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拾われた違和感
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ジェミニ先生と別れた後、身体にぞくりと寒気が走った。
夕暮れの風のせいか、それともさっきの出来事の余韻か。
俺は歩幅を速め、寮へと戻る。
寮の廊下に差しかかったところで、ラスが誰かと並んでいるのが見えた。
肩にかかる光に浮かぶのは、可愛らしい顔立ちの男子生徒。
ラスは軽く笑いかけ、部屋の前で立ち止まっている。
腐男子の血がざわつく。
胸の奥で「もっと見せてくれ」と騒いでいた。
けれど声に出すわけにはいかない。
口からこぼれたのは、ほんの軽い一言だった。
「……仲ええなぁ」
冗談みたいに聞こえる調子で。
本音は飲み込んだ。
ラスはちらりと俺を見た。
次の瞬間、隣の生徒の肩を軽く叩き、やんわりと帰してしまう。
(……あ、チャンス消えた)
ため息を飲み込む俺の前に、ラスが戻ってくる。
その顔はいつもの軽さが消えて、真っ直ぐだった。
「……アリー。今日のお前、なんか変だよ」
低い声に背筋が固まる。
言い訳は浮かばない。
確かに今日は、牧野ひろとしての癖をさらけ出しすぎた。
(俺、脇役やし。どうせ誰も気にせんやろ……って、油断してた)
けれどアリエスは“友達が多い脇役”だ。
だからこそ、小さな違和感も拾われる。ラスのように。
「……趣味に、ちょっとハマってもうただけや」
そう返すのが精一杯だった。
ラスはまだ疑いの色を浮かべたが、やがて息を吐き、肩をすくめる。
それ以上は追及してこなかった。
その緩さに救われて、俺は胸を撫で下ろす。
⸻
ベッドに横たわり、天井を見上げる。
(……シナリオ、揺らぎかけてる)
ゲームが始まる前。
ほんの一言、ほんの一振る舞いで、物語は変わってしまう。
脇役だからと油断すれば、主人公と攻略者を結ぶ橋が崩れる。
(……アリエスのポジ、思ったより危ないな)
だから決めた。
腐男子の性分は、当分は封じる。
主人公――シリウスが現れるその日まで、俺は“脇役”を演じ続ける。
半年の猶予がある。
それまでに整えればいい。
最高の観客席を、俺の手で確保する。
(……気長にいこか。俺のBLライフは、まだ始まったばかりや)
目を閉じると、廊下の向こうでラスの笑い声が遠く響いた気がした。
夕暮れの風のせいか、それともさっきの出来事の余韻か。
俺は歩幅を速め、寮へと戻る。
寮の廊下に差しかかったところで、ラスが誰かと並んでいるのが見えた。
肩にかかる光に浮かぶのは、可愛らしい顔立ちの男子生徒。
ラスは軽く笑いかけ、部屋の前で立ち止まっている。
腐男子の血がざわつく。
胸の奥で「もっと見せてくれ」と騒いでいた。
けれど声に出すわけにはいかない。
口からこぼれたのは、ほんの軽い一言だった。
「……仲ええなぁ」
冗談みたいに聞こえる調子で。
本音は飲み込んだ。
ラスはちらりと俺を見た。
次の瞬間、隣の生徒の肩を軽く叩き、やんわりと帰してしまう。
(……あ、チャンス消えた)
ため息を飲み込む俺の前に、ラスが戻ってくる。
その顔はいつもの軽さが消えて、真っ直ぐだった。
「……アリー。今日のお前、なんか変だよ」
低い声に背筋が固まる。
言い訳は浮かばない。
確かに今日は、牧野ひろとしての癖をさらけ出しすぎた。
(俺、脇役やし。どうせ誰も気にせんやろ……って、油断してた)
けれどアリエスは“友達が多い脇役”だ。
だからこそ、小さな違和感も拾われる。ラスのように。
「……趣味に、ちょっとハマってもうただけや」
そう返すのが精一杯だった。
ラスはまだ疑いの色を浮かべたが、やがて息を吐き、肩をすくめる。
それ以上は追及してこなかった。
その緩さに救われて、俺は胸を撫で下ろす。
⸻
ベッドに横たわり、天井を見上げる。
(……シナリオ、揺らぎかけてる)
ゲームが始まる前。
ほんの一言、ほんの一振る舞いで、物語は変わってしまう。
脇役だからと油断すれば、主人公と攻略者を結ぶ橋が崩れる。
(……アリエスのポジ、思ったより危ないな)
だから決めた。
腐男子の性分は、当分は封じる。
主人公――シリウスが現れるその日まで、俺は“脇役”を演じ続ける。
半年の猶予がある。
それまでに整えればいい。
最高の観客席を、俺の手で確保する。
(……気長にいこか。俺のBLライフは、まだ始まったばかりや)
目を閉じると、廊下の向こうでラスの笑い声が遠く響いた気がした。
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