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第二十五章 故郷無き災いたち
誰かからのメール
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――トーワ
バルドゥルとの戦い。フィナの挫折。彼女への叱咤。そして、フィナは再び自らの足で立ち上がった。
一度は執務室から出ていった彼女だが、しばらくの時を挟み戻ってきて、こう私に言葉で殴りかかった。
「このっ、クソ領主。私がいなきゃ何にもできないくせに生意気なのよ。遺跡の発掘をあんただけでやる? 絶対無理よ! この私! 世界最高の錬金術師・フィナ=ス=テイローがいないとね!」
「ああ、わかっている。だからこそ君の力を借りたい」
「わかってるなら、よし! いい、知を追うよ。深く深く、恐れを抱きながらも好奇心という勇気を持って慎重かつ大胆に」
「もちろんだ。とことん付き合おう!」
――遺跡
トーワの二階にある転送室から遺跡へとやってきた。
メンバーは私・エクア・親父・フィナ・カイン・マスティフ・マフィン……そして、ギウだ!
彼は私たちが遺跡へ向かおうとしたとき、『ギウ』と声を掛けてきた。
その声は、私たちと共に遺跡へ向かうという声。
この声にフィナたちはびっくりした様子を見せたが、私はそんなことよりも彼が少し奇妙な雰囲気を纏っていることが気になった。
真っ黒で真ん丸な瞳に光が差しているような……。
彼はあれほど遺跡に対して恐怖を抱いていたのに、転送装置を前にしても一切の震えを見せることなく堂々と黒の大理石のような円盤の上に立った。
それは恐怖を我慢しているわけでもなく克服した様子でもない。
初めから何とも思っていないかのような態度。
その態度が、私には別人のように思えた……。
こうして、ギウを伴い遺跡へ訪れた。
彼は父の書斎を模した遺跡の部屋に初めて訪れたはずなのに、物珍し気な瞳を向けることなく部屋の隅に立ち、腕を組んでいる。
それはこれから起きる出来事を観察するかのような態度。
皆は不思議に思うが、フィナはとりあえず遺跡のシステムにアクセスをすることにした。
そこで、意外な事実に直面する。
「あ、あれ?」
「どうした、フィナ?」
「遺跡の言語が……スカルペル語に変換されてる!」
「なんだと!?」
フィナは少しの間だけ思考を巡らし、その理由に至った。
「バルドゥルだ。帰るときは指輪で転送装置を起動しただけだったから気づかなかったけど……翻訳システムを見せた時に、あいつは歪だった八角の星形を直していた。それで、翻訳システムが本来の機能を取り戻したんだ!」
「では、この施設の全てを読み解くことができるようになったというわけか?」
「ええ、そう! あのクソッたれ。役に立ってるじゃない。そ、それじゃ、どうしようか?」
フィナは興奮気味にシステムと繋がる指輪をつけた指をパチリと跳ねて、複数のモニターを呼び出しそれに囲まれた。
「まずは、あいつがどうやってガラスの監視部屋から遺跡の装置にアクセスできたのか。えっと…………チッ、そういうことだったんだ」
「もうわかったのか?」
「うん、問いかけただけで遺跡が答えを出してくれた。アクセスできた原因はナノマシンよ」
「ナノマシンが?」
「あいつらのナノマシンは常時、別の空間で繋がってんの。だから、どんなに閉じ込めていてもアクセスが可能ってわけ」
「それではいつでも抜け出せた上に、こちらの状況まで把握していたんだな。あの三日間は念には念を入れて、慎重にこちらの様子を窺っていたわけか」
「そうね、ムカつく。次はどうしよう? えっと、あの時のバルドゥルの能力値はデータにあるかな……あった」
バルドゥル――910万
この数字を見て私はごくりと唾を飲み、更なる恐怖をマスティフが口に出す。
「レイどころか、ヴァンナスの召喚の象徴・炎燕の倍を超える実力だったのか……勝てたのは奇跡に近いな」
「しかもあやつは体の試運転と言っていた。おそらく、これ以上の数値を秘めた力を宿していたのだろうな」
この声にフィナが答え、私が問いかける
「それだけじゃない。私たちが目覚めさせたおかげで多少の弱体化を図れたみたい」
「ん、というと?」
「元々、自動で目覚めるように設定されたようね。予定通り目覚めていたら、私たちと相対したときに見せた以上の力を見せたのかも。ま、弱体化してようとしてなかろうと、私たちを消すには十分すぎたけど……」
彼女はバルドゥルの恐怖を思い出して肌を震えさせる。
しかし、立ち直ったフィナの言葉に恐怖の色はない。
「あの時感じた力でも、私は恐れた。だけど、施設に記録された最強クラスの三人の足元にも及ばないものだった。もし、まだ、そんなのがどっかにいたら……古代人ヤバいわ」
「そうだな……」
「でも、今は翻訳システムが直ったおかげで彼らのことを深く知れる。もう、二度と、過ちは犯さない!」
フィナは挫折から立ち上がり、再び知を追う覚悟を言葉に乗せた。
まだまだ心には迷いや怯えがあるだろう。
だが、彼女なら必ずや克服できる。
なぜならば、彼女はフィナ=ス=テイロー。
自信家で傲慢で勝気で……そして、私たちという仲間がいるからだ!
