転生少女と黒猫メイスのぶらり異世界旅

うみの渚

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第一章 

第45話 醬油を買うなら『グローブフォレスト商会』

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 ご機嫌なメイスを肩に乗せて店主の下へと急ぐ。
 すぐに私に気がついた店主が笑顔で迎えてくれた。

「いらっしゃい。串焼き肉は美味かっただろ?」

 ドヤ顔の店主に私も笑顔で答えた。

「はい。あのタレが美味しくてあっという間に平らげてしまいました」

「はははっ!そうだろう。タレが肉に絡んで美味いんだよなぁ。あの味を覚えたら普通の串焼きは食えないよな」

 店主の話しぶりから、リピーターが多いだろうことは予想がついた。
 私は、意を決して店主に質問を投げかけた。

「ところで、タレに使用しているのは砂糖と醬油ですよね?あの、醬油はどこで手に入れたんですか?」

 質問を投げかけられた店主の眉がピクッと上がる。

「……坊主は舌が肥えているみたいだな。ほぼ正解だがな、作り方は秘密だ。ショーユは王都で手に入れた。この国では王都でしか買えないはずだ。言っちゃあ何だが、安くはねぇぞ?」

 王都でしか買えないと聞いたメイスが、明らかにがっくりと項垂れたのが横目に見えた。
 せっかく機嫌が良くなっていたのに、またご機嫌取りをしなければいけないと思うとため息が零れた。

「そうですか……。王都に行かないと買えないのですね。教えていただきありがとうございました」

 白い大型の魔物についてメイスから情報を引き出したかったのだが、タイミングを失ってしまったことで私自身も気落ちしてしまった。
 肩を落として踵を返そうとした時、店主が慌てて声をかけてきた。

「おい、坊主!ショーユを買うなら『グローブフォレスト商会』へ行け!いいか、『グローブフォレスト商会』だぞ!」

 ああ、そうだった。
 王都へ行っても店の名前や場所を知らなければ、徒労に終わってしまうところだった。
 私は店主に振り返り、お礼の言葉を口にすると深々と頭を下げた。

「貴重な情報を教えて下さり、ありがとうございます。王都に行った際にはぜひ寄らせていただきます。ありがとうございました」

「お、おぅ。ここから王都までは乗り合い馬車だと三日で着く。そう落ち込むな。気をつけて行けよ!」

 なぜか店主に励まされて、私とメイスは広場を後にした。








 夕方まではまだ時間がある。
 今晩はこの街で宿を確保しておいた方が良さそうだ。
 そう考えた私は、未だ肩で気落ちしているメイスに語りかけた。

「ねぇ、メイス。今晩はこの街に泊まろうと思うの。夕方までは時間があるし、先に宿を確保しておきたいのだけど良いかな?」

『……好きにしろ』

 う~ん……。
 メイスの声色から不機嫌といった感じは受けないが、すぐに醬油が手に入らないことが余程ショックだったらしい。
 店主さん曰く、王都まで乗り合い馬車で三日だと教えてもらったけれど、私としてはのんびりと徒歩での旅を続けたいと考えている。
 ここはメイスのために、一刻も早く王都を目指した方が良いのだろうか?
 白い大型の魔物も気になるが、話しを切り出すタイミングを完全に見失ってしまった。

「はぁ……」

 小さくため息を吐いて顔を上げると、今晩の宿を確保するために歩き出した。
 冒険者ギルドからそう離れていない場所に宿を見つけると、すぐに宿泊手続きを済ませて夕方までぼんやりと時間を潰した。
 時間になり、解体場へ向かう頃にはメイスは立ち直っているように見えた。

 解体場の扉を開けるなり、数時間前に聞いた声が耳に届く。

「おぅ、坊主!解体は全部終わったぞ!」

 声がした方に視線を向けると、応対してくれた男性が手を振っていた。
 私は急いで男性に駆け寄るとお礼を述べた。

「何だか急がせてしまったようですみません。ありがとうございました」

「別に畏まるこたぁねぇ。それが俺達の仕事だからな。全部買い取りで良かったんだよな?」

 男性は照れくさそうに頭をガシガシと掻いた後、綺麗に解体された魔物の残骸を指差して尋ねた。
 テーブルには、それぞれ部位や素材が一目で見分けがつくように並べられており、どれも丁寧に処理
がされてあった。
 その手前には、報酬が載せられたトレーが置かれている。

「はい」

 返答を聞いた男性は、トレーを手に取ると問いかけてきた。

「じゃあ、これが解体費用を引いた報酬だ。結構な量だったから報酬も多いが、カードに預けるか?」

 トレーに積まれた報酬は、なかなかの金額になっていた。
 私は即答でカードに預けてもらうことにした。
 ランクが一つ上がっただけで、報酬額にこんなに差が出るとは思ってもみなかった。
 男性の方も、平民向けの魔物の肉が手に入って嬉しそうだった。
 再び手短にお礼を伝えて、私達は解体場を後にした。
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