運命の息吹

梅川 ノン

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9章

アレクシー再び父王に対峙する

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 三年の時が過ぎた。
「漸く判明したか、マイシーに離宮があったとは……中々分からなかったはずだ。もっと遠くだとばかり……」
「ああ、マイシーは盲点だった。あそこに離宮があるって知っている人間は少ない。それに考えたら、あまり遠くだと陛下も通えないだろ。それにしても大変だった。前にルシア様の事を調べた時よりはるかにね。なんせ今度は、母上の口もかたくてさ……」
「俺も、父上の緘口令がこれほど厳重なものとは思ってなかった。お前には苦労かけた、感謝する」
「えらく殊更だね、ちょっと気持ち悪いなあ……。それだけ国王の命令は重いってことだよ。たとえ姉と言えど逆らえない。で、どうするんだい?」
「勿論、直接出向いてルシアを番にして連れ帰る。そのために、居場所を探ったんだ」
「いきなり行って拉致るのか⁈」
「さすがにそういう卑劣な真似はしない。父上がいる時に行って、正々堂々と連れ帰る」
「だから、陛下が渡すわけないって、三年前のことで分かるだろう」
 フランソワは、少々呆れ気味に言う。なぜこの友は、ルシアの事になると物事を理論的に考えられないんだ?
 しかしアレクシーにも考えがあった。王太子の地位を引き換えに願うつもりでいた。これも、少々卑怯かもしれないが、それしかないと思っていた。
 そのためにこの三年努力してきた。アレクシーが王太子を辞意すれば、国に甚大な損失が出るほどに、王太子としての地位を盤石なものにしてきた。父も無視できないほどに。
「それは分かっている。俺は王太子の地位を掛ける」
 そうきたか……フランソワは、嘆息する。確かにアレクシーの存在感は、三年前と比べても格段と上がっていた。弟エドワードとは比べようにもないくらいに。アレクシーに替えてエドワードを王太子にと考える者は皆無だろう。エドワード本人も含めてだ。
 国王のアレクシーに対する評価もそうだろう。今や、誰もがアレクシーの廃太子は考えられない事になっている。国家の損失ともいえる。
 しかし、それで国王が引くのか? 簡単にはいくまい。まさか、血を見る争いに? フランソワは、少々の不安を感じる。もうここまで来たら一蓮托生、付き合うしかあるまい。いざとなったら身を呈して守らねばと思う。
「乗り掛かった舟だね、俺も一緒に行くよ」
 かくしてアレクシーは、フランソワと僅かな供回りを連れて、マイシーの離宮に向かった。むろん事前に国王も訪れていることを確認してのことだ。
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