おもちゃで遊ぶだけでスキル習得~世界最強の商人目指します~

暇人太一

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第一章 隠遁生活

第三十五話 日課からの特許登録

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 翌朝、目が覚めると目の前にはモフモフしたものがあった。顔を覆うモフモフの正体はラビくんのお腹のようだ。どうやらラビくんは俺の顔面に抱きついて寝ているようだった。

 可愛い。

 ちょっと苦しいけど、呼吸の度に顔面にフワフワモチモチのお腹が当たり、至福のひとときであるのは間違いなかった。

 気絶して寝てしまった俺に毛布を掛けて一緒に寝てくれたようだ。優しい子である。
 それからやっぱりリムくんは強制送還されてしまったみたいで、周囲を見回してもいる気配はない。まぁリムくんが消えたから俺が気絶したって分かった可能性もある。

 至福の時間だったが、やることがあるためラビくんを退かす。

「リムくん《召喚》」

「ワオォォォォーーン!」

「しぃーーーーー!」

 起きてしまうでしょ! と思い、唇に人差し指を当てて沈黙を促す。しかし時すでに遅し。ラビくんは起きていた。

「おはよー!」

「……おはよう」

「ガウ!」

 申し訳なさでいっぱいだ。

「朝は何するの?」

「堀の見回りをしないとね。そのあと魔力がある内にやっておきたいことがあってね」

「ついていっていい?」

「もちろん! 一緒に行こう!」

 みんなで顔を洗ったあと、ラビくんはリムくんの背中に乗る。俺は一応神器を腰に差し、右手には棒術練習用の棍を持って外に向かう。

「うわぁーー! めっちゃいるーー!」

 目の前の光景を見て、思わず叫んでしまった。

 迷宮を造ったことも関係あるのか分からないが、堀の中は魔物で溢れていた。中には上から落ちてくる魔物と剣山攻撃のダブルパンチで息絶えている魔物多く、空堀であったはずなのに赤黒い液体が下の方に溜まっていた。

 しかも洞窟東側の柵付きの堀もいっぱいで、柵を乗り越えた猛者もいたようだが、あえなく堀の餌食となったようだ。

「とりあえず見える範囲の魔物の死体を収納して行こうかな」

 ――《収納》――

 柵越しで収納しているから半径二メートルよりも狭い範囲だが、一気に魔物が消えたことで死体の上で順番待ちしていた魔物が、次のダブルパンチの餌食になった。

 俺は準備運動と《収納》の習熟度向上のために、《収納》を発動させたまま柵の中を走り回っていく。幸いにも堀を越えた魔物は存在せず、安全に走り回れた。

 果たしてダブルパンチ地獄は続くのだった。

「え、エグい……。なんか同情しちゃうよ……」

「でもこれから毎日コレをやるんだよ?」

「えぇぇーーー! 朝の日課ってこと?」

「そのとおり! 新鮮な死体だったら神器を使ってリムくんの強化ができるからね!」

「自分は強化しないの?」

 そうなんだよな……。それについては悩んでいる。というのも、魔物が持っている力というのは人間とは違うのだ。【魔法】と呼ばれるスキルに近い魔術や、【能力】と呼ばれるスキルの魔物版がある。二種類とも上位種などに備わっている能力で、これがあるから魔王軍が脅威であるらしい。

 魔法は属性攻撃ができる固有攻撃や特殊能力みたいなもので、有名なものだと竜種の《咆哮ブレス》が該当する。

 能力は簡単で魔物版のスキルだ。
 たまに上位種の中に武器や魔術などを使う魔物がいるが、能力持ちだからこそ可能なのだ。ただし、人間のスキルとは違いレベルアップはしない。名前も異なる。

 例えば剣術は剣技になる。
 多少の差異はあるが、俺の万能チート職業以外で万能チートになれるということだ。

 つまりは神器があればこそ無敵の勇者になれたわけである。

 欲に塗れる気持ちは分からんでもないけど、俺はリムくんの育成を最優先にしたい。リムくんの忠誠がどうとかよりも、俺の道連れでリムくんまで死んでしまうとかは避けたい。あのモフモフ大好きのアルテア様なら抜け道を用意していてくれているはずだと信じ、俺は自力で強くなる道を模索していこうと思う。

 どうしても無理な場合は、武器として活躍してもらおう。能力も魔力もなければフルボッコにできそうだし、最悪魔核を抜いてしませば確実だろう。

「俺はリムくん精霊化計画を諦めない! たとえリムくんに殴られても!」

「ガウウーー!」

「痛っ! じゃあ……妥協してリムくんが使いそうにないものはもらうことにして、基本的に魔力などはリムくんにあげる! あと、ラビくんも強化するからね!」

「――え? ぼくはいいよ!」

「何で?」

「刺されたくない!」

 そうだ! リムくんは食べさせるだけだけど、ラビくんの場合は刺さなきゃいけないんだった。

「ラビくんは……ドM……じゃないよね?」

「違うよ!」

 残念だけど仕方がない。俺も痛がるラビくんは見たくない。

「うん! じゃあリムくんに一点集中でいこう! まずは残った魔物にトドメを刺して回収していかなきゃ」

 密集していてくれれば楽だったけど、まばらになっているせいでトドメを行う回数が多そうだと予測できる。

 できればこのあとのために魔力を温存しておきたいのだ。

「地よ、《地槍》」

 少し長めの石の槍を作る。

 地魔術で一番いい点は物質化するところだ。火属性の槍は威力は高いが飛ばすしか攻撃方法がないが、地属性の槍は持って武器にできる。

 今回は長めの槍を手に持ち身体強化で筋力を補い、剣山や魔物のせいで身動きが取れなくなった魔物を突き刺していく。それでも無理なヤツには魔術で応戦していけばいい。

 時間がかかるだろうが魔力の節約にはなる。槍術に適性がある緋猿族のおかげで、もしかしたら槍術も習得できるかもしれない。

「槍を使うなら一突きで殺すことを意識して突きを放つのよー」

 どこか疲れたような気怠い感じの声が聞こえてきた。思わず声が聞こえた方を振り返ると、そこにはいつもの光る板が浮いていた。

「おかえりなさい」

「おかえりー!」

「ガウー!」

「……ただいま」

 昨日突然黙ってから今まで音信不通状態だったが、無事に戻ってきたタマさん。口調は完全に素になっており、取り繕うことを完全に忘れているようだ。

 何があればあそこまで疲弊するのだろうか?

