転生少女と黒猫メイスのぶらり異世界旅

うみの渚

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第一章 

第46話 白い魔物の正体

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 解体場を後にして宿に戻って来た私達は、夕食を済ませて部屋で寛いでいた。
 醬油に関する情報を聞いたし、魔物の買い取りも全て終えた。
 だけど、どうしても一つ気がかりな事があった。
 例の、狼のような白い大型の魔物についてだ。
 メイスなら何か知っていると思うのだが、聞くに聞けないでいる。
 そんな事を悶々と考えていたら、メイスが口を開いた。

『ユーリ、ここでの用事はもう済んだのだろう?明日この街を発つぞ』

 メイスの突然の発言に、私は返答に困ってしまった。
 白い大型の魔物が出現したことで街の人やあの少年達が困っていたのに、このまま街を発って良いのだろうか。
 冒険者になりたての私が口を挟むのはおかしいと思うが、それでも銅級に昇級したのだから何か役に立てるかもしれないと考えていた。
 そんな私の考えを見透かしたのか、無言のままの私に話し始めた。

『あの白い魔物なら人間に害を成すことはない。放っておけば、いずれ何処かへと去って行くだろう。だから、気に病むことはない』

 やっぱり、メイスは例の白い大型の魔物を知っていそうだ。
 だからと言って、そんな説明だけで頷けるはずがない。
 もうこれ以上、メイスの顔色をうかがうのはやめよう。
 そう決意した私は、正直に疑問をぶつけた。

「……ずっと気になっていたんだけど、白い魔物の話しが上がった時、舌打ちしたよね。機嫌が悪くなったから聞かなかったけど、もしかして白い魔物の事、知ってるの?」

 ド直球な質問を投げかけられたメイスは琥珀色の瞳を大きく見開いた後、鬱陶うっとうしそうにため息を吐いた。

『はぁ……。この話しはしたくなかったのだが仕方あるまい。アレはフェンリルといって、昔から何かと俺に付きまとって鬱陶うっとうしいんだ。アイツはじゃれているつもりのようだが、加減を知らないのかアイツがじゃれる度にそこら一帯が破壊されて大変なんだ。その度に俺が尻拭いをせねばならなくてな。……はっきり言って迷惑だ。二度と関わりたくない』

 表情は読めないが、その声色から心底関わりたくないという気持ちが伝わってきた。
 話しの内容を聞いた限りでは、フェンリルというよりも無邪気な大型犬のように思える。
 じゃれただけでそこら一帯が破壊とか怖すぎる。
 無邪気なだけに余計たちが悪いと言えよう。
 いずれにせよ、白い魔物の正体が判明して良かった。
 意外だったけど、メイスにも苦手な存在があったのかと今更ながら思った。
 
「……そっか。メイスも大変だね。でも、人間に害がないのなら安心かな。じゃあ、明日発とう」

『……人間に害が無いと知った途端に軽いな。付きまとわれる俺の身にもなってくれ……』

 私の軽い口調に傷ついたのか、うんざりとした声色のメイスの背中を労うように優しく撫でた。
 メイスは可愛い黒猫だけど、私より魔法の扱いに長けているし、私よりこの世界に詳しい。
 それに、これは私の勘だけど、メイスはもの凄く強い気がする。
 だから、あまり心配はしていない。
 まあ、そんなことを言ったら機嫌を損ねてしまうだろうから口に出さないが、私はメイスを頼もしいと思っているのは事実だ。

「ふふ。フェンリルを鬱陶うっとうしいと思っていても、じゃれているだけだと言えるなんて、やっぱりメイスは強いのね。本当に嫌だったらメイスなら魔法でちゃちゃっと倒せば済む話しじゃない?それをしないのは、そこまでフェンリルを嫌っていないってことよね?」

 普通、そこら一帯を破壊するようなフェンリルが現れたら恐怖しかない。
 人間に害が及ばないように対策をするか、凄腕の冒険者や騎士に討伐を依頼するのが一般的だろう。
 だが、メイスであれば、追い払うことも倒すことも可能に思えた。
 すると、メイスは意外なことを口にした。

『……嫌うも何も。アイツもこの世界には必要だからな。倒す訳にはいかないというだけだ。……しかし、どうしてアイツがこの街に現れたのか……』

 メイスの口ぶりから、フェンリルを嫌っている訳ではなかったことを知りホッと安堵する。
 しかし、その後に続いた話しを聞いて、新たな疑問が増えてしまった。
 それと同時に、メイスがただの黒猫ではないと確信した瞬間だった。




 結局、フェンリルが人間を襲うことはないと知っただけで、それ以上は分からずじまいのまま無理矢理床に就くこととなった。
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