銀眼の左遷王ケントの素人領地開拓&未踏遺跡攻略~だけど、領民はゼロで土地は死んでるし、遺跡は結界で入れない~

雪野湯

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第二十三章 ケント=ハドリー

歩みを止めず

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 私の告白にフィナは言葉を失い、マフィンは納得の声を上げる。

「どうりでベェックマッシュルームがケントに熱を上げるわけニャね。同じ人工生命体同士、惹かれ合っていたんだニャ」
「なるほど、それでか。ふふ、ベェックからは非常に熱い視線を送られたよ……と、フィナとマフィン、そしてカインは理解をできているようだが、他のみんなはよくわからないだろう。だから、少しばかりホムンクルスについて語ろう」


 ホムンクルス――生命を操ることのできる錬金術士の手によって作り出された、人造人間。


「私、ケント=ハドリーは君たちのような人ではない。勇者のように人を複製して創られた存在でもない。まったくの無から生まれた、人もどきだ」
「兄さん! いくら何でも自分を卑下に、」

「いいんだ、レイ。私が人間ではないことは確かだ。人のように感情はあっても、決して人間ではない。どんなに人に似せようと、人ではない人もどき……フフ、それでもあの方は私を孫と呼んで下さった」

「あの方?」
「いや、今のは忘れてくれ。さて、私の正体を告白した。皆はどうかな? 私という存在をなんと見る」


 私は顔に笑みを浮かべる。しかし、両手は執務机の下へと隠した。
 それは、怖かったからだ。
 私は恐れられるのではないか、拒絶されるのではないか。
 その思いが、執務机に隠れ重なり合う両手に拳を作らせ、震える……。


 だけど……仲間たちはその震えを優しく包んでくれた――


 ギウ――「ギウ、ギウウ」

 エクア――「何者であろうと、ケント様はケント様ですよ。私を何度も救ってくださった。私だけでは見ることのできない世界を見せてくれた素敵な人です」

 親父――「あはは、それじゃ旦那は創造主サノアに一発食らわせてやった存在ってやつじゃないですか。最高ですよっ」

 カイン――「生命の冒涜。だけど、あなたからは生命の輝きを強く感じます。誰よりも人間らしい人間ですよ! ケントさん!!」


 マスティフ――「生まれなど些細な問題。大事なのはその者が何を為し、何を掴もうとするのか。ケント殿が素晴らしき御仁であることに変わりないぞ」

 マフィン――「とんでもにぇ~話ニャ。にゃけど、商売相手が何者でにゃろうと客は客ニャ。ちっちぇい問題ニャ……まぁ、ケントの親父がキャビットの人工生命技術を超えたのは悔しいけどニャッ。ニャハハハ」

 ゴリン――「はぁ~、正直、よくわからん話の連続で頭ん中ぐるぐる出やすが、領主ケント様は頭も切れ、庶民の心を知ってくださるお優しい領主様でやすよ。あっしはケント様が何者であろうと尊敬してやすよ」


 グーフィス――「人工生命体……俺も母ちゃんの腹ん中で育った生命体ですし、あんま変わんないっしょ。俺も皆さんもケント様も一緒っすよ」

 キサ――「エクアお姉ちゃんの言うとおり、領主のお兄さんはお兄さんだよ~。むしろみんなはお兄さんを見習わないと。わる~い人はたくさんいるもん。人はたくさんいるのにみんなで喧嘩したりするのに、ケント様は一人でもしっかりしてるんだから~」


 仲間たちの暖かな声の響きに満たされ、私の両拳から臆病な私は消えた。
 レイは私へ向かい、優しく微笑んでいる。


 とても暖かく、穏やかな空気に満たされる心。
 真実を語ることを何よりも恐れていたことが、馬鹿馬鹿しくなってくる。
 真実を伝える・自分を伝える――とても簡単であり、とても難しい行為。
 
