転生少女と黒猫メイスのぶらり異世界旅

うみの渚

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第一章 

第10話 理屈より感覚

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 亜空間収納魔法を使うには、前提として魔力量が多いことが重要である。
 それはなぜかと言うと、収納する容量と関係してくるからだ。
 ちなみに、私の魔力量は人間にしては多いらしく、全く問題ないとのことだった。
 私の肩からぴょんと飛び降りたメイスは『見ていろ』と言うと、空中に視線を移した。
 メイスの視線を追って見つめていたら、その場所にメイスと同じ魔力が空中に集まっていくのを感じた。

『ほら。甘い菓子だ。食え』

 空間から現れたのは、甘く香ばしい香りを放つクッキ―のような焼き菓子だった。
 空中に浮かんだままクッキ―を載せた皿が私の前に運ばれて、甘い香りに抗えずに手を伸ばした。

「っ!美味しい!」

 前世で食べていたクッキ―より甘さ控えめなところが気に入って、もう一枚とクッキ―に手を伸ばして止めた。
 亜空間収納魔法について学んでいるのに、クッキ―を食べている場合じゃない。
 口の中に残ったクッキ―を咀嚼そしゃくして飲み込むと、メイスに質問をするというよりも、理解するためにブツブツと呟いた。

「今のが亜空間収納魔法だよね?空中に魔力が集まるのを感じたわ。……亜空間収納ということは、こことは違う次元に保管するってことよね?」

 腕を組んで仕組みを理解しようと頭を悩ませていると、メイスの呆れた声が聞こえて顔を上げた。

『小難しく考えなくても良い。念じるだけで収納は出来る。お前は物事を難しく考えるきらいがあるが、そんなものだと理解しておけば良い。さあ、その皿を収納してみろ』

 いきなり収納しろと言われた私は、戸惑いながらも空中にふわふわと浮かぶ皿に視線を移した。
 メイスは、私なら亜空間収納魔法を使えると言ってくれたが、そんな大雑把な考え方で大丈夫なのだろうか?
 理屈より感覚で覚えろと言うのか?
 不安に思いながらも、メイスに言われる通りにやってみようと目を閉じた。

 イメ―ジは、大きなコンテナが幾つもある感じ。
 その中に小分けにしたボックスを置いていく。
 ボックスは管理しやすいように種類別に分けて保管するのが良いだろう。
 ボックスの一つに皿を仕舞しまうようにイメ―ジをすると、違和感無く皿を仕舞しまえた。
 そっと目を開けて確認をすると、空中に浮かんでいた皿が消えていた。

「……出来た。メイス!収納出来た!」

 嬉しさのあまり、満面の笑みを浮かべてメイスを見た。
 メイスは当然といった様子で、特に驚いた様子を見せることもなく淡々と応えた。

『当然だ。次は皿を取り出してみろ』

 想像していた反応とは違うことを残念に思ったが、メイスに言われた通りに皿を取り出すイメ―ジをした。
 瞬時に手のひらに皿が現れて目を見開いた。
 メイスはというと、驚いて目を見開く私を余所に、一人納得したかのように頷いていた。
 
『ふむ。やはりお前は凄いな。やれと言われてすぐに亜空間収納魔法を使えた人間は初めてだ。……ま、アイツの子孫なら出来て当然か……』

 亜空間収納魔法を使えたのが嬉しくて歓喜していた私は、メイスが呟いた後半の部分は聞き取れなかった。
 皿の出し入れをして自信をつけた私は、ふとある事を思いついてニヤリと笑みを浮かべた。

(いずれここを出て行くのなら、少しくらい慰謝料代わりに貰ってもいいよね)

 私が黒髪黒目のせいで、お母様と二人離れで暮らすことを余儀なくされた。
 記憶にある限りでは、時々様子見に訪れる男性にお金の代わりに宝石を渡しているのを見たことがあった。
 そして、男性はその数日後に木箱を抱えてお母様に渡していた。
 あの木箱の中身は食料じゃなかったかしら?
 宝石に見合った食材を貰えていたのかは分からないが。
 それでもお母様は、私のために大切にしていた宝石を手放してまで日々の糧に困らないようにしてくれた。
 亜空間収納魔法を習得した今なら、お母様が大切にしていた宝石やドレスだけでも回収しておけるのではないだろうか。

 この一ヶ月間で、初級魔法であれば問題なく扱えるようになった。
 体力もそれなりについたしスキルも全てを把握した訳ではないが、今の私に必要だとメイスに言われて必死に覚えた。
 非力な私にどうしても欠かせない身体強化のスキルは、スキルを解除した途端全身が筋肉痛で動けなくなったのは、今は遠い昔の出来事のよう。
 スキルで筋力を強化しても元々筋力がついていなかった私には、その反動はなかなかにキツかった。
 たった一ヶ月という期間の中、よくぞここまで頑張ったと自分を褒めたい。

 日々成長を実感しながら新たな目標を見つけた私は、晴れ渡った青空を見上げて小さく拳を握りしめた。
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