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第一章
第52話 ヤマモト ヒロシさん
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大量に購入した私に向けて、ニコニコと笑みを浮かべて対応してくれた男性が口を開く。
「お買い上げありがとうございます。もし、またご購入の際は勉強させていただきます。申し遅れました。私はこの商会を任されておりますヤマモト ヒロシと申します。今後ともよろしくお願いいたします」
……え?
ヤマモト ヒロシさん?
アジア系かなとは思ったけど、まんま日本名じゃん。
懐かしい響きを耳にして、勝手に親近感を抱いて笑顔になる。
色々と聞きたいことはあるが、好奇心に蓋をして自己紹介した。
「僕はユーリ、冒険者です。あちこち旅をする予定なのですが、この店の支店は他の国にもありますか?」
これは私にとって大事なことなので、忘れないうちに尋ねておいた。
ヤマモトさんは私の服装からある程度見当をつけていたのか、笑みを浮かべたまま頷くと答えた。
「はい。各国の首都に店舗がございます。もし、そちらでお買い求めになられるのであれば、こちらをお見せください」
そう言ってヤマモトさんが封筒を手渡してきた。
各国の首都に行けば、またお味噌や醬油が買えるのか。
それは大変ありがたい。
しかし、封蠟が押されたこの封筒は一体何だろう?
私は封筒を手に首を傾げながら尋ねた。
「あの、この封筒は?」
ヤマモトさんは私の投げかけた質問に笑顔で答えた。
「その封筒は私の署名入りの手紙です。万が一お客様に失礼があった場合、そちらの封筒をお渡しください。後で私の方からも通達しておきますが、行き違いがあってはお困りになるでしょうから、その封筒は念のためお持ちになっておいてください」
物腰柔らかな口調はそのままだけど、何か含みを持たせた言い回しが気になった。
偶然、ヤマモトさんの目に留まり店に入れてくれたけど、本来なら子供の私が入店拒否されてもおかしくはなかった。
だって、明らかに高級そうな店に私のような子供が親や保護者の同伴もなく、一人で入店させてもらえるとは思えない。
だから、他の店で入店を断られないように封筒を持たせてくれたのだろう。
たぶんだけど、ヤマモトさんはそう伝えたかったのだと思う。
遠回しな伝え方だけど、ヤマモトさんの優しい心配りに胸が温かくなる。
私は封筒を胸に抱きしめて感謝の気持ちを口にした。
「お心遣いありがとうございます。他の国に行っても味噌や醬油が買えるのは助かります。ぜひ、寄らせていただこうと思います。本当にありがとうございます」
「いえいえ、こちらも商売ですからお気になさらず。しかし、それほど味噌と醬油をお気に召していただけるとは私も大変嬉しく思います」
ヤマモトさんの笑顔につられて、私もついつい話しが弾んでしまう。
「えへへ。味噌も醬油も料理には欠かせないですからね。酢味噌にして食べるのも良いし、焼きおにぎりも美味しいですし、料理するのが楽しみです!」
新鮮なたこにたっぷりとかけた酢味噌は美味しいだろうなぁ。
お米も手に入ったんだし、醬油の香ばしい香りの焼きおにぎりも早く食べたい。
こことは違う場所に思いを馳せていたら、ヤマモトさんが真面目な顔で質問をしてきた。
「……お客様。スミソとは何ですか?それと、ヤキオニギリとは?」
若干、前のめりのヤマモトさんに驚きつつ、私は素直に質問に答えた。
「え?えっと、酢味噌は味噌に酢を混ぜ合わせたもので、焼きおにぎりはおにぎりの表面に醬油を塗って焼いたものですが――」
そう説明をしている途中でヤマモトさんが話しを遮って口を開いた。
「お客様。別室でお話しをお伺いしたいのですが、少しよろしいでしょうか」
あまりにも真剣な眼差しを向けられて、私は断ることも出来ないまま無言で頷いた。
無言で頷いた私に笑みを浮かべたヤマモトさんは、私の背中に手を添えて上機嫌な様子で歩き始めた。
あれ?