「……何かありました?」

「……別に……何も……」

 何もなかったようには思えないほど、疲弊しているように感じるのだが……。

「ついでにアルテア様に会ってきたところ、ドロン酒が完成したらまた奉納して欲しいそうよ。奉納するために必要な法具である【神珠】を《メール》で送っておくから、木像にはめてくれればいいって。それとアルテア様の管轄で特許登録したから、何人たりとも権利の侵害を許さないそうよ。それも未来永劫ですって」

 天使さん以上に気に入ってくれたのはありがたいが、管轄に違いってあるのか?

「管轄って関係あるんですか?」

「当然あるわ。でもまずは魔物の処理をやってしまいなさい」

「あっ! そうだった!」

 さすがに初めて使う槍を脳天に突き刺すことは無理だから、ほぼ磔になっている魔物の首を狙う。
 緋猿族の棒術は槍の穂先がなくなったときを考えて編み出された技が結構あり、兵士たちの訓練を観察していたから見取り稽古はほぼ完璧だ。

 目を瞑ってイメージし、その動きをなぞるように突きを放つ。

「――はっ!」

 突き突き刺さった感触はあるが、イメージとはかけ離れた一撃でとても絶命させてはいないことは明白だった。

「まぁ初めてにしてはまぁまぁねー」

 そういえば激しすぎて忘れてたけど、熊親分とのお散歩が初めての魔物との戦闘だった気がする。とにかくに倒さなきゃって思ってたから、精神的なストレスとかは感じなかったな。もちろん、今もだけど。

 熊親分はそこまで考えてくれたのかな?

「ほら、反省はあとよ。まずは全て終わらせなさい」

「はい」

 ◇

 その後、一時間かけて討伐は終わらせた。

 次は掃除だ。
 まずは南を除く全ての堀の壁に向かって簡単に水をかけ、血液に魔力水を混ぜ合わせていく。自分の魔力水が含まれた液体は操りやすくなるからだ。

「水よ、《操水》」

 魔力水を含んだ血液が持ち上げ隣の堀へ移動する。順序は西北東の順だ。

 堀に一度全体に広がるように魔力水入り血液をかき混ぜる。追加の血液も持ち上げるために。
 これを繰り返し、最終的に南側に開けた貯水池風のゴミ処理施設に放り込む。この中はすでにお猿さんたちを窒息死させたスライムを放り込んでいるから、汚水も汚物も関係なく消化吸収してくれる。

 一部のスライムはスライムポットントイレ用に、居住区画と解体作業場のトイレの地中深くに放り込んだ。

 魔物の解体は午後に回すことにして、タマさんの説明を聞きながら朝食をとる。

「確か特許の管轄についてだったわね」

「そうですね。てっきりものづくりの神である火の大精霊様が担当で、奉納しなきゃって思ったんですけど」

「まぁ間違ってないわ。実際、ものづくりの担当だもの。でも直接の管轄は料理と鍛冶、担当の関係で細工系全てね」

 お酒って料理じゃないのか?

「あんたのドロン酒って薬なんでしょ?」

 ……ついに、「あんた」になったか……。

「そういえばそうですね」

「なら今回は光の大精霊の管轄になるの。医療関係が担当で、管轄は薬のレシピなどね」

「じゃあ奉納しなきゃ」

「それが今回はダメね。光の大精霊は召喚勇者の担当になったから、薬であって世界初の銘酒なんて取り上げられるわよ? しかも霊王をはめた信者は光の大精霊の狂信者たちよ? クソ共に渡す酒はクソに相応しいもので十分なのよ!」

 俺としては召喚勇者とクソ信者が悪いだけで光の大精霊様は悪いと思わないけど、光の大精霊様が気に入って信者に供えるように言い出したら面倒なことになるのは目に見えている。

 ――うん。言うとおりにしよう。

「それにお酒っていう管轄だと地の大精霊の管轄になってややこしいのよ。だから全知全能であるアルテア様が担当してくれることになったの。じゃなきゃタダでさえ少ないのに、関係者全員に飲ませることになるのよ? 何もしてないのに……!」

 俺と関わってないという意味でかな?

「あの~タマさんは大精霊様たちよりも偉いの?」

「転生した今となっては同格ね。……たぶん」

 絶対違うやつだ……。

「まぁ管轄のメリットは大精霊に興味を持ってもらえれば加護がもらえること、実積になるから名誉がえられること。デメリットは大精霊に奉納するレベルのものだと大きい神殿で奉納することになるから、立会人から流出したり顔を晒すことになるから逃げれない」

「小さいところではできないんですか? あと変装とか」

「小さいところでもできなくはないけど、精霊も一枚岩じゃないから悪用しようとする悪戯っ子みたいなヤツがいんのよ。神前で変装は許されないわ。盗用を疑われるだけだし、信者がウザくなるわよ」

 タマさんの説明を受けた俺は女神像の前にすっ飛んで行き土下座をした。

「アルテア様……、いつもいつもありがとうございます!」

 面倒事を回避してくれたことに心の底から感謝した。
 
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