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8章
アレクシーの焦燥・ルシアの悩み
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アレクシーは、王太子宮で静かに過ごしていた。それは、表向きのもので、心の内は焦燥を日々募らせていた。
アレクシーの当たって砕けろの精神は、華々しく砕けたといってよかった。
考えれば、父上の気持ちも分かる。番にして十二年慈しんできたオメガを、息子が運命の相手だから譲ってくれと言って、はいそうですかとはならないだろう。
しかし、諦める気持ちは皆無だった。どうしたらいいのか……。
焦燥を日々募らすアレクシーに、フランソワが新たな情報をもたらす。
「奥の宮から消えた⁈」
「ああ、多分どこかの離宮に隠されたんじゃないかな」
「離宮……どこだ?」
「かなり緘口令が厳しく敷かれているね。母上も知らないようだし」
「伯母上も……」
「母上から俺を通してお前に伝わるのを警戒しているからじゃないかな。母上も下手に関わりたくないと思っているみたいで、ルシア様の事はタブーになっている」
「じゃあ、どこへ行ったのか分からないのだな? 何とかできないか?」
「って、どうしても諦めないのか?」
「ああ、諦めない。忘れられないんだ」
フランソワは嘆息した。もう誰がなんと言えど、アレクシーは諦めないだろう。だったら、最後まで自分も見守るか、そう思った。
「わかったよ、お前の頑固さには負けたよ。簡単にはいかないから、時間はかかるけど、何とか探ってみるよ」
「ああ、お前には感謝するよ」
「お前に感謝されると、なんか気持ち悪いな」
「言ってろよ」
「ふふっ……で、お前はおとなしくしてろよ。その方がいい」
「ああ、俺もそう思っている。周囲には、俺は諦めておとなしくなったと思わせたい」
「それがいいね。母上にも、お前は諦めたと思うように働きかける。お前は、王妃様にもな」
今は闇雲に動いはいけない、時が過ぎるのを待つ、必要な布石を打ちながら。それがアレクシーの考えだったし、フランソワも同意した。
その後アレクシーは、ルシアのことなどなかったかのようにふるまった。
最初の頃は、訝しげに思う者もいたが、次第にそれが普通のことと思われるようになる。まさにアレクシーの狙い通りではあった。
一番安堵したのは、国王の側近達だった。国王と王太子の仲が良好なことは喜ばしい事だからだ。
国王フェリックスは、アレクシーの態度に安堵しつつも警戒は弱めなかった。ルシアは引き続き離宮に住まわせ、その事実も厳重に伏せられた。
やはり、重臣と言えどアレクシーの心の底は見えないが、フェリックスは、父親であるといえた。
ルシアの隠された離宮を突き止めることは難攻を極めた。それだけ国王の定めた緘口令の威力は大きかった。国王の力の大きさともいえた。
これほどの大きな存在に自分は対峙して、そして勝たねば運命の相手を番にできないのか? 慄く気持ちはあっても、引くことはできない。引いたら負けだ。負けることはできない。
アレクシー自身父王のことは、尊敬している。己もあのように立派な王になりたいと思っている。故に謀反とか、反逆することなど、一切考えていない。ただ、ルシアを番にしたい、それだけが望みだった。
ルシアは、今までにない体の奥の熱に悩まされていた。
離宮での生活自体は楽しいものだった。フェリックスも、奥の宮の時よりは間隔は空くが訪れてくれる。ルシアの発情も、把握して収めてくれる。
それなのに、体が熱い、体の奥が火照る。そして思い出すのは、ただ一度出会っただけのアレクシーだった。
最初の頃は、ルシアにとってアレクシーは、フェリックスの子供だった。それが段々とアレクシー単独になっていた。
番がいる身で他の男性を思うことにルシアは、一人慄いた。フェリックスに対する罪悪感は日ごとに高まる。
ルシアの心と体の状態は、運命の相手を求める本能からくるものだった。しかし、ルシアはそれを知らない。アレクシーが運命の相手との認識がなかった。
ルシアの悩みは、フェリックスに対する甘えとして発露された。
「兄上様、もうお帰りになるのですか?」
「ああ、今日は戻らねばならない。また来週は来るからな」
「昨日おいでになられたばかりなのに……」
そう言いながら抱きつくルシアに、フェリックスは嬉しいような困ったような気持ちになる。最近は度々こんなことがある。以前は聞き分けが良いルシアだった。時には我儘を言っても良いと思うくらいに。
何がルシアを変えた? そうすると、思い浮かぶのは運命の相手ということだった。フェリックスにとって、ルシアが運命の相手ではないという事実は弱みともいえた。
「どうした? もう一晩泊まって欲しいのか? よしよし分かった、もう一晩ここで過ごそう、それでよいな」
とびっきり甘い声で言うと、ルシアの抱きつく力も強まる。フェリックスはそのままルシアを抱き上げ寝室に連れて行く。
ルシアの心と体を満たしてやるのは、番たる己の役目。例え運命の相手と言えど、誰にも譲らない。
フェリックスは、圧倒的な力でルシアの体を攻め上げる。以前は優しく抱いていたが、今は激しさが増した。激しくルシアの体を貫くことで、運命と言う言葉を追い払うように……。
