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婚約破棄、大いに結構
二話 捨てられた令嬢、拾われる
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舞踏会の会場を後にし、私は静かに馬車へ向かった。
この後の流れは決まっている。家に帰れば、父は呆れたように溜息をつき、母は泣き崩れ、姉は冷たく笑うだろう。そして最後には「もうお前に公爵家の庇護はない」と追い出される――そういう筋書きだ。
(まあ、今さら期待なんてしてないし)
私は心の中で肩をすくめた。
実際、セシリア公爵家に生まれてはいても、私はずっと“余計な存在”だった。姉は才色兼備の令嬢として父の期待を一身に受け、私は比較されては「地味」「役に立たない」と言われ続けた。婚約が決まったときも、家族は「厄介払いができる」と安堵していたくらいだ。
だからこそ、婚約破棄された今、もう私に居場所はない。
……それなら。
「いっそ、この国を出るのもアリかな」
思わず口に出してしまった言葉に、私自身が驚く。
でも、決して悪くない考えだ。むしろ、ここに残っても惨めな未来しか待っていないなら、新しい人生を歩むのもいい。
私には――誰にも言わずに鍛え続けてきた魔法の才能がある。
公爵家の娘として「女性らしく」と求められた私は、社交も裁縫もダンスも苦手だった。でも、その代わりに魔法の素質があった。それを知ったとき、父は「貴族の娘に必要のない力だ」と私の魔法の教育を禁じた。
けれど、私は隠れて鍛え続けた。
誰にも気づかれぬように、こっそりと。
だから――この国を出れば、新しい道が開けるかもしれない。
そんなことを考えていたときだった。
「おい、そこのお嬢さん」
ふと、路地裏から声がかかった。
振り向くと、黒髪に琥珀色の瞳を持つ青年が壁に寄りかかっていた。
一目見て、普通の人ではないと分かる。洗練された身のこなし、鋭い目つき、そして隠しきれない戦士の雰囲気。
(傭兵……いや、それよりももっと高位の人間か)
私は無意識に魔力を探るが、彼の力は普通の人間のそれではなかった。
すると、彼は興味深げに目を細めた。
「ほう……なるほど。やっぱりただの令嬢じゃないな」
「……何のご用でしょう?」
警戒を滲ませながら問いかけると、彼は面白そうに笑った。
「別に。ただ、王宮の舞踏会で婚約破棄された令嬢が、こんな時間にひとりで歩いてるのが気になっただけさ」
「……噂になるのが早いんですね」
「まあな。王太子が派手に宣言したからな。すぐに国中の笑い話になるだろうさ」
ああ、そうだろう。想像するだけで気が滅入る。
でも、私は俯くことなく、ただ淡々と告げた。
「それで? 私に何かご用でしょうか?」
「そうだな……。お前、今の家に戻るつもりはないんだろ?」
「――どうしてそう思うのです?」
「顔を見れば分かる」
青年はさらりと言った。
私は少しだけ驚いた。こんな短い会話で、私の考えを見抜くとは。
「そうですね。戻るつもりはありません」
「なら、いい話がある」
「……聞きましょう」
彼はにやりと笑い、静かに告げた。
「――俺と一緒に来ないか? お前にぴったりの場所を知ってる」
この後の流れは決まっている。家に帰れば、父は呆れたように溜息をつき、母は泣き崩れ、姉は冷たく笑うだろう。そして最後には「もうお前に公爵家の庇護はない」と追い出される――そういう筋書きだ。
(まあ、今さら期待なんてしてないし)
私は心の中で肩をすくめた。
実際、セシリア公爵家に生まれてはいても、私はずっと“余計な存在”だった。姉は才色兼備の令嬢として父の期待を一身に受け、私は比較されては「地味」「役に立たない」と言われ続けた。婚約が決まったときも、家族は「厄介払いができる」と安堵していたくらいだ。
だからこそ、婚約破棄された今、もう私に居場所はない。
……それなら。
「いっそ、この国を出るのもアリかな」
思わず口に出してしまった言葉に、私自身が驚く。
でも、決して悪くない考えだ。むしろ、ここに残っても惨めな未来しか待っていないなら、新しい人生を歩むのもいい。
私には――誰にも言わずに鍛え続けてきた魔法の才能がある。
公爵家の娘として「女性らしく」と求められた私は、社交も裁縫もダンスも苦手だった。でも、その代わりに魔法の素質があった。それを知ったとき、父は「貴族の娘に必要のない力だ」と私の魔法の教育を禁じた。
けれど、私は隠れて鍛え続けた。
誰にも気づかれぬように、こっそりと。
だから――この国を出れば、新しい道が開けるかもしれない。
そんなことを考えていたときだった。
「おい、そこのお嬢さん」
ふと、路地裏から声がかかった。
振り向くと、黒髪に琥珀色の瞳を持つ青年が壁に寄りかかっていた。
一目見て、普通の人ではないと分かる。洗練された身のこなし、鋭い目つき、そして隠しきれない戦士の雰囲気。
(傭兵……いや、それよりももっと高位の人間か)
私は無意識に魔力を探るが、彼の力は普通の人間のそれではなかった。
すると、彼は興味深げに目を細めた。
「ほう……なるほど。やっぱりただの令嬢じゃないな」
「……何のご用でしょう?」
警戒を滲ませながら問いかけると、彼は面白そうに笑った。
「別に。ただ、王宮の舞踏会で婚約破棄された令嬢が、こんな時間にひとりで歩いてるのが気になっただけさ」
「……噂になるのが早いんですね」
「まあな。王太子が派手に宣言したからな。すぐに国中の笑い話になるだろうさ」
ああ、そうだろう。想像するだけで気が滅入る。
でも、私は俯くことなく、ただ淡々と告げた。
「それで? 私に何かご用でしょうか?」
「そうだな……。お前、今の家に戻るつもりはないんだろ?」
「――どうしてそう思うのです?」
「顔を見れば分かる」
青年はさらりと言った。
私は少しだけ驚いた。こんな短い会話で、私の考えを見抜くとは。
「そうですね。戻るつもりはありません」
「なら、いい話がある」
「……聞きましょう」
彼はにやりと笑い、静かに告げた。
「――俺と一緒に来ないか? お前にぴったりの場所を知ってる」
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