転生少女と黒猫メイスのぶらり異世界旅

うみの渚

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第一章 

第54話 特許権?特許料?

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「――とこんな感じです」

 ヤマモトさんが投げかけてきた質問に一つ一つ答えていくうちに、テーブルの上は紙の山が出来ていた。
 大量の紙の山を見つめていたら、テーブルにペンを置いたヤマモトさんが顔を上げて言った。

「大変素晴らしい!どうしてこのような素晴らしい調理法を今まで思い浮かばなかったのか不思議でなりません!ユーリ様、これ等の作り方を申請しましょう!さっそく申請書を取って参ります!」

 興奮した様子のヤマモトさんが、そう言って立ち上がる。
 一瞬呆気に取られた私は、立ち上がったヤマモトさんに声をかけた。

「え?あっ、ちょっと待ってください!申請書って何ですか?」

 呼びかけられたヤマモトさんが振り返って、満面の笑みを浮かべると言った。

「もちろん、特許権の申請書でございます。後ほど詳しくご説明いたしますが、特許を申請すれば特許料が発生します。発案者のユーリ様に特許料の一部が入る仕組みとなっております」

 特許権?特許料?
 そんな大袈裟にしなくても良いんじゃない?
 それに、私が発案したものじゃないのに特許料が入るなんてどうにも居たたまれない。

「えぇっ!?特許料!?いやいやいや、わた、僕は味噌や醬油などの調味料を使った料理がもっと増えれば良いだろうなと思ってお話ししただけで――」

 動揺してしまい、思わず私と言いかけてすぐに僕と言い直す。
 私は慌てて自分の意思を伝えようと口を開いたが、ヤマモトさんが話しを遮ると真剣な眼差しを向けて語り出した。

「ユーリ様。私の祖国でもこのような調理法は存じ上げません。それを他国のユーリ様がご存じな上、惜しげもなく教えてくださいました。本来なら先に契約を結んでからお話ししていただくのですが、つい興奮してすっかり忘れておりました。大変申し訳ございませんでした」

 ヤマモトさんは立ったままこちらに体を向けると、深々と頭を下げて謝罪の言葉を口にした。
 私もつられて立ち上がり、動揺しつつ言葉を返す。

「あ、いえ、契約とか特許とか知らなかった僕も悪いので。ですから、どうか頭を上げてください!」

 あわあわと動揺する私の姿を目にしたヤマモトさんは、ふっと眉尻を下げて柔らかく微笑んだ。

「お小さいのにしっかりとしていらっしゃる。ユーリ様、本来はこのような大事な話しは契約を結んでからが基本でございます。私の失態ではございますが、ユーリ様もくれぐれもお気をつけてくださいますよう胸に留めおいてください」

 再度、深々と頭を下げられた私は、ヤマモトさんの言葉を忘れないように胸に刻みつけた。

「はい。気をつけます」

 そう返事をした私に頷き返したヤマモトさんは、書類を取って参りますと告げると部屋を出て行った。

 しばらくして部屋に戻って来たヤマモトさんは、書類とパンパンに膨らんだ布袋をトレーに載せて現れると、それらをテーブルに置いてソファに腰を下ろすなり話し始めた。

「先ず、こちらの魔法紙まほうしが申請書となります。魔法紙まほうしにご署名していただければ申請は終了でございます。後の記入は私がいたしますのでご心配には及びません。私が先に記入いたしますので、ご署名だけお願いいたします」

 私は、テーブルに置かれた魔法紙に視線を移して目を凝らす。
 鑑定のスキルによると、この魔法紙まほうしは一度契約が結ばれると契約者が死ぬまで破棄されることはないらしい。
 そして、相手側も勝手に情報を売ることが出来ないようだ。
 信用第一の商売なら安心して契約を交わせるだろう。
 ヤマモトさんが良い人で良かった。
 もし、悪い人だったら確実に利用されて騙されていたかもしれない。
 何も考えずに聞かれるまま答えたが、これからはもう少し慎重に行動しよう。
 出会った人がヤマモトさんで良かったと思いながら、魔法紙まほうしに署名をしていった。









 記入と署名を黙々と続けていたら、ヤマモトさんが顔を上げて告げた。

「全ての魔法紙まほうしに署名がなされました。これで申請は完了いたしました。長らくお時間を頂戴しましたこと誠に申し訳ございませんでした。それから、こちらが先ほど教えていただいた作り方の報酬でございます」

 スッと差し出されたトレーには、パンパンに膨らんだ布袋が三つ載せられていた。
 私はギョッとして、布袋とヤマモトさんを交互に見て声をあげた。

「えっ!?」

「こちらは正当な報酬でございます。特許料は月に一度まとめて振り込む形になりますが、ユーリ様は商業カードをお持ちですか?」

 ニッコリと微笑んで告げられた私は、しばらく茫然とヤマモトさんと布袋を交互に見ていた。
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