転生少女と黒猫メイスのぶらり異世界旅

うみの渚

文字の大きさ
53 / 180
第一章 

第53話 酢味噌と焼きおにぎり

しおりを挟む
 個室に案内されてソファに腰を下ろすなりヤマモトさんが口を開いた。

「ユーリ様。早速ですが、先ほどのスミソとヤキオニギリなるものについて、作り方を教えていただいてもよろしいでしょうか?」

 部屋に通された時は何を言われるのか不安だったけど、ヤマモトさんの口から出た言葉に私は内心安堵した。
 どちらも特に難しい訳じゃないし、教えるくらいなら全く問題ない。
 そう判断した私は、笑みを浮かべて頷いた。

「あ、はい。それはもちろん構いませんよ」

 快く返事をすると、ヤマモトさんが目を輝かせて感謝の言葉を口にした。

「ありがとうございます。では、書き取りをしていきますので少々お待ちください」

 ヤマモトさんはすぐにソファから立ち上がると、机の引き出しから紙を取り出してソファに座り直して言った。

「お待たせしました。では、先ずスミソの方から作り方をお教えいただけますか?」

 そう言ったヤマモトさんの眼差しはとても真剣だ。
 その真剣な眼差しに私も自然と居住まいを正すと、ヤマモトさんに説明をし始めた。

「では、酢味噌ですが、作り方は至って簡単です。味噌大さじ一杯に酢を大さじ一杯から一杯半を入れて混ぜ合わせるだけで完成です。これは一人分の量ですし好みもありますから、酢を多めに入れたり少なめにして調整してください。酢味噌の使い道ですが、生魚にかけて食べても良いですし、野菜にかけて食べても良いです。とても簡単でしょう?」

 紙に書き留めていたヤマモトさんは手を止めて顔を上げると、感心したように頷いて語り出した。

「なるほど。スミソは生魚や野菜の付け合せということですか。ミソとスにそのような使用方法があったとは驚きました。ユーリ様は我々より我々の国の調味料をよくご存知でいらっしゃる。感服いたしました」

 元々、味噌も醬油も馴染み深いし、その程度なら私にも作れるからそこまで感心されても気恥ずかしい。
 それに、せっかく味噌と醬油があるのだから、この際もっと色々な調理法を世に広めてほしいと思った。
 そんな諸々の思惑で説明をしたつもりなのだが、ヤマモトさんは理解してくれただろうか。
 ヤマモトさんにキラキラとした眼差しを向けられて恥ずかしくなった私は、咳払いをした後口を開いた。

「んんっ。酢味噌の説明は理解していただけましたか?」

「ええ。非常に簡潔で分かりやすい説明でした。では、次にヤキオニギリについてお教えいただけますか?」

 ヤマモトさんは新しい紙を用意して顔を上げると、ヤキオニギリの説明をするよう促した。
 ヤマモトさんに促された私は、姿勢を正して簡単に詳細を説明した。

「焼きおにぎりはお米を握った後に表面に醬油を塗って焼いたものです。こちらも作り方は簡単ですが、火加減や塗る醬油の量に気をつける必要があります。でも、慣れてしまえば誰にでも作れますので、難しいことはないですよ」

 紙に書き留めたヤマモトさんが顔を上げて感嘆の声をあげた。

「ヤキオニギリとは握り飯を焼いたものなのですね?それであれば理解いたしました。どちらも作り方は簡単ですが、分量次第で味が変わるということですか。実に面白いですね」

 ヤマモトさんの言動から、彼の祖国でも味噌や醬油などの調味料はあっても、それらを応用する術を知らないのは理解した。
 せっかく味噌も醬油もあるのに勿体ない。
 しかし、握り飯を知っているのなら焼きおにぎりの説明をしてもすぐに理解してくれるだろう。

「ふふ。面白いですよね。調味料同士を混ぜ合わせるだけで色んな味になるのが凄いです。料理に幅が出るのが楽しいですね」

 そう発言した私の言葉にヤマモトさんの目がキラリと光る。

「……ほぉ。それは素晴らしいですね。ユーリ様は他の調理法をご存知なのですね?ぜひ、お聞かせください」





 何がヤマモトさんの琴線に触れたのか知らないが、少しだけ身を乗り出したヤマモトさんに苦笑を漏らしつつ投げかけてくる質問に答えていった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界に来ちゃったよ!?

いがむり
ファンタジー
235番……それが彼女の名前。記憶喪失の17歳で沢山の子どもたちと共にファクトリーと呼ばれるところで楽しく暮らしていた。 しかし、現在森の中。 「とにきゃく、こころこぉ?」 から始まる異世界ストーリー 。 主人公は可愛いです! もふもふだってあります!! 語彙力は………………無いかもしれない…。 とにかく、異世界ファンタジー開幕です! ※不定期投稿です…本当に。 ※誤字・脱字があればお知らせ下さい (※印は鬱表現ありです)

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

まったく知らない世界に転生したようです

吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし? まったく知らない世界に転生したようです。 何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?! 頼れるのは己のみ、みたいです……? ※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。 私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。 111話までは毎日更新。 それ以降は毎週金曜日20時に更新します。 カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。

転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう! 公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
アルファポリス様より書籍化! 転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。 どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。 - カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました! - アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました! - この話はフィクションです。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

元チート大賢者の転生幼女物語

こずえ
ファンタジー
(※不定期更新なので、毎回忘れた頃に更新すると思います。) とある孤児院で私は暮らしていた。 ある日、いつものように孤児院の畑に水を撒き、孤児院の中で掃除をしていた。 そして、そんないつも通りの日々を過ごすはずだった私は目が覚めると前世の記憶を思い出していた。 「あれ?私って…」 そんな前世で最強だった小さな少女の気ままな冒険のお話である。

魔王と噂されていますが、ただ好きなものに囲まれて生活しているだけです。

ソラリアル
ファンタジー
※本作は改題・改稿をして場所を移動しました。 現在は 『従魔と異世界スローライフのはずが、魔王と噂されていく日々』 として連載中です。2026.1.31 どうして、魔獣と呼ばれる存在は悪者扱いされてしまうんだろう。 あんなに癒しをくれる、優しい子たちなのに。 そんな思いを抱いていた俺は、ある日突然、命を落とした――はずだった。 だけど、目を開けるとそこには女神さまがいて、俺は転生を勧められる。 そして与えられた力は、【嫌われ者とされる子たちを助けられる力】。 異世界で目覚めた俺は、頼りになる魔獣たちに囲まれて穏やかな暮らしを始めた。 畑を耕し、一緒にごはんを食べて、笑い合う日々。 ……なのに、人々の噂はこうだ。 「森に魔王がいる」 「強大な魔物を従えている」 「街を襲う準備をしている」 ――なんでそうなるの? 俺はただ、みんなと平和に暮らしたいだけなのに。 これは、嫌われ者と呼ばれるもふもふな魔獣たちと過ごす、 のんびり?ドタバタ?異世界スローライフの物語。 ■小説家になろう、カクヨムでも同時連載中です■

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

処理中です...