私、何かやっちゃった?
「お買い上げありがとうございます。もし、またご購入の際は勉強させていただきます。申し遅れました。私はこの商会を任されておりますヤマモト ヒロシと申します。今後ともよろしくお願いいたします」
……え?
ヤマモト ヒロシさん?
アジア系かなとは思ったけど、まんま日本名じゃん。
懐かしい響きを耳にして、勝手に親近感を抱いて笑顔になる。
色々と聞きたいことはあるが、好奇心に蓋をして自己紹介した。
「僕はユーリ、冒険者です。あちこち旅をする予定なのですが、この店の支店は他の国にもありますか?」
これは私にとって大事なことなので、忘れないうちに尋ねておいた。
ヤマモトさんは私の服装からある程度見当をつけていたのか、笑みを浮かべたまま頷くと答えた。
「はい。各国の首都に店舗がございます。もし、そちらでお買い求めになられるのであれば、こちらをお見せください」
そう言ってヤマモトさんが封筒を手渡してきた。
各国の首都に行けば、またお味噌や醬油が買えるのか。
それは大変ありがたい。
しかし、封蠟が押されたこの封筒は一体何だろう?
私は封筒を手に首を傾げながら尋ねた。
「あの、この封筒は?」
ヤマモトさんは私の投げかけた質問に笑顔で答えた。
「その封筒は私の署名入りの手紙です。万が一お客様に失礼があった場合、そちらの封筒をお渡しください。後で私の方からも通達しておきますが、行き違いがあってはお困りになるでしょうから、その封筒は念のためお持ちになっておいてください」
物腰柔らかな口調はそのままだけど、何か含みを持たせた言い回しが気になった。
偶然、ヤマモトさんの目に留まり店に入れてくれたけど、本来なら子供の私が入店拒否されてもおかしくはなかった。
だって、明らかに高級そうな店に私のような子供が親や保護者の同伴もなく、一人で入店させてもらえるとは思えない。
だから、他の店で入店を断られないように封筒を持たせてくれたのだろう。
たぶんだけど、ヤマモトさんはそう伝えたかったのだと思う。
遠回しな伝え方だけど、ヤマモトさんの優しい心配りに胸が温かくなる。
私は封筒を胸に抱きしめて感謝の気持ちを口にした。
「お心遣いありがとうございます。他の国に行っても味噌や醬油が買えるのは助かります。ぜひ、寄らせていただこうと思います。本当にありがとうございます」
「いえいえ、こちらも商売ですからお気になさらず。しかし、それほど味噌と醬油をお気に召していただけるとは私も大変嬉しく思います」
ヤマモトさんの笑顔につられて、私もついつい話しが弾んでしまう。
「えへへ。味噌も醬油も料理には欠かせないですからね。酢味噌にして食べるのも良いし、焼きおにぎりも美味しいですし、料理するのが楽しみです!」
新鮮なたこにたっぷりとかけた酢味噌は美味しいだろうなぁ。
お米も手に入ったんだし、醬油の香ばしい香りの焼きおにぎりも早く食べたい。
こことは違う場所に思いを馳せていたら、ヤマモトさんが真面目な顔で質問をしてきた。
「……お客様。スミソとは何ですか?それと、ヤキオニギリとは?」
若干、前のめりのヤマモトさんに驚きつつ、私は素直に質問に答えた。
「え?えっと、酢味噌は味噌に酢を混ぜ合わせたもので、焼きおにぎりはおにぎりの表面に醬油を塗って焼いたものですが――」
そう説明をしている途中でヤマモトさんが話しを遮って口を開いた。
「お客様。別室でお話しをお伺いしたいのですが、少しよろしいでしょうか」
あまりにも真剣な眼差しを向けられて、私は断ることも出来ないまま無言で頷いた。
無言で頷いた私に笑みを浮かべたヤマモトさんは、私の背中に手を添えて上機嫌な様子で歩き始めた。
あれ?
私、何かやっちゃった?
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