彼女は忙しなくてと瞳を動かして、いつもの様子で言葉を飛ばす。
「うわ、うわ、どうしようっ。ヤッバ、できることがいっぱいでどれから手につけたらいいのかっ?」
「その様子だとかなり時間が掛かりそうだな。だが、言葉がわかる今、私たちも多少なりとも役に立てる。ここは皆で手分けして色々調べてみようじゃないか」
皆は、こくんと頷いた。
そして、手分けして遺跡のことを調べようとしたとき、フィナが小さな声を立てた。
「え?」
「ん、どうした?」
「どっからか、手紙が届いてる」
「手紙?」
「うん。こっちのモニターにでかでかと便箋のマークが……」
フィナはモニターを見せてくる。
そのモニターにはハートのシールで封をされた白い便箋が映っていた。
「ハートのシール? 恋文、ではないよな?」
「さぁ、わかんない。だけど、この手紙、どこか別の場所から届いたわけじゃなくて、一定の条件下でシステムのどっかからか届くようになってたみたいね」
「条件下とは?」
「たぶん、翻訳システムが復活した場合? たぶん……」
「たぶんか……開いても大丈夫そうか?」
「今調べる。え~っと、セキュリティシステムはっと、これか。手紙のスキャン開始・完了っと。妙なモノじゃないみたい。それじゃ、開いてみるね」
バルドゥルとの戦い。フィナの挫折。彼女への叱咤。そして、フィナは再び自らの足で立ち上がった。
一度は執務室から出ていった彼女だが、しばらくの時を挟み戻ってきて、こう私に言葉で殴りかかった。
「このっ、クソ領主。私がいなきゃ何にもできないくせに生意気なのよ。遺跡の発掘をあんただけでやる? 絶対無理よ! この私! 世界最高の錬金術師・フィナ=ス=テイローがいないとね!」
「ああ、わかっている。だからこそ君の力を借りたい」
「わかってるなら、よし! いい、知を追うよ。深く深く、恐れを抱きながらも好奇心という勇気を持って慎重かつ大胆に」
「もちろんだ。とことん付き合おう!」
――遺跡
トーワの二階にある転送室から遺跡へとやってきた。
メンバーは私・エクア・親父・フィナ・カイン・マスティフ・マフィン……そして、ギウだ!
