銀眼の左遷王ケントの素人領地開拓&未踏遺跡攻略~だけど、領民はゼロで土地は死んでるし、遺跡は結界で入れない~

雪野湯

文字の大きさ
199 / 359
第十八章 純然たる想いと勇気を秘める心

自由の代償

しおりを挟む
「それで親父、何故エクアを嵌めた?」
「……旦那に、カリスのことを考えて欲しかったからです」
「カリスの現状をどうにかしてほしいということだな。君とカリスの関係は?」

 この問いに、彼は自身の胸倉を強くつまみ、右胸を見せてきた。
 そこには歯車の形をしたかすれた焼き印がつけられてた。
 その焼き印を見て、エクアが涙の残る声を上げる。

「その焼き印……カリスの男の子にあったのと同じ」
「ああ、そうだ。この焼き印はカリスに生まれ落ちた者たち全てに、罪の烙印として付けられるもの」
「カリスの……それじゃあ、親父さんはっ?」
「ああ、俺はカリスだ……」

 
 まさかの事実に、皆は心の中だけでザワリと音を立てる。
 私は彼の右胸に押された歯車の烙印を見つめながら、過去を思い起こす。

「ムキの事件後、小柄な戦士と話した際に、アグリスのことを口にしたな。その時、君は右胸をさすっていた。アグリスに訪れたあとも、右胸に手を当てていた。君がカリスだったからか」
「はい……」
「カリスである君は、どうやって自由を得た?」
「それが全ての発端で、俺の罪なんです」
「話してみろ。ただし、時間がない。感情は入れるな、簡素に」
「わかりました」



――親父の過去

 俺はカリスでした。
 カリスは生まれながらに忌避される存在。
 子どもだろうが女だろうが関係ない。
 貴族はもちろん普通の市民や奴隷にさえも見下される存在。
 年老い、邪魔となれば殺されても何も言えない。
 当時の俺はそんな生活に嫌気がさしていた。
 このまま、カリスであり続けても、何もない……。
 家畜と同じように、屠殺される日を待ち続けるだけ。


「毎日毎日、暴力を振るわれることに怯え生きる。尊厳なんてものはなく、唾を吐きかけられ、罵倒される。それは幼子でもあってもそう。そんな日々に耐えられなかった。そんな人生を、運命を受け入れられなかった。だから俺はっ、カリスをやめた……」

――

 俺は十四の頃、隙を見て、アグリスから出ることができた。
 そうして、自由を得られた。
 俺は、自由を、自由を……自由をっ、手にしたんだ!!

――――

 感情を入れるなと、私は言った。
 だが、親父は耐えられずに、涙を流しながら自分の過去を語る。
 私は彼にその後を問う。

「自由になった君はどうしたんだ?」
「五年ほど、半島内を転々としました」
「で、戻ってきた?」

「はい……そこで、見たんですよ」
「見た? 何をだ?」
「アグリスの門の近くの防壁から突き出た棒。そこにぶら下がっていたロープを覚えてますか?」
「ああ、覚えている。二本の突き出た棒の片側の棒だけに、ロープがぶら下がっていた」

「あのロープは、二本の棒に一本ずつぶら下がってたんですよ。そして、そのロープには……俺の両親がぶら下がっていた」
「なっ!?」
「俺が見た時はもう五年経ってますから、もちろん死体なんてありゃしませんよ。俺も最初はあのロープの意味が何なのかわかりませんでした。ですので、そばを通りかかった旅人に聞いたんです……そうしたら」


『ああ、あれかい。五年位前だったかな? カリスの少年が逃げ出した見せしめに、その親が縛り首になったんだってよ。それで、その少年に見せつけるために、城門前にずっとぶら下げてたってわけさ』


「アグリスの連中は、親父とお袋をぶら下げて、死体が腐っても、鳥に食われても、ずっと放置していた。腐れた身体がロープから崩れ落ちても放置していた。俺が見た時にはロープの下に、獣に食われ虫に食われ、骨となり崩れ落ちた親父とお袋が居ました……」


 親父はそこで口を閉じた。
 皆はアグリスの壮絶な制裁に言葉が生まれない。
 だが、フィナは椅子から立ち上がり……。


「それってさ、親父は両親がそうなることを知ってたの?」
「…………無事では済まないとは思っていた」
「最低じゃん! そして、今度はエク――」

 フィナは親父を問い詰めようとする。
 それを止める。


「フィナ、話の腰を折るな」
「折るなってっ。今の許せる話? こいつ、エクアも同じように」
「許せないし、怒ってもいる。頼むから感情に飲まれないでくれ」
「むっ、もう!」

 
 フィナはお尻を叩きつけるように椅子に座った。
 私は続きを尋ねる前に、一つ間を置く質問を親父へぶつける。

「親父、続きを尋ねる前に一つ確認しておく。エクアが対処できたからいいものの、できなかった場合はどうするつもりだったんだ?」
「元々、対処できると思っていませんでした。ですので、途中で助けに入るつもりだったんですが……」
「エクアの才が君の予想を上回ったわけか……」


