転生少女と黒猫メイスのぶらり異世界旅

うみの渚

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第一章 

第51話 グローブフォレスト商会

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 宿の女性に教えてもらった通りに大通りを歩いて行くと、すぐにお目当ての場所にたどり着いた。
 外観は石造りの三階建てとなっており、なかなか大きな建物だ。
 それなりに繫盛しているようで、身なりの良い人達が数人建物から出て来るのが目に入った。
 彼等は店の前に停められた荷馬車に、荷物を載せるように指示を出している。
 全ての荷物を積み込むと、彼等は荷馬車の前に停めていた豪華な馬車に乗り込むと去って行った。
 荷馬車には御者が乗っており、荷物を運んだ人達に軽く頭を下げると、先に発った馬車を追うように馬を走らせた。
 私は自分が場違いな気がして、建物に入って良いものか悩んだ。
 すると、背後から男性の声がした。

「お客様。当店にご用でしょうか?」

 その声にハッと我に返って振り返ると、高そうなスーツ姿の白髪交じりの男性が私を見ていた。
 男性は、この国では珍しい濃紺の髪と瞳を向けて柔和に微笑んでいる。
 アジア系っぽい顔立ちは、どこか懐かしさを覚えていつの間にか緊張や悩みが吹き飛んでいた。

「あの、王都に行けば醬油が手に入ると聞いて来ました。ここは『グローブフォレスト商会』で合っていますか?」

 私の問いかけに、男性は柔和な微笑みを浮かべたまま答えた。

「はい、左様にございます。お客様は醬油をお求めなのでございますね?他にも珍しい調味料や食料品も取り扱っております。店内にご案内いたします」

 男性の案内で、私は店内に通された。
 店内に足を踏み入れた瞬間、棚やテーブルに陳列された商品を見て声をあげた。

「うわぁ。あれは調味料の瓶?黒っぽいから、もしかして醬油?あっちの樽は味噌かな?」

 私の発言に、前を歩いていた男性が振り返って感心したように答えた。

「お客様は随分とお詳しいのですね。こちらの商品はこの国では王都でしか扱っていないのですが、どちらでお知りに?」

「え?えっと、ベルクの街で露店をしていた方に聞きました。あの甘辛いタレの香りと味がすごく美味しくて、醬油を扱っているお店を教えてもらって来ました」

 正直に答えた私に向かって男性は満面の笑みを浮かべると口を開いた。

「そうですか。あのタレは私の祖国のタレなのです。祖国ではごく一般的なタレですが、この国ではあまり馴染みがないと思っておりました。作り方を購入された方に記憶がございます。……そうですか。今はベルクの街で露店商をなさっておいでなのですね」

 男性は懐かしむように遠くを見た後、再び話しをし始めた。

「お客様。こちらの棚は携帯に便利な醬油瓶や酢が揃えてあります。大きさも二種類ございますので、お好みの大きさを選べます。あちらには味噌や醬油を樽ごとお売りすることも量り売りすることも可能でございます。どうぞ、ごゆっくりとご覧ください。何かございましたら近くの者にお声がけください。それでは私はこれで失礼いたします」

 男性は丁寧な仕草で頭を下げるとその場を後にした。
 残された私達は、改めて店内に陳列された商品を見て回る。
 値札が付いていないので幾らなのか分からないが、容器がガラス瓶なことと王都でしか扱っていないことを考えれば、きっと安くはないだろう。
 でも、ありがたいことに私の懐はぬっくぬくである。
 それに、この店でしか扱っていないのなら、多めに買っておかないと今度いつ手に入るか分からない。
 これは決して散財ではない。
 必要だから買い占めておくのだ。
 私は、大人しく肩に乗っているメイスに念話で尋ねた。

『ねぇ、メイス。次、味噌や醬油が手に入るか分からないから多めに買いたいのだけど良いかな?』

『そうだな。このような珍しい物は初めて見た。幸い懐も温かいのだからお前の好きなようにしろ』

 メイスから許可が下りたため、私はうきうきと胸を弾ませながら一つ一つ商品を物色していく。
 内心、味噌や醬油があるならお米があるのではと期待して視線をあちらこちらに彷徨わせていた。
 すると、ある一角にそれらしい袋を目にして足早に近づくと目を凝らす。
 無意識に発動したスキルによって、その袋の中身が『特A』の米だと鑑定してくれた。

「お米だ!」

 静かな店内で声をあげてしまい、咄嗟に両手で口を覆う。
 期待はしていたが、まさか『特A』だとは予想もしていなかった。
 私は、あまりの嬉しさに顔を綻ばせて小さくガッツポーズした。
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