 言ってしまえばなんてことはないのに、どこまでも足踏みをしてしまう。
 多くは足踏みをやめられず、やがては疲れ、立ち止まってしまうのかもしれない。
 だけど、私には背中を押してくれた人たちがいる。
 父・アステ=ゼ=アーガメイト。大いなる存在。そして、二人のフィナ……。
 世界を、時間を、隔たりを越えて、私を仲間たちの元へと押し出してくれた。


(ありがとう、みんな。私はついに自分を伝えることができた…………)

 私は視線をフィナヘ向けた。
 彼女は一切何も語らず、口元をムニムニと動かしている。
 それは繰り言を行っているような……。


「フィナ? 君は何か私に伝えたいことでもあるのか? それともやはり、人ではない私を受け入れられないのか?」

 フィナは口元を止めて、紫の溶け込む蒼玉の瞳で私を射抜く。
 そして――


「なんでさっさと教えないのよ! もうっ!」
「へ?」

 彼女は足を踏み鳴らしながらこちらへ向かってきて、執務机の上に両手をバンッと叩き置く。


「素体となったのは、金やオリハルコンからバケツや食べ物まで精製できる万能素材。赤の奇跡である賢者の石?」
「ああ、そうらしい」
「賢者の石……私でさえちっちゃな欠片を作るだけでもめっちゃ面倒なのに、それを組成の複雑な人を産み出すほどの石を作るなんて! それで、媒体は?」
「媒体?」
「賢者の石に吸着させる人の素のことよ。細胞でも精子でも卵子でもっ。なんか使ったんでしょ?」

「精子って……うら若い女性が」
「そんなのどうでもいいからっ! で、媒体は?」
「さぁ、そのようなもの聞いたことがないな。体の基本構成が出来上がった後に、スカルペル人と地球人の特性を注入したと聞いたが」

「嘘よっ! 媒体もなしに基本構成なんて作れるはずないでしょ!! マフィンさん!」
「にゃ? ああ、ベェックのことニャね。あれはキノコを媒体にして賢者の石をにゃ、」

「キノコねっ。と、何かしらの媒体がないと命の設計図はできない! あんたにも媒体があるはずよ!?」
「そう言われてもな、父からはアミノ酸や核酸やたんぱく質などで作られた生命のソースを素に、それを賢者の石と融合させて私の体を産み出し、そこからスカルペル人と地球人の特性を追加したと」

「だからできないってっ」
「だから私も知らないっ。父は無から命を産み出すことに成功したんじゃないのか?」

「だとしたら、何なの、あんたの親父? 錬金術士は神の真似事はできても神じゃない。でも、アステ=ゼ=アーガメイトは神の奇跡を体現したってことよ! いやそれ以上かもっ。なにせ、人を産み出し、特性を付加するなんて滅茶苦茶なことをやっている! 何なの、あんたの親父!?」
「君なぁ、人の父親を何度も親父呼ばわりしないでくれるかっ」


 と、言葉をぶつけるがフィナの耳にはまったく届いていないようで、机から離れ地団駄を踏み始めた。

「かぁ~、うっそでしょっ。おばあちゃんでもそこまでのことは無理よっ。天才!? 認めない! 絶対に認めない! 私ができないことができるなんて。こうなったら私も創るしかっ! ケント!」
「な、なんだ?」

「今から一緒にお風呂に来て!」
「はっ?」
「あんたの体を隅々まで調べるから!」
「いやいやいや、おかしいぞ、フィナ。それは大変おかしいぞ、フィナ」
「うっさい! レイ!」

「は、はい、なにかな?」
「あんたも風呂に!」
「え、ええ!?」
「二人ともっ、体の隅々まで調べるから、よろしく!」


 フィナは執務室の扉を開き、私とレイにさっさと風呂に来いと忙しなく手を動かす。
 私とレイは……。


「いや、よろしくはないぞ!」
「いや、よろしくはないよ!」
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