転生少女と黒猫メイスのぶらり異世界旅

うみの渚

文字の大きさ
89 / 180
第二章

第89話 英雄が私のご先祖様!?

 ガタゴトと未舗装の悪路を乗り合い馬車はゆっくりと進んでいく。
 時折、ブロンの耳が何かに反応してピクッと動くが、その度に私もスキルを発動させて辺りを警戒する。
 遠くに魔物の気配を察知したが、それ以上こちらに寄って来る気配がなかったので警戒しつつも放置した。
 乗り合い馬車には私達の他に数名の人達が乗っており、彼等の会話の端々から王都に向かっていることを知った。
 私は、斜め向かいに腰かけているローブを羽織った男性に声をかけた。

「良い天気に恵まれて良かったですね。おじいさんは王都までですか?」

 私に声をかけられて視線をこちらに向けた男性は、白髪交じりの顎髭に触れて柔和な笑みを浮かべて答えた。

「本当に良い天気で良かったわぃ。王都まではまだ十日はかかるからのぅ。お前さんも王都までかい?」

 なるほど。王都までは十日かかるのか。
 思いもよらず情報を得られた私は、笑みを浮かべて返事をした。

「はい。でも、王都まで十日もかかるんですか……。天候が崩れないと良いですね」

 そう返した私に、男性は空を見上げて呟いた。

「この時期ならそうそう天候が崩れることはないじゃろう」

 そう呟くと、男性は私を見て再び口を開いた。

「この国は比較的温暖な気候でな、滅多に天候が荒れることはないんじゃ。儂のような年寄りには寒暖の差が激しい土地での暮らしは体に堪えてなぁ。儂も数年前にこの国に越して来たんじゃ」

 確かに、寒暖の差が激しい土地での暮らしはお年寄りにはきついだろう。
 私は静かに相槌を打った。

「そうだったんですね」

 アルファイド王国に関する情報は『子鹿亭』のご主人から簡単に説明を受けていたが、やっぱりその国に暮らしている人から直接聞いた方がより正確な情報が得られるのはありがたい。
 すると、肩で私達のやり取りを見守っていたメイスが脳内に語りかけてきた。

『ユーリ、アイツのことを尋ねてくれ』

 ん?アイツって誰のこと?
 一瞬、メイスの言葉の意味が分からずに首を捻っていると、再び脳内にメイスが語りかけてきた。

『この国の英雄と呼ばれたアイツに決まっているだろう』

 おっと。本来の目的を忘れていた。
 私は男性に視線を向けると尋ねた。

「あの、この国の英雄についてお聞きしたいのですが、何かご存知ですか?」
「この国の英雄といえば、三百年ほど前に活躍した人物のことかのぅ。その人物のことなら儂が小さい頃から聞いて知っておるが……。お前さんは英雄に興味があるのかい?」

 英雄にというよりは、同じ日本からの転生者だから興味があるのだが。
 私はこくこくと頷いて男性を見つめて口を開いた。

「はい。そのためにこの国に来ました。出来れば英雄が住んでいた場所に行ってみたいと思っています」

 男性は白髪交じりの顎髭を触りながら「なるほどのぅ」と呟いた後、英雄について語り始めた。

「英雄の名前はショータ・カミール。元は平民だったそうじゃが、魔王討伐の功績を認められて伯爵位を叙爵されたそうじゃ。確か、王都から馬車で十日ほど行った領地がそうではなかったかのぅ。英雄は領主としても素晴らしい能力を発揮して領地を栄えさせたとも聞いた。一度行ってみたのじゃが、領民は穏やかで実に居心地の良い場所じゃったよ」

 英雄の名前はショータさんって言うのね。
 魔王討伐だけでなく、領主としての才能も素晴らしかったのか。
 ショータさんが領主として治めた領地を見たくなってしまった。

「……ん?カミール?」

 不意に口にして首を傾ける。
 どこかで聞いたような……。どこでだっけ?
 腕を組んで記憶の糸を手繰り寄せる。

「あっ!」

 思い出した!
 お母様が時折語ってくれた話しに、カミール家の名前が出ていた。

 ……ということは、もしかして……ショータさんが私のご先祖様!?
 
 信じられないと頭を振るが、お母様が話して聞かせてくれた内容と照らし合わせてみても、ショータさんがご先祖様であろうことは確かなようだ。



 こんな偶然があるとは想像すらしていなかった私は、ただ茫然とするしかなかった。

あなたにおすすめの小説

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

【完結】憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

本の虫な転生赤ちゃんは血塗りの宰相の義愛娘~本の世界に入れる『ひみちゅのちから』でピンチの帝国を救ったら、冷酷パパに溺愛されてます

青空あかな
ファンタジー
ブラック企業に勤める本の虫でアラサーOLの星花は、突然水に突き落とされた衝撃を感じる。 藻掻くうちに、自分はなぜか赤ちゃんになっていることを理解する。 溺死寸前の彼女を助けたのは、冷徹な手腕により周囲から「血塗りの宰相」と恐れられるアイザック・リヴィエール公爵だった。 その後、熱に浮かされながら見た夢で前世を思い出し、星花は異世界の赤ちゃんに転生したことを自覚する。 目覚めた彼女は周囲の会話から、赤ちゃんの自分を川に落としたのは実の両親だと知って、強いショックを受けた。 前世の両親もいわゆる毒親であり、今世では「親」に愛されたかったと……。 リヴィエール公爵家の屋敷に連れて行かれると、星花にはとても貴重な聖属性の魔力があるとわかった。 アイザックに星花は「ステラ」と名付けられ彼の屋敷で暮らすようになる。 当のアイザックとはほとんど会わない塩対応だが、屋敷の善良な人たちに温かく育てられる。 そんなある日、精霊と冒険する絵本を読んだステラはその世界に入り込み、実際に精霊と冒険した。 ステラには「本の世界に入り込み、その本の知識や内容を実際に体験したように習得できる特別な力」があったのだ。 彼女はその力を使って、隣国との条約締結に関する通訳不在問題や皇帝陛下の病気を治す薬草探索など、様々な問題を解決する。 やがて、アイザックは最初は煩わしかったはずのステラの活躍と愛らしさを目の当たりにし、彼女を「娘として」大切に思うようになる。 これは赤ちゃんに転生した本好きアラサーの社畜OLが、前世の知識と本好きの力を活かして活躍した結果、冷徹な義父から溺愛される話である。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。 事故で死んだ明彦が出会ったのは…… 転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた 小説家になろうでも連載中です。 なろうの方が話数が多いです。 https://ncode.syosetu.com/n8964gh/

王宮侍女は穴に落ちる

斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された アニエスは王宮で運良く職を得る。 呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き の侍女として。 忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。 ところが、ある日ちょっとした諍いから 突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。 ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな 俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され るお話です。

異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央
ファンタジー
 糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。  一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。  だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。  そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。  この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。 2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。

犬の散歩中に異世界召喚されました

おばあ
ファンタジー
そろそろ定年後とか終活とか考えなきゃいけないというくらいの歳になって飼い犬と一緒に異世界とやらへ飛ばされました。 何勝手なことをしてくれてんだいと腹が立ちましたので好き勝手やらせてもらいます。 カミサマの許可はもらいました。