婚約破棄されたので、隠していた力を解放します

ミィタソ

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元婚約者様、ご機嫌いかが?

十六話 私はもう王宮の人間じゃない

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「……何者だ?」

 騎士の一人が、ライオットを警戒するように睨む。

 しかし、ライオットはそんな視線を軽く流しながら、面倒くさそうに言った。

「冒険者ギルド”蒼狼の牙”のリーダー、ライオットだ。まあ、俺の名前くらいは聞いたことあるだろ?」

「“蒼狼の牙”……!」

 騎士たちがざわめく。

 蒼狼の牙は、この王都でもトップクラスの実力を誇る冒険者パーティーだ。中でもライオットは、Sランクの実力者として知られている。

 彼を敵に回すのは、騎士たちにとっても得策ではない。

 案の定、騎士たちは露骨に動揺しながらも、強気な態度を崩さなかった。

「俺の仲間に手を出すってのは、どういうつもりだ?」

 ライオットが低く問いかけると、騎士たちは口ごもる。

「……セシリア・バートレイを、王宮へ連れ戻すよう命令を受けた。それだけだ」

「はあ? 連れ戻す? こいつはもう貴族じゃねえし、王宮とは無関係だろ」

「だが、第一王子殿下が――」

「アレクシス様がどうしたんです?」

 私は騎士の言葉を遮って問いかけた。

「殿下は、お前を王宮に戻すおつもりだ」

「だから、お断りしましたよね?」

「……だが、それでも殿下はお前を――」

「しつこいですね」

 私は呆れたようにため息をついた。

「私はもう貴族じゃない。王宮にも戻らない。それが私の決断です」

 騎士たちは明らかに困惑している。

 まあ、彼らもただ命令に従っているだけなのだろう。でも、だからといって、私の意思を無視して連れ戻そうとするのは許せない。

「それとも何ですか?」

 私は騎士たちに一歩近づいた。

「私はもう”王宮の人間”じゃないのに、力ずくで連れて行くおつもりですか?」

 その言葉に、騎士たちは一瞬躊躇った。

 すると、ライオットが肩をすくめながら言った。

「なあ、そろそろ諦めたらどうだ? セシリアはここで生きてるんだよ。王宮に戻る気なんざ、さらさらねえってさ」

「……くっ」

 騎士たちは悔しそうに唇を噛みしめたが、やがて諦めたように深いため息をついた。

「……分かった。だが、殿下にどう報告すればいいのか……」

「“本人の意思を尊重し、説得は不可能だった”って伝えればいいんじゃないですか?」

「……そうするしかないか」

 騎士たちはしぶしぶ引き下がり、王宮へと戻っていった。

 私はその背中を見送りながら、心の中で呆れたように思う。

(本当に、往生際の悪い人たちですね)

 それを察したのか、ライオットが苦笑した。

「まったく、お前は相変わらず厄介ごとを引き寄せるよな」

「私のせいじゃないんですけどね……」

 私は肩をすくめる。

「まあ、これで本当に王宮とは無関係になったわけだし、いいんじゃない?」

「……そうですね」

 王宮とはもう、何の関わりもない。

 それなのに――

 なぜか、胸の奥に微かな違和感が残るのだった。
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