転生少女と黒猫メイスのぶらり異世界旅

うみの渚

文字の大きさ
90 / 180
第二章

第90話 ヒデさんの親友

しおりを挟む
 転生者で英雄のショータさんがカミール家初代当主だったなんて、こんな偶然ってあるだろうか?
 だけど、そう考えたら私の髪や瞳が黒いのも納得できる。
 隔世遺伝というものだろう。
 この世界は魔法が存在するため、科学というものが発達していないように思う。
 だから、髪や瞳の色が違うだけで自分の子供ではないと判断したのだろう。
 あまりにも短絡的な思考に思わず苦笑いしてしまう。
 苦笑いを浮かべた私に、ローブを羽織った男性が心配そうな面持ちで尋ねてきた。

「……お前さん、大丈夫かい?」

 男性に尋ねられてハッと現実に引き戻される。
 英雄が私のご先祖様だったと知って、驚きのあまり自分の世界に閉じこもってしまった。
 私は咄嗟に笑みを浮かべて返事をした。

「大丈夫です。色々とお話しをありがとうございます。カミール領に行ってみようと思います」

 笑みを浮かべた私を見て、安堵の表情を浮かべた男性がニッコリと微笑み返した。

「そうかい。それなら良かった。おぉ、そうそう、王都には英雄の銅像があるのじゃが、もし時間があれば寄ってみると良いじゃろう」

 銅像?それは是非とも見てみたい。

「はい。是非、寄ってみます」

 そう返事をして、その後とりとめのない会話を交わしているうちに、乗り合い馬車は休憩をとるために広い場所で止まった。
 乗り合い馬車から少し離れた場所に腰を下ろした私達は、作り置きしていたおにぎりと味噌汁を手に黙々と食べていた。
 そうして食べ進めていると、味噌汁を飲んでホッと息を吐き出したヒデさんがポツリと言った。

「……さっきの話しなんだけどさ、ショータ・カミールだっけ?偶然だと思うんだけど、親友の名前に似ているんだよね。だからなのか気になっちゃって……」

 ショータという名前は日本ではよくある名前の一つだ。
 しかし、名前が似ているからといって親友がこの世界に来ていると考えるのは、あまりにも安直ではないだろうか。

「……えっと、偶然じゃないの?どうして気になるの?」

 ヒデさんがなぜそんなことを口にしたのか分からずに尋ねると、ヒデさんは表情を曇らせてぽつぽつと語り始めた。

「……僕には親友と呼べるくらい仲の良い友達が居たんだ。しょうちゃんはいつも笑顔が絶えなくてクラスのムードメーカーだった。誰にでも優しくて正義感が強くて明るくて……僕はそんなしょうちゃんに何度も励まされたんだ。だけど……」

 ヒデさんは口をギュッと真一文字に結び話しを一旦止めると、しばらくの沈黙の後再び口を開いた。

「だけど、突然しょうちゃんは学校に来なくなったんだ。心配になった僕はしょうちゃんの家に行ってみた。……そしたら、誰もしょうちゃんを覚えていなかったんだ。何かの冗談にしては悪質過ぎるだろう?僕は必死にしょうちゃんの両親に訴えた。でも、おじさんもおばさんも僕のことは覚えていても、しょうちゃんのことはまるで最初から存在していなかったかのように何一つ覚えていなかったんだ……」

 ……何それ。
 そんな摩訶不思議なことが起きていたの?
 信じられない気持ちでヒデさんの目を見据えると、ヒデさんは諦めのような何とも言えない表情を浮かべて見つめ返してきた。

「信じられないのは分かるよ。僕だって未だに信じられないんだから。だけど、僕だけはしょうちゃんを覚えているのは事実だよ。……だから、僕はこう考えたんだ」

 私はごくりと喉を鳴らしてヒデさんの次の言葉を待った。

「しょうちゃんは異世界に行ったんじゃないかって。そうじゃなければ僕以外にしょうちゃんを覚えていないなんておかしいだろ?信じてくれなくても構わないけど、これだけは言わせてほしい。しょうちゃんはイマジナリーフレンドでも何でもなく、実在した親友だってことを」

