BLゲームの脇役に転生したはずなのに

ジェミニside. 心を揺らした笑顔

ジェミニside.

なんだ、あの生き物は。

顔の熱がまだ下がらねぇ。
胸の鼓動も落ち着かない。

俺の名はジェミニ・アスター。
この星ヶ丘学園で教師をしている。
双子の兄は天才。俺は二番目。
比べられ、突き落とされ、必死に努力しても追いつけない。

その劣等感をごまかすように、仕事を抱え込んできた。
「鬼教師」と言われても構わなかった。忙しさだけが俺の価値を証明してくれる気がしていた。

――けれど。

『先生がいっつも頑張り過ぎなん、俺ら知ってます。たまには頼ってくださいね』

その一言で、全部が外れた。
胸の奥で何かが弾けた。

あいつはアリエス・シェスターク。
友達に囲まれて笑っているが、実際は人に流されやすい。……だから俺は、授業中の表情の変化に気付いていた。

今日のあいつは違った。
俺に向けて、真っ直ぐに自分の意見を言った。
俺にだけ、あの花が綻ぶみたいな笑顔を見せた。

（……惚れた。完全に）

生徒だろうが関係ない。
俺を救ってくれたのは、あいつしかいない。

アリエス。
無自覚で、天然タラシ。

絶対に手放さない。
絶対に両想いになってやる。

待ってろよ――。