目は美少女だけど、超絶天才で超強い戦士ってわけ。世界一の錬金術師の名は伊達じゃないよ」

「ははは、この旅路で、その戦士の部分が発揮されないことを祈ろう」
「ええ~、何かあった方が面白くない?」
「ないっ。それよりも、準備ができたのだろう?」
「うん。エクアも準備を終えて、北側の防壁のそばで待ってるよ」
「そうか、ならば急いで向かおう」
しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

35年ローンと共に異世界転生! スキル『マイホーム』で快適5LDK引きこもり生活 ~数学教師、合気道と三節根で異世界を論破する~

月神世一
ファンタジー
紹介文 「結婚しよう。白い壁の素敵なお家が欲しいな♡」 そう言われて35年ローンで新築一戸建て(5LDK)を買った直後、俺、加藤真守(25歳)は婚約者に捨てられた。 失意の中、猫を助けてトラックに轢かれ、気づけばジャージ姿の女神ルチアナに異世界へと放り出されていた。 ​「あげるのは『言語理解』と『マイホーム』でーす」 ​手に入れたのは、ローン残高ごと召喚できる最強の現代住宅。 電気・ガス・水道完備。お風呂は全自動、リビングは床暖房。 さらには貯めたポイントで、地球の「赤マル」から「最新家電」までお取り寄せ!? ​森で拾った純情な狩人の美少女に胃袋を掴まれ、 罠にかかったポンコツ天使(自称聖騎士)が居候し、 競馬好きの魔族公爵がビールを飲みにやってくる。 ​これは、借金まみれの数学教師が、三節根と計算能力を武器に、快適なマイホームを守り抜く物語。 ……頼むから、家の壁で爪を研ぐのはやめてくれ!

過労死コンサル、貧乏貴族に転生す~現代農業知識と魔法で荒地を開拓していたら、いつの間にか世界を救う食糧大国になっていました~

黒崎隼人
ファンタジー
農業コンサルタントとして過労死した杉本健一は、異世界の貧乏貴族ローレンツ家の当主として目覚めた。 待っていたのは、荒れた土地、飢える領民、そして莫大な借金! チートスキルも戦闘能力もない彼に残された武器は、前世で培った「農業知識」だけだった。 「貴族が土を耕すだと?」と笑われても構わない! 輪作、堆肥、品種改良! 現代知識と異世界の魔法を組み合わせた独自農法で、俺は自らクワを握る「耕作貴族」となる! 元Sランク冒険者のクールなメイドや、義理堅い元騎士を仲間に迎え、荒れ果てた領地を最強の農業大国へと変えていく、異色の領地経営ファンタジー!

平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。 そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。 カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。 やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。 魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。 これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。 エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。 第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。 旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。 ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです

MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。 しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。 フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。 クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。 ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。 番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。 ご感想ありがとうございます!! 誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。 小説家になろう様に掲載済みです。

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

処理中です...