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第一章 隠遁生活
第三十六話 水没からの災害降臨
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朝ご飯を食べ終わり、何をするのかという話になった。本当ならすぐにおもちゃで遊び、スキルを得ておきたいところだが、それよりもやってみたいことがあった。
この洞窟でしかできないことだ。
「それで何するのよ」
「迷宮の攻略をしてみようかと」
「宝探しだー!」
「ガウー!」
楽しみにしているところに水を差すのは気が引けるが、言わなければラビくんたちも被害者になってしまう。
「え……えっとー、宝探しの前にここでしかできない方法を試してみたいんだ」
「ん? ここでしかできないって?」
「まぁ見てて」
百聞は一見にしかず。口で説明するよりも早いし、言ったら反対されそうだから言わずにやりたい。
迷宮の入口を開けて少しだけ下がる。半地下みたいな位置に巨大空間があり、その奥に地下に繋がる階段がある。
半地下みたいなところからすでに迷宮で、洞窟の大きさと空間の大きさが明らかに違う。でも半地下はいわゆる待合スペースのような場所で、スタンピードでもなければ魔物は出現しない。
階段の縁に立ち、魔術を発動する。
「水よ、《創水》」
朝という魔力が満タンである状態で、魔力消費量が極小の生活魔術を使用する。それも限界ギリギリまで。
地属性の迷宮に必ずいるだろうゴーレム系は倒せなくても、生物系の魔物は溺死させられるだろうし、圧力スイッチ式の罠は水圧で無力化できる。さらに増えた魔力の大量消費が可能と、軽く見積もっても一石で三鳥も得るものがある。
最高の迷宮攻略法である。
「……な……何、してるの?」
「水没させようと思って。ここしかできないでしょ?」
「……何で?」
「他だと人間がいるから、大量殺人犯になっちゃうでしょ? まぁリムくんの成長はできなくなるけど。でも全滅は無理だろうからまだ残りがあるだろうから、期待して待っててね!」
「ガ……ガウゥゥーー……」
あれ? モフモフに引かれてる?
「あ、あんた……水没させたあとどうすんのよ?」
「それについても考えてますよ」
魔力を七割ほど使ったところで階段の縁まで水で埋まった。
ダムをイメージして勢いよく放水したけど、ボス部屋の扉を開けれたか不安だ。一階層だけで七割とかだったらすごい広さの迷宮ってことだしね。
「しばらく放置で」
溺死までの時間は必要だろう。
「まずは後処理のための交渉に行きましょう」
「「交渉?」」「ガウ?」
洞窟の外に出て北側に回る。
洞窟の北側は深い森になっているのだが、迷宮のすぐ側に魔物が一体鎮座している。
「イビルプラントさん、取引しませんか?」
直後、鞭のような攻撃が地面を穿つ。
この攻撃が来ることはオークちゃんの決闘で見ているから無事に回避成功。
イビルプラントだろう魔物は枯れ木のような姿で生命力が枯渇しているように見える。ラビくんを回復した特濃魔力水を吸収して元気になってもらおうと思っての交渉だ。
俺が欲しいのは水の処理役と木材供給担当だから、命の恩人になってあげたいと思っている。つまり自ら恩を売りつけようとしているわけだ。
分かってる。クズ野郎ってことはね。
「今は周囲にイビルプラントがいないけど、近々来るかもしれないでしょ? 力をつけておけばいいし、俺たちは永住するつもりはないから、いなくなったあと領域の主になれるから悪くないと思うけど?」
少しは魅力的に感じたのだろうか。鞭のような攻撃が止んだ。
「俺が欲しいのは、大量の魔力水を吸収してくれる魔物と木材をくれる魔物。水は多かったらスライムにあげてもいいし貯水池を造ってもいいけど、木材は伐採しなきゃいけないんだよね。広くなったら人間が来そうで嫌でしょ?」
利害は一致しているはず。
「もし取引に応じてくれるなら地面を一度叩いて。無理なら二度。その場合は他の魔物に話を持っていくからさ」
しばらく枝が揺れ、悩んでいるだろうことが伝わってくる。交渉に手応えを感じ、もう一押しすることに。
「引き受けてくれるなら特濃魔力水を定期的に提供してもいいと思ってる」
特濃魔力水は魔境の奥地に行かなければ入手不可能で、たとえ人工的なものでも魔物にとっては喉から手が出るほど欲しいものらしい。
――ピシッ!