ルシアも、フェリックスの激しい攻めに翻弄されると、悩みをひと時忘れられる。自分は、この人の兄上様の者だと感じることで、フェリックスに対しての罪悪感も忘れられる。
アレクシーの当たって砕けろの精神は、華々しく砕けたといってよかった。
考えれば、父上の気持ちも分かる。番にして十二年慈しんできたオメガを、息子が運命の相手だから譲ってくれと言って、はいそうですかとはならないだろう。
しかし、諦める気持ちは皆無だった。どうしたらいいのか……。
焦燥を日々募らすアレクシーに、フランソワが新たな情報をもたらす。
「奥の宮から消えた⁈」
「ああ、多分どこかの離宮に隠されたんじゃないかな」
「離宮……どこだ?」
「かなり緘口令が厳しく敷かれているね。母上も知らないようだし」
「伯母上も……」
「母上から俺を通してお前に伝わるのを警戒しているからじゃないかな。母上も下手に関わりたくないと思っているみたいで、ルシア様の事はタブーになっている」
「じゃあ、どこへ行ったのか分からないのだな? 何とかできないか?」
「って、どうしても諦めないのか?」
「ああ、諦めない。忘れられないんだ」
フランソワは嘆息した。もう誰がなんと言えど、アレクシーは諦めないだろう。だったら、最後まで自分も見守るか、そう思った。
「わかったよ、お前の頑固さには負けたよ。簡単にはいかないから、時間はかかるけど、何とか探ってみるよ」
「ああ、お前には感謝するよ」
「お前に感謝されると、なんか気持ち悪いな」
「言ってろよ」
「ふふっ……で、お前はおとなしくしてろよ。その方がいい」
「ああ、俺もそう思っている。周囲には、俺は諦めておとなしくなったと思わせたい」
「それがいいね。母上にも、お前は諦めたと思うように働きかける。お前は、王妃様にもな」
今は闇雲に動いはいけない、時が過ぎるのを待つ、必要な布石を打ちながら。それがアレクシーの考えだったし、フランソワも同意した。
その後アレクシーは、ルシアのことなどなかったかのようにふるまった。
最初の頃は、訝しげに思う者もいたが、次第にそれが普通のことと思われるようになる。まさにアレクシーの狙い通りではあった。
一番安堵したのは、国王の側近達だった。国王と王太子の仲が良好なことは喜ばしい事だからだ。
国王フェリックスは、アレクシーの態度に安堵しつつも警戒は弱めなかった。ルシアは引き続き離宮に住まわせ、その事実も厳重に伏せられた。
やはり、重臣と言えどアレクシーの心の底は見えないが、フェリックスは、父親であるといえた。
ルシアの隠された離宮を突き止めることは難攻を極めた。それだけ国王の定めた緘口令の威力は大きかった。国王の力の大きさともいえた。
これほどの大きな存在に自分は対峙して、そして勝たねば運命の相手を番にできないのか? 慄く気持ちはあっても、引くことはできない。引いたら負けだ。負けることはできない。
アレクシー自身父王のことは、尊敬している。己もあのように立派な王になりたいと思っている。故に謀反とか、反逆することなど、一切考えていない。ただ、ルシアを番にしたい、それだけが望みだった。
ルシアは、今までにない体の奥の熱に悩まされていた。
離宮での生活自体は楽しいものだった。フェリックスも、奥の宮の時よりは間隔は空くが訪れてくれる。ルシアの発情も、把握して収めてくれる。
それなのに、体が熱い、体の奥が火照る。そして思い出すのは、ただ一度出会っただけのアレクシーだった。
最初の頃は、ルシアにとってアレクシーは、フェリックスの子供だった。それが段々とアレクシー単独になっていた。
番がいる身で他の男性を思うことにルシアは、一人慄いた。フェリックスに対する罪悪感は日ごとに高まる。
ルシアの心と体の状態は、運命の相手を求める本能からくるものだった。しかし、ルシアはそれを知らない。アレクシーが運命の相手との認識がなかった。
ルシアの悩みは、フェリックスに対する甘えとして発露された。
「兄上様、もうお帰りになるのですか?」
「ああ、今日は戻らねばならない。また来週は来るからな」
「昨日おいでになられたばかりなのに……」
そう言いながら抱きつくルシアに、フェリックスは嬉しいような困ったような気持ちになる。最近は度々こんなことがある。以前は聞き分けが良いルシアだった。時には我儘を言っても良いと思うくらいに。
何がルシアを変えた? そうすると、思い浮かぶのは運命の相手ということだった。フェリックスにとって、ルシアが運命の相手ではないという事実は弱みともいえた。
「どうした? もう一晩泊まって欲しいのか? よしよし分かった、もう一晩ここで過ごそう、それでよいな」
とびっきり甘い声で言うと、ルシアの抱きつく力も強まる。フェリックスはそのままルシアを抱き上げ寝室に連れて行く。
ルシアの心と体を満たしてやるのは、番たる己の役目。例え運命の相手と言えど、誰にも譲らない。
フェリックスは、圧倒的な力でルシアの体を攻め上げる。以前は優しく抱いていたが、今は激しさが増した。激しくルシアの体を貫くことで、運命と言う言葉を追い払うように……。
ルシアも、フェリックスの激しい攻めに翻弄されると、悩みをひと時忘れられる。自分は、この人の兄上様の者だと感じることで、フェリックスに対しての罪悪感も忘れられる。
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