転生少女と黒猫メイスのぶらり異世界旅

うみの渚

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第一章 

第9話 魔法の鍛錬

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 メイスの指導のもと、メキメキと魔法の練度は上り美味しい食事のおかげで体重と体力も着実に増えている。
 毎食の豪華な料理がどこから来ているのか知らないが、以前の質素な食事に戻るのが耐えられないと思った私は深く詮索しないでおいた。
 メイスもあの日以降、量を減らしてくれたので、食事を残さずに済むのはありがたかった。
 まともな食事にありつけたおかげで、以前より頭の回転が早くなったような気がする。
 魔法の鍛錬が始まる前に、お母様から十歳になるまで魔法を使ってはいけないと念を押されたことをメイスに伝えた。
 すると、琥珀色の瞳をニンマリと細めて事もなげに言い放った。

『この俺がついているのだ。そんな細かいことは気にするな。何かあったら俺が助けてやる』

 見た目は可愛い小さな黒猫なのに、メイスの言葉にはどこか説得力がある。
 そんなこんなでメイスとの共同生活は一ヶ月を迎えようとしていた。
 今朝も使用人が持って来た食事は、メイスがいつの間にか空にして器だけトレ―に戻してあった。

 ――人間というものは、つくづく欲が尽きないものなのだなと朝食を摂りながら苦笑を漏らした。

 硬いパンと冷めたス―プでも、食べられるだけマシだと思っていた時期があった。
 それなのに、今は温かい食事に柔らかいパンやス―プを口にして思うことといえば――。

 味に変化が少ないなぁ……だった。

 厚く切られた肉も野菜たっぷりのス―プも、素材を十分に活かした味付けだとは思うのだが、それでももの足りないと感じるようになっていた。
 この世界は調味料の種類や調理法が多くないのかもしれない。
 もし、ここから無事出ることが出来たなら、食の改善をしたいと目標の一つに掲げることにした。

 朝食を終えて、メイスが用意してくれた動きやすい服装に着替えて裏庭に向かう。
 ピッタリとあつらえたような服は、肌触りが良く想像以上に可動域が広い。
 どこから手に入れたのかは聞かない。
 以前、メイスに尋ねたのだが、はぐらかされたから。
 そうして裏庭の人目につかない場所に到着すると、いつものように鍛錬が始まった。







 一ヶ月も鍛錬したおかげで、初級魔法であれば難無く魔法を発動させるのがスムーズになった。

『人間にしては吞み込みが早いな。魔力量が多いのはもとより、元々素質が高いことも関係しているのだろう。上出来だ』

 的や空に向かって、無詠唱で魔法を放つ私を満足気に見上げるメイス。
 本当は魔法を放つには詠唱が必要なのだそう。
 でも、長たらしい厨二ちゅうにみたいな詠唱なんて、こっ恥ずかしくて口に出せる気がしない。
 だから、私は必死に努力を重ねた。
 実際、相手と対峙した時、長たらしい詠唱を唱える時間なんて無いだろうし、しっかりとイメ―ジが出来ていれば戦いに余裕が持てる。
 言い訳がましいが、効率を考えたら無詠唱の方が戦いに有利だと判断してのことだった。
 決して詠唱が厨二ちゅうにぽいから恥ずかしいという訳ではない!

「本当?嬉しい!頑張った甲斐があったわ!」

 満足気なメイスの褒め言葉に、拳を握りしめてガッツポーズする。

『一ヶ月で初級魔法を使いこなせるようになれば上出来だ。魔力量が多くても魔法が使えない人間も居る。その点でも短期間でここまで上達したお前は優秀な人間だ。もっと誇りを持て』

 普段は俺様なメイスなのに、こうしてちゃんと認めて褒めてくれる。
 それが嬉しくて胸が温かくなる。

「……うん。メイスがそう言ってくれるなら誇りを持つよ」

 改めて感謝の言葉をメイスに伝えるのは気恥ずかしかったが、普段の食事から服、魔法の指導に至るまで世話になりっぱなしだったので、きちんと口にして気持ちを伝えることにした。

「それと、いつも温かい食事と清潔にする魔法をかけてくれてありがとう。あと、服と魔法の指導も。……メイスに頼ってばかりでごめんなさい。心から感謝してる。本当にありがとう」

 急にしおらしく感謝の言葉を述べられたメイスは琥珀色の瞳を見開いた後、所在無さげに視線を彷徨わせて咳払いをした。

『ん、んんっ。……俺が好きでしていることだ。お前は気にしなくて良い。そろそろ魔力の循環も安定しただろう。亜空間収納魔法を教えるから、しっかりと覚えろ』

 ぶっきらぼうに言い放ったメイスは私に背中を向けると、亜空間収納魔法について説明をし始めた。
 その背中は、どこか照れているように見えたのは私の気のせいだろうか。
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