地面が一度叩かれた。つまりは取引成功ということだ。
「ありがとう。これからよろしく!」
「ボオォォォォーー!」
交渉も終わったことだし、早速水を抜きに行こう。
「アーク……あの木の魔物はイビルプラントじゃないよ?」
「……え?」
「脅威度五のジャイアントプラントだよ」
格下の魔物と間違えたから怒ったのか?
「で、でも枯れ木のように見えたから……」
「ここは魔素が少ないから弱ったんだよ。多分奥地から追放されたんじゃないかな」
「そっか……。じゃあ元気になったら素材として優秀そうだね!」
「そ、そうだけど……気をつけてよね!」
「ご、ごめんね……」
「よろしい!」
熊親分で慣れてしまっていたけど、脅威度五の魔物って上位種に該当する魔物だったな。すっかり失念していた。
これを機にしっかり反省をしよう。
「それでこの大量の魔力水をどうすんのよ? 湖でもつくるつもり?」
「水は熊親分に教わった方法を試してみます」
「あの熊さんに?」
タマさんは疑っているようだけど、以前から教わっていたことを試そうと思って水没させることにしたのだ。
最初は熊の泥んこ遊びみたいなジェスチャーだったからわかりにくかったけど、昨日のお散歩でも教えてくれたからイメージはできている。
さらに迷宮を造ったときの属性喚起の仕方でコツを掴むことに成功した。まだ集中しなければいけないが、技術が一つ身についたような感覚は正直気持ちいい。
「――水よ」
『属性魔術は、自分の魔力を呼び水にして周囲の魔力を変化させてあらゆる事象を起こすことである』
と、魔導書に書いてあった。
そして熊親分の泥んこ遊びを元にした技術を、魔導書の内容に当てはめて実行する。
「――圧縮」
水属性の魔力をこねこねしてから圧縮するイメージを持ち、魔術発動後に特濃魔力水を創っていく。
熊親分が、俺の魔力がスカスカのペラペラだから垂れ流しにしていても紙装甲の撒き餌にしかなっていないと、ジェスチャーを盛大に使って教えてくれたことがあった。
密度を高めればいいと理解はしたが、これがかなり難しかった。集中していないとできないから戦闘に向かないし、感知が難しくなり奇襲されると対応が遅れる。
親分が言っていたのは無属性の身体強化や防御強化のことで、これらは自分の魔力を消費して行うものだ。
属性魔術は自身の魔力消費は少ないけど、発動後の圧縮は難しい。対して無属性は放出せずに循環し続けられれば、魔力消費は極小で圧縮も比較的容易になる。
問題は循環しながら圧縮するということだ。
まだ基礎の圧縮も上手く出来ないのに、循環しながらという追加項目が習熟の邪魔をしている。悩んでいたところに、迷宮造りや圧縮だけすればいいという基礎を学べる練習法が見つかった。
魔力圧縮を完璧にしてから熊親分の課題に移りたい俺は、早速下準備である迷宮水没作戦を始めたのだ。
「で、できた……」
すごく疲れたけど、湖ができそうな量の水を風呂釜一杯分まで圧縮できた。
目の前をふよふよと宙に浮かぶ超特濃魔力水を、ジャイアントプラントのところまで魔力制御で操作して運ぶ。
「これが約束の魔力水だけど、今日のは特別だからね。取引成功の御祝いに持ってきたんだ。枝か根を突き刺して吸っ――」
俺が現れてから興奮して枝葉を揺らしていたプラントさんは、俺が「どうぞ」と言う前に根を地面から抜き、宙に浮かぶ超特濃魔力水に突き刺した。
まるで根が水を飲んでいるようにゴクゴクッと音を鳴らしながら脈動し、すごい勢いで魔力水を吸収していく。
飲み終わった直後、先ほどまで格下のイビルプラントに見えていた枯れ木の体が、瑞々しい樹木に変わっていき、枝葉も青々とし花も咲き乱れている。
体から放っている魔力も上位種に相応しいものに感じる。というかもっと奥地にいてもおかしくないのでは? と思わせるほどに密度や圧力が変化した。
「……な、何してるの……?」
「水やり?」
「……進化しちゃった……よ?」
「……何に?」
「脅威度六のトレントに……」
ここにいていいやつじゃない……!