 その真剣な眼差しは、噓を吐いているとは到底思えなかった。

 日本でも神隠し的な話しは昔からあった。
 しかし、そのほとんどが事故や事件で片付けられ、有耶無耶のまま捜査が打ち切られることもしばしばだ。
 だけど、こうして異世界に転生した私には、ヒデさんの言葉を否定するだけの気持ちはなかった。
 逆に、異世界に転生していてほしいと願う気持ちが芽生えていた。

「否定なんてしないよ。だって、ここは地球とは異なる世界だし、実際に私がこの世界に転生してるんだもの。きっと、ヒデさんの親友も転生か転移したんじゃないかな。また会えるといいね」

「……うん。また、会えるといいな」

 そう呟いたヒデさんの表情は暗いままだったが、彼の心が少しでも癒されるようにとブロンをヒデさんに預けた。

 その後、昼休憩を終えた私達は乗り合い馬車に乗ると、王都へ向けて移動を再開した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界に来ちゃったよ!?

いがむり
ファンタジー
235番……それが彼女の名前。記憶喪失の17歳で沢山の子どもたちと共にファクトリーと呼ばれるところで楽しく暮らしていた。 しかし、現在森の中。 「とにきゃく、こころこぉ?」 から始まる異世界ストーリー 。 主人公は可愛いです! もふもふだってあります!! 語彙力は………………無いかもしれない…。 とにかく、異世界ファンタジー開幕です! ※不定期投稿です…本当に。 ※誤字・脱字があればお知らせ下さい (※印は鬱表現ありです)

底無しポーターは端倪すべからざる

さいわ りゅう
ファンタジー
運び屋(ポーター)のルカ・ブライオンは、冒険者パーティーを追放された。ーーが、正直痛くも痒くもなかった。何故なら仕方なく同行していただけだから。 ルカの魔法適正は、運び屋(ポーター)に適した収納系魔法のみ。 攻撃系魔法の適正は皆無だけれど、なんなら独りで魔窟(ダンジョン)にだって潜れる、ちょっと底無しで少し底知れない運び屋(ポーター)。 そんなルカの日常と、ときどき魔窟(ダンジョン)と周囲の人達のお話。 ※タグの「恋愛要素あり」は年の差恋愛です。 ※ごくまれに残酷描写を含みます。 ※【小説家になろう】様にも掲載しています。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

元チート大賢者の転生幼女物語

こずえ
ファンタジー
(※不定期更新なので、毎回忘れた頃に更新すると思います。) とある孤児院で私は暮らしていた。 ある日、いつものように孤児院の畑に水を撒き、孤児院の中で掃除をしていた。 そして、そんないつも通りの日々を過ごすはずだった私は目が覚めると前世の記憶を思い出していた。 「あれ?私って…」 そんな前世で最強だった小さな少女の気ままな冒険のお話である。

転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう! 公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
アルファポリス様より書籍化! 転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。 どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。 - カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました! - アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました! - この話はフィクションです。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

まったく知らない世界に転生したようです

吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし? まったく知らない世界に転生したようです。 何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?! 頼れるのは己のみ、みたいです……? ※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。 私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。 111話までは毎日更新。 それ以降は毎週金曜日20時に更新します。 カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。

魔王と噂されていますが、ただ好きなものに囲まれて生活しているだけです。

ソラリアル
ファンタジー
※本作は改題・改稿をして場所を移動しました。 現在は 『従魔と異世界スローライフのはずが、魔王と噂されていく日々』 として連載中です。2026.1.31 どうして、魔獣と呼ばれる存在は悪者扱いされてしまうんだろう。 あんなに癒しをくれる、優しい子たちなのに。 そんな思いを抱いていた俺は、ある日突然、命を落とした――はずだった。 だけど、目を開けるとそこには女神さまがいて、俺は転生を勧められる。 そして与えられた力は、【嫌われ者とされる子たちを助けられる力】。 異世界で目覚めた俺は、頼りになる魔獣たちに囲まれて穏やかな暮らしを始めた。 畑を耕し、一緒にごはんを食べて、笑い合う日々。 ……なのに、人々の噂はこうだ。 「森に魔王がいる」 「強大な魔物を従えている」 「街を襲う準備をしている」 ――なんでそうなるの? 俺はただ、みんなと平和に暮らしたいだけなのに。 これは、嫌われ者と呼ばれるもふもふな魔獣たちと過ごす、 のんびり?ドタバタ?異世界スローライフの物語。 ■小説家になろう、カクヨムでも同時連載中です■

処理中です...