転生少女と黒猫メイスのぶらり異世界旅

うみの渚

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第一章 

第11話 鬼教官メイス

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 あれから更に、魔法とスキルの鍛錬に精を出していた。
 木の枝に優雅に体を預けて、黒くて艶のある尻尾を揺らすメイスから指導が入る。

『魔力を制御しろ。まだ無駄が多いぞ。いくら魔力量が多くてもそれではすぐに魔力が枯渇してしまう。もっと体から力を抜け』

 言うはやすし行うはがたし。
 両手を膝に置いて乱れた息を整えながら、恨みがましくメイスをジトッと見た。

「はぁっ、はぁっ……分かってるけど、調整が難しいの。複数の魔法を同時に展開なんて簡単には出来ないよ」

 初級魔法と亜空間収納魔法を習得してからというもの、メイスの指導にますます熱が入ってきたように思う。
 以前より体力も筋力もついたとは言え、ここまで本格的に魔法を使うのは初めてで、はっきり言ってキツい。
 たまらず文句が口をついて出ていた。

『大丈夫だ。お前なら出来る』

 私の文句に対して意に介した様子を見せずに、メイスは淡々と告げると話しを続けた。

『力を抜いて魔力を感じろ。無詠唱で魔法が使えるのだから、たった二つの魔法を展開させることくらい何でもないだろう。ほら、休憩はしまいだ』

 無詠唱を習得したのは、厨二ちゅうにみたいな長たらしい詠唱を口にするのが恥ずかしいから必死に覚えただけで、複数の魔法を展開させることとは関係がない。
 傍で努力していたのを見ていたはずなのに、メイスは意地悪だ。
 可愛い見た目なのにメイスは鬼だ!
 鬼教官だ!
 口には出さずにぶつぶつと文句を言いながら乱れた息を整える。
 
「……ふぅ」

 大きく息を吐き出して目を閉じた。
 右手に水魔法、左手に火魔法が発動するように強くイメ―ジをする。
 手のひらを上にして魔法を発動させた。
 両手のひらから魔力が放出しているのを感じて目を開けた。
 手のひらに収まるほどの大きさの水と火の塊が、ふよふよと浮かんでいる。
 自身の魔力から具現化したせいなのか、熱さを感じない。
 あれこれと思い悩んでいたのが噓のように、すんなりと二つの魔法を使えたことに目を丸くした。
 そんな私にドヤ顔をしたメイスが言った。

『だから言っただろう。お前なら出来ると。小難しく考えず受け入れろ。二つの属性魔法を扱える人間はそう多くない。短期間でここまで出来たお前は特別だ。よく頑張った』

 鬼教官の口から褒め言葉が出たのが信じられずに、思わず視線が釘付けになる。
 亜空間収納魔法を習得した時も出来て当たり前みたいな態度だったから、今回もそう言われてお終いだと思っていた。
 相変わらず当然といった様子だったけど、ここにきて初めて褒められて反応に困ってしまった。
 ――前世では一応社会人だったからコミュ障ではなかったはず。
 しかし、この世界で生まれてからというもの、お母様との暮らしが主で他人と関わることがなかった。
 きっと、適切な距離感が掴めなくなってしまったのだろう。
 いくら前世の記憶が蘇ったと言っても、こんな境遇では距離感のみならず常識が育つはずがない。
 でも、鬼教官メイスが褒めてくれたのなら素直にお礼を伝えておきたい。

「えっと……ありがとう?」

 ちゃんとお礼を伝えたかったのに、なぜか疑問形になってしまった。
 お礼を伝えられたメイスが一瞬沈黙した後、声をあげて笑い出した。

『ぶはっ!なぜ疑問形なのだ。おかしなヤツだ。はははっ!』

 何がメイスのツボにハマったのか知らないが、笑いが治まるまでしばらく鍛錬は中断されることとなった。

 その後、ようやく笑いが治まるとすぐに鍛錬を再開した。
 鍛錬を再開したメイスは、ますます鍛錬の難易度を上げていった。
 やっぱり鬼教官だ!
 内心悪態を吐きながら、涙目で科せられた課題をこなしていく。
 その様子を満足そうに琥珀色の瞳を細めて見ているメイス。

 そうしてハ―ドな日々が過ぎていった。
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