脅威度六って言えば災害級の魔物じゃないか……。敷地内に災害級の魔物がいるとか気が気じゃないよ。
「……あの熊さん、すでにそんなことを教えていたのかぁ……」
途中から沈黙を貫いていたタマさんが、熊親分の教育方針に驚いたようだ。俺も当初驚いていた。同時に無理だと思っていたが、「そんなこともできないのか?」というような挑発を受け、今日まで必死に訓練を続けてきたのだ。
あの鼻で笑われた顔は今でも忘れない。まぁその前の泥んこ遊びみたいな姿も忘れていないけど。
「あたし……教えるところあるかなー……」
◇
迷宮ができたばかりはあまりいいお宝がないらしく階層も少ないが、洞窟の迷宮は珍しく最初から十階層もあるらしい。
それとここは自動解体型迷宮らしく、いわゆるドロップタイプの迷宮だ。
解体しなくて済むのは楽だが、水没作戦をするとリムくんの強化ができない。悩ましいが購入したおもちゃも使いたいから、しばらくは朝の日課で回収する魔物をリムくんの強化に回して、迷宮は圧縮訓練用に使わせてもらおう。
「地よ、生命を宿し、我が命を実行せよ《岩石兵》」
ゴーレムを十二体生み出し、四体一組の三隊を編成した。彼らは俺の代わりに迷宮に潜り、ドロップアイテムを回収する役目を担っている。もちろん宝箱の中身も回収する。
地図をつくってもらいたかたったけど、そこまで知能が高くないため諦めた。代わりに盾や戦鎚を持たせているから、溺死しなかっただろうゴーレム系魔物を殲滅してもらう。
「三隊の内、一隊が戦闘不能になったら撤退して戻るように!」
コクッと頷き、荷車を持ち上げ階段を降りていくゴーレムを見送った。
俺は今からモフモフたちとおもちゃパーティーだ! ヒャッホー!
この洞窟でしかできないことだ。
「それで何するのよ」
「迷宮の攻略をしてみようかと」
「宝探しだー!」
「ガウー!」
楽しみにしているところに水を差すのは気が引けるが、言わなければラビくんたちも被害者になってしまう。
「え……えっとー、宝探しの前にここでしかできない方法を試してみたいんだ」
「ん? ここでしかできないって?」
「まぁ見てて」
百聞は一見にしかず。口で説明するよりも早いし、言ったら反対されそうだから言わずにやりたい。
迷宮の入口を開けて少しだけ下がる。半地下みたいな位置に巨大空間があり、その奥に地下に繋がる階段がある。
半地下みたいなところからすでに迷宮で、洞窟の大きさと空間の大きさが明らかに違う。でも半地下はいわゆる待合スペースのような場所で、スタンピードでもなければ魔物は出現しない。
階段の縁に立ち、魔術を発動する。
「水よ、《創水》」
朝という魔力が満タンである状態で、魔力消費量が極小の生活魔術を使用する。それも限界ギリギリまで。
地属性の迷宮に必ずいるだろうゴーレム系は倒せなくても、生物系の魔物は溺死させられるだろうし、圧力スイッチ式の罠は水圧で無力化できる。さらに増えた魔力の大量消費が可能と、軽く見積もっても一石で三鳥も得るものがある。
最高の迷宮攻略法である。
「……な……何、してるの?」
「水没させようと思って。ここしかできないでしょ?」
「……何で?」
「他だと人間がいるから、大量殺人犯になっちゃうでしょ? まぁリムくんの成長はできなくなるけど。でも全滅は無理だろうからまだ残りがあるだろうから、期待して待っててね!」
「ガ……ガウゥゥーー……」
あれ? モフモフに引かれてる?