彼は私たちが遺跡へ向かおうとしたとき、『ギウ』と声を掛けてきた。
その声は、私たちと共に遺跡へ向かうという声。
この声にフィナたちはびっくりした様子を見せたが、私はそんなことよりも彼が少し奇妙な雰囲気を纏っていることが気になった。
真っ黒で真ん丸な瞳に光が差しているような……。
彼はあれほど遺跡に対して恐怖を抱いていたのに、転送装置を前にしても一切の震えを見せることなく堂々と黒の大理石のような円盤の上に立った。
それは恐怖を我慢しているわけでもなく克服した様子でもない。
初めから何とも思っていないかのような態度。
その態度が、私には別人のように思えた……。
こうして、ギウを伴い遺跡へ訪れた。
彼は父の書斎を模した遺跡の部屋に初めて訪れたはずなのに、物珍し気な瞳を向けることなく部屋の隅に立ち、腕を組んでいる。
それはこれから起きる出来事を観察するかのような態度。
皆は不思議に思うが、フィナはとりあえず遺跡のシステムにアクセスをすることにした。
そこで、意外な事実に直面する。
「あ、あれ?」
「どうした、フィナ?」
「遺跡の言語が……スカルペル語に変換されてる!」
「なんだと!?」
フィナは少しの間だけ思考を巡らし、その理由に至った。
「バルドゥルだ。帰るときは指輪で転送装置を起動しただけだったから気づかなかったけど……翻訳システムを見せた時に、あいつは歪だった八角の星形を直していた。それで、翻訳システムが本来の機能を取り戻したんだ!」
「では、この施設の全てを読み解くことができるようになったというわけか?」
「ええ、そう! あのクソッたれ。役に立ってるじゃない。そ、それじゃ、どうしようか?」
フィナは興奮気味にシステムと繋がる指輪をつけた指をパチリと跳ねて、複数のモニターを呼び出しそれに囲まれた。
「まずは、あいつがどうやってガラスの監視部屋から遺跡の装置にアクセスできたのか。えっと…………チッ、そういうことだったんだ」
「もうわかったのか?」
「うん、問いかけただけで遺跡が答えを出してくれた。アクセスできた原因はナノマシンよ」
「ナノマシンが?」
「あいつらのナノマシンは常時、別の空間で繋がってんの。だから、どんなに閉じ込めていてもアクセスが可能ってわけ」
「それではいつでも抜け出せた上に、こちらの状況まで把握していたんだな。あの三日間は念には念を入れて、慎重にこちらの様子を窺っていたわけか」
「そうね、ムカつく。次はどうしよう? えっと、あの時のバルドゥルの能力値はデータにあるかな……あった」
バルドゥル――910万
この数字を見て私はごくりと唾を飲み、更なる恐怖をマスティフが口に出す。
「レイどころか、ヴァンナスの召喚の象徴・炎燕の倍を超える実力だったのか……勝てたのは奇跡に近いな」
「しかもあやつは体の試運転と言っていた。おそらく、これ以上の数値を秘めた力を宿していたのだろうな」
この声にフィナが答え、私が問いかける
「それだけじゃない。私たちが目覚めさせたおかげで多少の弱体化を図れたみたい」
「ん、というと?」
「元々、自動で目覚めるように設定されたようね。予定通り目覚めていたら、私たちと相対したときに見せた以上の力を見せたのかも。ま、弱体化してようとしてなかろうと、私たちを消すには十分すぎたけど……」
彼女はバルドゥルの恐怖を思い出して肌を震えさせる。
しかし、立ち直ったフィナの言葉に恐怖の色はない。
「あの時感じた力でも、私は恐れた。だけど、施設に記録された最強クラスの三人の足元にも及ばないものだった。もし、まだ、そんなのがどっかにいたら……古代人ヤバいわ」
「そうだな……」
「でも、今は翻訳システムが直ったおかげで彼らのことを深く知れる。もう、二度と、過ちは犯さない!」
フィナは挫折から立ち上がり、再び知を追う覚悟を言葉に乗せた。
まだまだ心には迷いや怯えがあるだろう。
だが、彼女なら必ずや克服できる。
なぜならば、彼女はフィナ=ス=テイロー。
自信家で傲慢で勝気で……そして、私たちという仲間がいるからだ!
彼女は忙しなくてと瞳を動かして、いつもの様子で言葉を飛ばす。
「うわ、うわ、どうしようっ。ヤッバ、できることがいっぱいでどれから手につけたらいいのかっ?」
「その様子だとかなり時間が掛かりそうだな。だが、言葉がわかる今、私たちも多少なりとも役に立てる。ここは皆で手分けして色々調べてみようじゃないか」
皆は、こくんと頷いた。
そして、手分けして遺跡のことを調べようとしたとき、フィナが小さな声を立てた。
「え?」
「ん、どうした?」
「どっからか、手紙が届いてる」
「手紙?」
「うん。こっちのモニターにでかでかと便箋のマークが……」
フィナはモニターを見せてくる。
そのモニターにはハートのシールで封をされた白い便箋が映っていた。
「ハートのシール? 恋文、ではないよな?」
「さぁ、わかんない。だけど、この手紙、どこか別の場所から届いたわけじゃなくて、一定の条件下でシステムのどっかからか届くようになってたみたいね」
「条件下とは?」
「たぶん、翻訳システムが復活した場合? たぶん……」
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