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第一章
第53話 酢味噌と焼きおにぎり
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個室に案内されてソファに腰を下ろすなりヤマモトさんが口を開いた。
「ユーリ様。早速ですが、先ほどのスミソとヤキオニギリなるものについて、作り方を教えていただいてもよろしいでしょうか?」
部屋に通された時は何を言われるのか不安だったけど、ヤマモトさんの口から出た言葉に私は内心安堵した。
どちらも特に難しい訳じゃないし、教えるくらいなら全く問題ない。
そう判断した私は、笑みを浮かべて頷いた。
「あ、はい。それはもちろん構いませんよ」
快く返事をすると、ヤマモトさんが目を輝かせて感謝の言葉を口にした。
「ありがとうございます。では、書き取りをしていきますので少々お待ちください」
ヤマモトさんはすぐにソファから立ち上がると、机の引き出しから紙を取り出してソファに座り直して言った。
「お待たせしました。では、先ずスミソの方から作り方をお教えいただけますか?」
そう言ったヤマモトさんの眼差しはとても真剣だ。
その真剣な眼差しに私も自然と居住まいを正すと、ヤマモトさんに説明をし始めた。
「では、酢味噌ですが、作り方は至って簡単です。味噌大さじ一杯に酢を大さじ一杯から一杯半を入れて混ぜ合わせるだけで完成です。これは一人分の量ですし好みもありますから、酢を多めに入れたり少なめにして調整してください。酢味噌の使い道ですが、生魚にかけて食べても良いですし、野菜にかけて食べても良いです。とても簡単でしょう?」
紙に書き留めていたヤマモトさんは手を止めて顔を上げると、感心したように頷いて語り出した。
「なるほど。スミソは生魚や野菜の付け合せということですか。ミソとスにそのような使用方法があったとは驚きました。ユーリ様は我々より我々の国の調味料をよくご存知でいらっしゃる。感服いたしました」
元々、味噌も醬油も馴染み深いし、その程度なら私にも作れるからそこまで感心されても気恥ずかしい。
それに、せっかく味噌と醬油があるのだから、この際もっと色々な調理法を世に広めてほしいと思った。
そんな諸々の思惑で説明をしたつもりなのだが、ヤマモトさんは理解してくれただろうか。
ヤマモトさんにキラキラとした眼差しを向けられて恥ずかしくなった私は、咳払いをした後口を開いた。
「んんっ。酢味噌の説明は理解していただけましたか?」
「ええ。非常に簡潔で分かりやすい説明でした。では、次にヤキオニギリについてお教えいただけますか?」
ヤマモトさんは新しい紙を用意して顔を上げると、ヤキオニギリの説明をするよう促した。
ヤマモトさんに促された私は、姿勢を正して簡単に詳細を説明した。
「焼きおにぎりはお米を握った後に表面に醬油を塗って焼いたものです。こちらも作り方は簡単ですが、火加減や塗る醬油の量に気をつける必要があります。でも、慣れてしまえば誰にでも作れますので、難しいことはないですよ」
紙に書き留めたヤマモトさんが顔を上げて感嘆の声をあげた。
「ヤキオニギリとは握り飯を焼いたものなのですね?それであれば理解いたしました。どちらも作り方は簡単ですが、分量次第で味が変わるということですか。実に面白いですね」
ヤマモトさんの言動から、彼の祖国でも味噌や醬油などの調味料はあっても、それらを応用する術を知らないのは理解した。
せっかく味噌も醬油もあるのに勿体ない。
しかし、握り飯を知っているのなら焼きおにぎりの説明をしてもすぐに理解してくれるだろう。
「ふふ。面白いですよね。調味料同士を混ぜ合わせるだけで色んな味になるのが凄いです。料理に幅が出るのが楽しいですね」
そう発言した私の言葉にヤマモトさんの目がキラリと光る。
「……ほぉ。それは素晴らしいですね。ユーリ様は他の調理法をご存知なのですね?ぜひ、お聞かせください」