「あ、あんた……水没させたあとどうすんのよ?」
「それについても考えてますよ」
魔力を七割ほど使ったところで階段の縁まで水で埋まった。
ダムをイメージして勢いよく放水したけど、ボス部屋の扉を開けれたか不安だ。一階層だけで七割とかだったらすごい広さの迷宮ってことだしね。
「しばらく放置で」
溺死までの時間は必要だろう。
「まずは後処理のための交渉に行きましょう」
「「交渉?」」「ガウ?」
洞窟の外に出て北側に回る。
洞窟の北側は深い森になっているのだが、迷宮のすぐ側に魔物が一体鎮座している。
「イビルプラントさん、取引しませんか?」
直後、鞭のような攻撃が地面を穿つ。
この攻撃が来ることはオークちゃんの決闘で見ているから無事に回避成功。
イビルプラントだろう魔物は枯れ木のような姿で生命力が枯渇しているように見える。ラビくんを回復した特濃魔力水を吸収して元気になってもらおうと思っての交渉だ。
俺が欲しいのは水の処理役と木材供給担当だから、命の恩人になってあげたいと思っている。つまり自ら恩を売りつけようとしているわけだ。
分かってる。クズ野郎ってことはね。
「今は周囲にイビルプラントがいないけど、近々来るかもしれないでしょ? 力をつけておけばいいし、俺たちは永住するつもりはないから、いなくなったあと領域の主になれるから悪くないと思うけど?」
少しは魅力的に感じたのだろうか。鞭のような攻撃が止んだ。
「俺が欲しいのは、大量の魔力水を吸収してくれる魔物と木材をくれる魔物。水は多かったらスライムにあげてもいいし貯水池を造ってもいいけど、木材は伐採しなきゃいけないんだよね。広くなったら人間が来そうで嫌でしょ?」
利害は一致しているはず。
「もし取引に応じてくれるなら地面を一度叩いて。無理なら二度。その場合は他の魔物に話を持っていくからさ」
しばらく枝が揺れ、悩んでいるだろうことが伝わってくる。交渉に手応えを感じ、もう一押しすることに。
「引き受けてくれるなら特濃魔力水を定期的に提供してもいいと思ってる」
特濃魔力水は魔境の奥地に行かなければ入手不可能で、たとえ人工的なものでも魔物にとっては喉から手が出るほど欲しいものらしい。
――ピシッ!
地面が一度叩かれた。つまりは取引成功ということだ。
「ありがとう。これからよろしく!」
「ボオォォォォーー!」
交渉も終わったことだし、早速水を抜きに行こう。
「アーク……あの木の魔物はイビルプラントじゃないよ?」
「……え?」
「脅威度五のジャイアントプラントだよ」
格下の魔物と間違えたから怒ったのか?
「で、でも枯れ木のように見えたから……」
「ここは魔素が少ないから弱ったんだよ。多分奥地から追放されたんじゃないかな」
「そっか……。じゃあ元気になったら素材として優秀そうだね!」
「そ、そうだけど……気をつけてよね!」
「ご、ごめんね……」
「よろしい!」
熊親分で慣れてしまっていたけど、脅威度五の魔物って上位種に該当する魔物だったな。すっかり失念していた。
これを機にしっかり反省をしよう。
「それでこの大量の魔力水をどうすんのよ? 湖でもつくるつもり?」
「水は熊親分に教わった方法を試してみます」
「あの熊さんに?」
タマさんは疑っているようだけど、以前から教わっていたことを試そうと思って水没させることにしたのだ。
最初は熊の泥んこ遊びみたいなジェスチャーだったからわかりにくかったけど、昨日のお散歩でも教えてくれたからイメージはできている。
さらに迷宮を造ったときの属性喚起の仕方でコツを掴むことに成功した。まだ集中しなければいけないが、技術が一つ身についたような感覚は正直気持ちいい。
「――水よ」
『属性魔術は、自分の魔力を呼び水にして周囲の魔力を変化させてあらゆる事象を起こすことである』
と、魔導書に書いてあった。
そして熊親分の泥んこ遊びを元にした技術を、魔導書の内容に当てはめて実行する。
「――圧縮」
水属性の魔力をこねこねしてから圧縮するイメージを持ち、魔術発動後に特濃魔力水を創っていく。