 エクアへちらりと視線を振る。
 彼女は涙を止めたが、ギウに抱きしめられ、いまだ肩を震わせている。
 小さな少女――だが、悪に立ち向かう勇気を持っている。
 そのような少女を利用した罪は重い。
 しかし、今は感情に飲み込まれることなく、極めて低い声で親父に続きを尋ねる。

「話を戻すが……両親を失い、君は後悔した。次に来る話は、後悔の懺悔というところか?」
「その通りです」
「アグリスの外にいる君は両親への罪滅ぼしのために、カリスを開放したいと考え始める」

「はい」
「しかし、その方法が見つからず、月日だけが流れた。そして、私と出会った」
「ええ、旦那と出会い、利用できると思いました」

「私は腐ってもアーガメイトに繋がりを持つ者。もし、私がただのお人よしの領主なら、うまくおだて、アーガメイトの名を通してヴァンナス本国にカリスの待遇改善を願う。悪党なら、利益を前に出し誘導し、アーガメイトの名を利用して、ま、同じようなパターンだな」

「ですが、旦那はどちらでもなかった。切れ者だが、慎重に慎重を重ねる御仁。そう簡単に無茶をするような方ではない」


「ふむ、ざっと言えば、君はカリスの運命を呪い、そこから逃げ出し、両親の死という代償を支払った。その死をきっかけに自身の行動を後悔し、カリス全体の運命を変えたいと願うが、方法が見つからない。そこで私と出会い、利用しようとしていた」

「その通りで……」


 私は腰を深く椅子に預け、天井を見上げる。
 頭の中で、さまざまの情報がパズルのように組みあがる。
 現在のトーワの立場。多くの種族との交流。二十二議会。そしてフィコン……。
しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

精霊に愛される(呪いにもにた愛)少女~全属性の加護を貰う~

如月花恋
ファンタジー
今この世界にはたくさんの精霊がいる その精霊達から生まれた瞬間に加護を貰う 稀に2つ以上の属性の2体の精霊から加護を貰うことがある まぁ大体は親の属性を受け継ぐのだが… だが…全属性の加護を貰うなど不可能とされてきた… そんな時に生まれたシャルロッテ 全属性の加護を持つ少女 いったいこれからどうなるのか…

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜

みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。 …しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた! 「元気に育ってねぇクロウ」 (…クロウ…ってまさか!?) そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム 「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが 「クロウ•チューリア」だ ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う 運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる "バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う 「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と! その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ 剣ぺろと言う「バグ技」は "剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ この物語は 剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語 (自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!) しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

えっ、能力なしでパーティ追放された俺が全属性魔法使い!? ~最強のオールラウンダー目指して謙虚に頑張ります~

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
コミカライズ10/19(水)開始! 2024/2/21小説本編完結! 旧題:えっ能力なしでパーティー追放された俺が全属性能力者!? 最強のオールラウンダーに成り上がりますが、本人は至って謙虚です ※ 書籍化に伴い、一部範囲のみの公開に切り替えられています。 ※ 書籍化に伴う変更点については、近況ボードを確認ください。 生まれつき、一人一人に魔法属性が付与され、一定の年齢になると使うことができるようになる世界。  伝説の冒険者の息子、タイラー・ソリス(17歳)は、なぜか無属性。 勤勉で真面目な彼はなぜか報われておらず、魔法を使用することができなかった。  代わりに、父親から教わった戦術や、体術を駆使して、パーティーの中でも重要な役割を担っていたが…………。 リーダーからは無能だと疎まれ、パーティーを追放されてしまう。  ダンジョンの中、モンスターを前にして見捨てられたタイラー。ピンチに陥る中で、その血に流れる伝説の冒険者の能力がついに覚醒する。  タイラーは、全属性の魔法をつかいこなせる最強のオールラウンダーだったのだ! その能力のあまりの高さから、あらわれるのが、人より少し遅いだけだった。  タイラーは、その圧倒的な力で、危機を回避。  そこから敵を次々になぎ倒し、最強の冒険者への道を、駆け足で登り出す。  なにせ、初の強モンスターを倒した時点では、まだレベル1だったのだ。 レベルが上がれば最強無双することは約束されていた。 いつか彼は血をも超えていくーー。  さらには、天下一の美女たちに、これでもかと愛されまくることになり、モフモフにゃんにゃんの桃色デイズ。  一方、タイラーを追放したパーティーメンバーはというと。 彼を失ったことにより、チームは瓦解。元々大した力もないのに、タイラーのおかげで過大評価されていたパーティーリーダーは、どんどんと落ちぶれていく。 コメントやお気に入りなど、大変励みになっています。お気軽にお寄せくださいませ! ・12/27〜29 HOTランキング 2位 記録、維持 ・12/28 ハイファンランキング 3位

処理中です...