何がヤマモトさんの琴線に触れたのか知らないが、少しだけ身を乗り出したヤマモトさんに苦笑を漏らしつつ投げかけてくる質問に答えていった。
「ユーリ様。早速ですが、先ほどのスミソとヤキオニギリなるものについて、作り方を教えていただいてもよろしいでしょうか?」
部屋に通された時は何を言われるのか不安だったけど、ヤマモトさんの口から出た言葉に私は内心安堵した。
どちらも特に難しい訳じゃないし、教えるくらいなら全く問題ない。
そう判断した私は、笑みを浮かべて頷いた。
「あ、はい。それはもちろん構いませんよ」
快く返事をすると、ヤマモトさんが目を輝かせて感謝の言葉を口にした。
「ありがとうございます。では、書き取りをしていきますので少々お待ちください」
ヤマモトさんはすぐにソファから立ち上がると、机の引き出しから紙を取り出してソファに座り直して言った。
「お待たせしました。では、先ずスミソの方から作り方をお教えいただけますか?」
そう言ったヤマモトさんの眼差しはとても真剣だ。
その真剣な眼差しに私も自然と居住まいを正すと、ヤマモトさんに説明をし始めた。
「では、酢味噌ですが、作り方は至って簡単です。味噌大さじ一杯に酢を大さじ一杯から一杯半を入れて混ぜ合わせるだけで完成です。これは一人分の量ですし好みもありますから、酢を多めに入れたり少なめにして調整してください。酢味噌の使い道ですが、生魚にかけて食べても良いですし、野菜にかけて食べても良いです。とても簡単でしょう?」
紙に書き留めていたヤマモトさんは手を止めて顔を上げると、感心したように頷いて語り出した。
「なるほど。スミソは生魚や野菜の付け合せということですか。ミソとスにそのような使用方法があったとは驚きました。ユーリ様は我々より我々の国の調味料をよくご存知でいらっしゃる。感服いたしました」
元々、味噌も醬油も馴染み深いし、その程度なら私にも作れるからそこまで感心されても気恥ずかしい。
それに、せっかく味噌と醬油があるのだから、この際もっと色々な調理法を世に広めてほしいと思った。
そんな諸々の思惑で説明をしたつもりなのだが、ヤマモトさんは理解してくれただろうか。
ヤマモトさんにキラキラとした眼差しを向けられて恥ずかしくなった私は、咳払いをした後口を開いた。
「んんっ。酢味噌の説明は理解していただけましたか?」
「ええ。非常に簡潔で分かりやすい説明でした。では、次にヤキオニギリについてお教えいただけますか?」
ヤマモトさんは新しい紙を用意して顔を上げると、ヤキオニギリの説明をするよう促した。
ヤマモトさんに促された私は、姿勢を正して簡単に詳細を説明した。
「焼きおにぎりはお米を握った後に表面に醬油を塗って焼いたものです。こちらも作り方は簡単ですが、火加減や塗る醬油の量に気をつける必要があります。でも、慣れてしまえば誰にでも作れますので、難しいことはないですよ」
紙に書き留めたヤマモトさんが顔を上げて感嘆の声をあげた。
「ヤキオニギリとは握り飯を焼いたものなのですね?それであれば理解いたしました。どちらも作り方は簡単ですが、分量次第で味が変わるということですか。実に面白いですね」
ヤマモトさんの言動から、彼の祖国でも味噌や醬油などの調味料はあっても、それらを応用する術を知らないのは理解した。
せっかく味噌も醬油もあるのに勿体ない。
しかし、握り飯を知っているのなら焼きおにぎりの説明をしてもすぐに理解してくれるだろう。
「ふふ。面白いですよね。調味料同士を混ぜ合わせるだけで色んな味になるのが凄いです。料理に幅が出るのが楽しいですね」
そう発言した私の言葉にヤマモトさんの目がキラリと光る。
「……ほぉ。それは素晴らしいですね。ユーリ様は他の調理法をご存知なのですね?ぜひ、お聞かせください」
何がヤマモトさんの琴線に触れたのか知らないが、少しだけ身を乗り出したヤマモトさんに苦笑を漏らしつつ投げかけてくる質問に答えていった。
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