熊親分が、俺の魔力がスカスカのペラペラだから垂れ流しにしていても紙装甲の撒き餌にしかなっていないと、ジェスチャーを盛大に使って教えてくれたことがあった。
密度を高めればいいと理解はしたが、これがかなり難しかった。集中していないとできないから戦闘に向かないし、感知が難しくなり奇襲されると対応が遅れる。
親分が言っていたのは無属性の身体強化や防御強化のことで、これらは自分の魔力を消費して行うものだ。
属性魔術は自身の魔力消費は少ないけど、発動後の圧縮は難しい。対して無属性は放出せずに循環し続けられれば、魔力消費は極小で圧縮も比較的容易になる。
問題は循環しながら圧縮するということだ。
まだ基礎の圧縮も上手く出来ないのに、循環しながらという追加項目が習熟の邪魔をしている。悩んでいたところに、迷宮造りや圧縮だけすればいいという基礎を学べる練習法が見つかった。
魔力圧縮を完璧にしてから熊親分の課題に移りたい俺は、早速下準備である迷宮水没作戦を始めたのだ。
「で、できた……」
すごく疲れたけど、湖ができそうな量の水を風呂釜一杯分まで圧縮できた。
目の前をふよふよと宙に浮かぶ超特濃魔力水を、ジャイアントプラントのところまで魔力制御で操作して運ぶ。
「これが約束の魔力水だけど、今日のは特別だからね。取引成功の御祝いに持ってきたんだ。枝か根を突き刺して吸っ――」
俺が現れてから興奮して枝葉を揺らしていたプラントさんは、俺が「どうぞ」と言う前に根を地面から抜き、宙に浮かぶ超特濃魔力水に突き刺した。
まるで根が水を飲んでいるようにゴクゴクッと音を鳴らしながら脈動し、すごい勢いで魔力水を吸収していく。
飲み終わった直後、先ほどまで格下のイビルプラントに見えていた枯れ木の体が、瑞々しい樹木に変わっていき、枝葉も青々とし花も咲き乱れている。
体から放っている魔力も上位種に相応しいものに感じる。というかもっと奥地にいてもおかしくないのでは? と思わせるほどに密度や圧力が変化した。
「……な、何してるの……?」
「水やり?」
「……進化しちゃった……よ?」
「……何に?」
「脅威度六のトレントに……」
ここにいていいやつじゃない……!
脅威度六って言えば災害級の魔物じゃないか……。敷地内に災害級の魔物がいるとか気が気じゃないよ。
「……あの熊さん、すでにそんなことを教えていたのかぁ……」
途中から沈黙を貫いていたタマさんが、熊親分の教育方針に驚いたようだ。俺も当初驚いていた。同時に無理だと思っていたが、「そんなこともできないのか?」というような挑発を受け、今日まで必死に訓練を続けてきたのだ。
あの鼻で笑われた顔は今でも忘れない。まぁその前の泥んこ遊びみたいな姿も忘れていないけど。
「あたし……教えるところあるかなー……」
◇
迷宮ができたばかりはあまりいいお宝がないらしく階層も少ないが、洞窟の迷宮は珍しく最初から十階層もあるらしい。
それとここは自動解体型迷宮らしく、いわゆるドロップタイプの迷宮だ。
解体しなくて済むのは楽だが、水没作戦をするとリムくんの強化ができない。悩ましいが購入したおもちゃも使いたいから、しばらくは朝の日課で回収する魔物をリムくんの強化に回して、迷宮は圧縮訓練用に使わせてもらおう。
「地よ、生命を宿し、我が命を実行せよ《岩石兵》」
ゴーレムを十二体生み出し、四体一組の三隊を編成した。彼らは俺の代わりに迷宮に潜り、ドロップアイテムを回収する役目を担っている。もちろん宝箱の中身も回収する。
地図をつくってもらいたかたったけど、そこまで知能が高くないため諦めた。代わりに盾や戦鎚を持たせているから、溺死しなかっただろうゴーレム系魔物を殲滅してもらう。
「三隊の内、一隊が戦闘不能になったら撤退して戻るように!」
コクッと頷き、荷車を持ち上げ階段を降りていくゴーレムを見送った。
俺は今からモフモフたちとおもちゃパーティーだ! ヒャッホー!
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