転生少女と黒猫メイスのぶらり異世界旅

うみの渚

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第一章 

第38話 私、女の子だもん

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 美味しい料理を心行くまで堪能した後、また入り組んだ迷路のような路地を戻り冒険者ギルドに帰ってきた。
 もし、次一人であの店に行けと言われたら確実に迷子になる自信がある。
 それにしても、安くて美味しいなんて地元民が羨まし過ぎる。

 そろそろ魔物の解体は終了している頃だろうか。
 慌ただしくロージスの街を発ったから、短い時間とは言え街を散策出来たのは嬉しい。
 バートンさんの後に続き裏の解体場へ向かう。
 私達が解体場に姿を見せると、待ちかねたようにデリックさんが話しかけてきた。

「おー、バートン。解体は全て終わったぞ。状態が良いから素材に肉、魔石に至るまで高額だ。で、全てこっちで買い取りしたら良いのか?それとも幾つか手元に残しておくか?」

 デリックさんの話しを受けて、バートンさんが私に向かって尋ねてきた。

「だってよ。ユーリ、お前はどうしたい?あれだけ大きなブラッディホーンボアの魔石なら相当な高値になるだろうな。あの状態なら肉だって悪かぁないはずだ。どうするかはお前の判断に任せる」

 素材に肉に魔石……。
 全てラノベで何度も読んだことのある展開に、無意識のうちに喉をごくりと鳴らしていた。
 物語では、異世界転生を果たした少年が、本人の意思とは関係なくチート無双していくのだが、冒険者ギルドで討伐した魔物を考え無しに出した結果、周囲を驚かせてしまうという話しだった。
 ……もしかして、私も何かやらかしてしまったのだろうか。
 すでに、冒険者登録をして三日目で銅級に昇級している時点で十分おかしいのだが、私はそのことに全く気づかずに無駄に悩んでいた。
 すると、肩に乗っていたメイスが脳内に話しかけてきた。

『まだまだ旅は長い。全て買い取ってもらえ。食糧のことならこの俺が居るから何も問題はない』

 当初の目的である家を出たのは良いが、私にはこれといった目的は無い。
 メイスの言うように、旅を続けるのならお金は出来るだけ沢山あった方が良いだろう。

「あの、それでは全て買い取りでお願いします」

 返事を待っているデリックさんに声をかけると、満面の笑みでデリックさんが応えた。

「おっ、そうか。それは助かる。久しぶりの大物だからな。きっと、飛ぶように売れるぞ」

 心なしか、デリックさんの目にドルマークが浮かんで見えた。
 その後、解体費用を差し引いた報酬を受け取ったのだが、その破格な金額に驚愕したのは言うまでもない。
 受付の女性から預かっていた冒険者カードを手にしたデリックさんが、素早く手続きを済ませてカードを返してくれた。
 その時、ニヤリと口の端を上げて、したり顔でボソッと呟いた。

「坊主、一気に金持ちになったな。いいか、坊主は世間の常識ってぇのを知らねぇ。くれぐれも美人には気をつけろよ。綺麗な女には棘があるって言うしな」

 何となくだが、デリックさんの言いたいことは理解した。
 お金に群がるのは何も美人に限ったことではないのだが、この世界でもその認識にあまり大差ないようだ。
 用心に越したことはないが、今世あまりにも優しさに飢えていた私の耳には痛い言葉である。
 でも、私が美人な女性に騙されることは無いと思う。
 だって、私、女の子だもん。
 したり顔のデリックさんに向かって笑顔で返事をした。

「はい、美味い話にも見た目が良い人にも十分気をつけます。ですからデリックさんも、この事を口外しないでくださいね。一応、個人情報になりますので」

 この世界にも守秘義務というものがあるのかは知らない。
 それでも、念のため情報を漏らさないように笑顔でお願いした。
 デリックさんの隣で私達のやり取りを聞いていたバートンさんが、いきなり腹を抱えて笑い始めた。

「ぶっ!あっはははは!ユーリに一本取られたなデリック。それにしても、ユーリはちっこいのに難しい言葉を知っているんだな。そうだぞ、個人に関する情報はたとえ身内であっても、本人の了承が無い限り教えてはならねぇ。ちゃんと規則で決められている。お前は本当に賢いな」

 バートンさんが豪快に笑う隣で、デリックさんは寂しくなった頭をガシガシと搔いて苦笑いを浮かべた。
 そんなデリックさんに視線を向けた後、バートンさんのごつごつとした手が私の頭をくしゃくしゃと撫でる。
 乱暴ではあったが、力を加減してくれたのか首がぐらつくことはなかった。
 ただし、きちんと整えられた髪は乱れてしまったが。

 そんなこんなで会話を終え解体場を後にした私達は、次の街を目指して足早にカントーリの街を発った。
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