転生少女と黒猫メイスのぶらり異世界旅

うみの渚

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第一章 

第7話 家畜の餌と豪華な料理

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 決意した私に満足そうに頷いたメイスは、金色の耳飾りを揺らして耳を扉の方に向けて言った。

『誰か来るぞ。もしかして、お前が言っていた使用人か?』

 メイスに言われて耳を済ますと、しばらくして廊下を歩く足音が聞こえた。
 聞き慣れた足音に、メイスに視線を合わせて頷いた。
 人間の耳より優れているメイスを羨ましく思いながら、私はメイスに隠れるように促した。

「あの歩き方はいつもの使用人だと思う。メイス、悪いんだけど、どこかに隠れてて」

 すると、メイスは薄い煎餅布団のようなシ―ツの上でゴロリと横になると、優雅に艶のある黒い尻尾を揺らして答えた。

『問題ない。隠れる必要はない』

 余裕のある声音に本当に大丈夫なのだろうかと心配したが、足音はすぐそこまで近づいていたため、メイスを隠すようにベッドに腰かけた。
 部屋の前で足音が止まると、ノックもなく扉が開かれてトレ―を持った使用人が入って来た。
 私と視線を合わせることもなくテ―ブルにトレ―を置くと、すぐにきびすを返して部屋から出て行った。
 昼食を運んで来た時と変わらない態度に、今はなぜか安堵して小さく息を吐き出した。
 背後からメイスの不機嫌な声が聞こえた。

『なんだ、あの使用人の態度は。……お前、貴族なのだろう?気にならないのか?』

 メイスにそう問いかけられて振り返る。
 ふと、パタンパタンと不機嫌そうに揺らす尻尾に視線を移した。
 私のために憤ってくれているのが嬉しくて笑みが零れた。

「ふふ。生まれた時からここで暮らしていたから貴族だなんて認識は無いし、平民になるんだもん、どうでもいいわ」

 そう言い切った私にメイスは口をポカンと開けた後、声をあげて笑った。

『あっははははっ!どうでもいいって、これはまた豪気だな!……そうか、平民になるのか。だったら尚の事、この俺が傍で見守る必要があるな』

 相変わらずの俺様っぷりを発揮しているが、傍で見守ってくれるらしい。
 機嫌が直ったメイスは、琥珀色の瞳を柔らかく細めて私を見上げた。
 その言葉が嬉しくて、私もつられて笑顔になる。

「へへ。メイスが一緒に居てくれるなら何でも頑張れそうな気がする。ここを出るまでに身を守る術くらいは身につけておきたいから応援よろしく」

 裏庭で偶然出会ってからまだ数時間しか経っていないというのに、なぜかメイスは私を裏切ることはないと確信した。
 根拠はない。
 だけど、直感なのかは分からないが、そう思わせる何かを感じたのは確かだ。

「さて、夕食にしようか。硬いパンと冷めたス―プで申し訳ないんだけど、一緒に食べよう」

 そう言ってテ―ブルに移動すると椅子に腰を下ろした。
 メイスは体を起こしてベッドからテ―ブルへ飛び移ると、出された食事を見て眉間に皺を寄せて呟いた。

『……こんな家畜の餌、しょくしたいとは思わん』

 プイッとそっぽを向かれてしまった。
 ……そう言われても、この家にはまともな食材が無いのだから、我慢して食べてもらうしかない。
 家畜の餌と言われたのがショックだったが、何とか気を取り直して声をかけた。

「そうは言うけど、うちには他に食べられそうな食材は無いよ。少しでも食べておかないとしんどくなるよ」

『いらん物はいらん。俺は別にしょくさなくても問題ない。お前もその家畜の餌をしょくすな。この俺がもっと美味い物を用意してやる』

 バッサリと切り捨てられて困惑した私を余所に、メイスは構うことなくテ―ブルに豪華な料理を出した。
 突然の出来事に言葉を失い目を白黒させていると、明らかにドヤ顔しているだろうと思われる口調でメイスが語り始めた。

『ほら、こっちの方が断然美味い。そんな不味い物をしょくすならこっちにしろ』

 テ―ブルの上には前世でも見たことがない豪華な料理が並んでいる。
 理解が追いつかないまま料理を眺めていると、美味しい匂いに刺激されてお腹が盛大な音を立てて室内に響き渡った。
 恥ずかしくて咄嗟にお腹を押さえたが、メイスの耳にはしっかりと届いていたようだ。

『ははっ!遠慮はいらん。しっかりとしょくせ』

 聞きたいことが沢山あるが、豪華な料理を目の前にしたらそんなことはどうでも良くなっていた。
 疑問は一旦頭の隅に追いやって、久しぶりのまともな食事に我を忘れて舌鼓を打った。
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