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第一章
第8話 亜空間収納魔法
しおりを挟む久しぶりの柔らかくて温かい食事は、お腹だけでなく心まで満たしてくれた。
椅子に体を預けて膨らんだお腹を擦った。
「ふぅ……。お腹いっぱい。ごちそうさま。久しぶりに温かい食事が摂れて大満足だよ。メイス、ありがとう」
ベッドで寝転んでいたメイスが顔を上げて、テ―ブルいっぱいに並べられた豪華な料理を眺めて問いかけてきた。
『もういいのか?まだ沢山残っているぞ』
私自身、見ただけで食べきれないと判断して食べる分だけ取り皿に取り分けておいたのだが、内心申し訳ない気持ちでいた。
「うん、もうお腹いっぱい。勿体ないけど、これ以上は無理。でも、すっごく美味しかった。ありがとう」
お母様が亡くなってからというもの、質素な食事、メイス曰く家畜の餌を食べていたせいか、想像していたより胃が小さくなっていたようだ。
せっかく温かい食事を口に出来たのに、三分の一も食べられずに残してしまって肩を落とす。
未練がましく料理を眺めていたら、メイスがふっと笑った後、優しい口調で語った。
『そんな目をしなくても良い。どうせ食せないのは分かっていた。誰も咎めないから安心しろ。腹が満たされたのならそれで良い』
メイスがそう言うと、テ―ブルいっぱいに並んでいた料理が一瞬にして消えた。
「え!?」
一瞬の出来事にパチパチと目を瞬かせてテ―ブルを見つめる。
そんな私の様子を見て、メイスが笑い声をあげた。
『あははははっ!お前は一々大袈裟に驚くのだな。魔法を見たことがないのか?』
メイスに問いかけられて思い出す。
お母様から魔法について教わっていた。
だけど基本的なものばかりで、料理を出したり消したりといった魔法は見たことがなかった。
それに、お母様から十歳の洗礼式を受けるまで魔法を使うなと釘を刺されていた。
「……見たことはあるけど、物を出したり消したりする魔法は初めて見た。その魔法は何?」
その言葉に起き上がったメイスがテーブルに飛び乗ると、踏ん反り返って言い放った。
『亜空間収納魔法だ。便利だぞ』
重低音の声は若干弾んでいるように聞こえた。
弾んだ声に気がつかなかった私は、メイスが言った「亜空間収納魔法」に興味を持った。
亜空間収納魔法といえば、ラノベでは定番の人気の魔法の一つだ。
異世界転生・転移もので必ずと言っていいほど授かる魔法で、作家によって呼び方は異なるが、別次元の空間に生き物以外であれば状態を維持したまま保管出来る優れた収納魔法である。
もし、転生特典があるのなら、私も亜空間収納魔法が使えるかもしれない。
期待を胸に、瞳を輝かせてメイスを見つめた。
視線を受けたメイスが新しい玩具を見つけたような眼差しを向けて答えた。
『人間の魔力量では上手く使いこなせるか分からんが……。ま、お前なら問題ないだろう。やってみるか?』
亜空間収納魔法を難無く使いこなしたメイスからお墨付きをもらった私は、あまりの嬉しさに顔を綻ばせた。
「うん!やってみたい!」
メイスのありがたい申し出に、私はすぐさま飛びついた。
だって、教えてくれるって言うのだから、受けない手はない。
それに、私の直感が囁いているの。
メイスは魔法に造詣が深いのではないかと。
これからメイスのことを師匠か先生と呼ぼうかしら。
魔法が学べることに気を良くした私は、緩んだ顔を隠しもせずにニヤけていた。
『……お前、随分と緩んだ顔をしているぞ』
メイスに指摘されて緩んだ顔を引きしめる。
メイスには若干というかかなり引かれたけど、これくらいは勘弁してほしい。
顔を引きしめ直して視線を合わせると、呆れたようにため息を吐かれてしまった。
内心ムッとしながらも、居住まいを正して次の言葉を待った。
『それでは亜空間収納魔法について簡単に説明をしよう』
メイス師匠による解説は、シンプルで且つ分かりやすかった。
要約すると、魔法は魔力の具現化ということだった。
もっとぶっちゃけて言うなら、魔法はイメ―ジってこと。
ただ、イメ―ジが出来たとしても、それに伴う魔力量がなければ魔法を発動させるのは難しいらしい。
だけど、メイス師匠が言うには、私の魔力量は人間にしてはかなり多いんだって。
良かった。
努力すれば亜空間収納魔法を習得出来そうだ。
その日から、メイス師匠と魔法の鍛錬に精を出した。
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