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18.上には上がいるようです
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「ちなみに伯爵の弟を黙らせるのは感情的な理由だけではないのよ」
紅茶を上品に一口飲みアルマ姉さんが言う。
今年三十一歳になる彼女には十歳の子供がいる。
けれど私が子供の頃から変わらず美しい。このままずっと年を取らない気さえしてくる。
美人でしっかり者で最強の姉だ。
「そのラウルという男、マリアンが伯爵と離婚したらもっと騒がしくなるわ」
「それは……私に自分と再婚しろと迫ってくるってこと? 既に二回断り済みだけれど」
「一回断られても懲りないなら三回目もあるでしょうね。でもそれだけじゃないわ」
「それだけじゃない?」
「貴方が離婚した理由をあちらこちらで吹聴する可能性があるからよ。兄じゃなく自分を好きになったからだって」
姉さんに言われてラウルとの会話を思い出す。
彼がフェリクスの元婚約者たちに対して語っていたことを。
「確かに私にも兄の婚約者たちが自分を好きになってしまった。ただ優しくしてただけなのにって言っていたわ」
「その自慢話に今度は貴方も加わるのよ。兄の妻が自分を好きになってしまったって」
「嫌すぎる……名誉毀損で訴えられないかしら?」
「訴えて勝ってもその間に出回った噂は消えないわ。それにこちらが公爵家であちらが伯爵家なわけだから」
「うん、公爵家が権力で伯爵家を黙らせたと思われる可能性もあるわけだね」
私とアルマ姉さんの会話にリンツ兄さんが加わる。
身分の高さがマイナスに動く時があるのかと内心驚いた。
「騒ぐ前に圧力かける方法もあるけどマリアンの話を聞いた限りかなり鳥頭みたいだし」
「公爵家の人間の前では小さくなっても居なくなったらすぐ忘れて喋ってしまうってことか」
二人の会話を聞きながら私も口を開いた。
「それは多分……あるかも。あと彼って言われたことを自分に都合よく曲解するのよ」
「一番嫌なタイプね。物理的に舌を切るのが一番良さそう」
「それは最終手段にしようよ姉さん。フェリクスの弟はその自信を徹底的に壊せば大人しくなるんじゃないかな」
「自信ね……二十七歳出戻り無職なのに十九歳のマリアンに惚れられてると思い込む根拠って何かしら。謎過ぎるわ」
「私だけじゃなく女性は全員自分を好きになるものって考えているみたい」
「ってことは私に対しても勘違いするかもしれないってこと?嫌すぎる」
アルマ姉さんの言葉に私は曖昧に頷いた。
しかもラウルは三十歳のフェリクスのことをおじさんと馬鹿にしていた。
三十一歳の彼女に対しどんな暴言を吐くか分かったものではない。
それを告げていいか迷っていると、アルマ姉さんが閃いたように手を打った。
「ラウル・アンベール……思い出したわ! 確か貴族学校の初等部で絶世の美少年と騒がれていたわね」
「そうなの? 私はそこまででもないと思うけれど……」
確かにラウルの顔は整っていると思う。けれど絶世と言われると首を傾げてしまう。
どちらかといえばフェリクスの方が男性として魅力的な外見では無いだろうか。
そんな私に呆れたようにアルマ姉さんが言った。
「マリアン、カロルを美形の基準にしてたら何見ても芋よ」
「まあカロルに比べればな……そうだ、フェリクスの弟には俺とカロルで会いに行くよ」
そうすればマリアンが顔の良さで自分を選ぶことは無いと思い知るだろうから。
リンツ兄さんは名案を思い付いたように明るく言った。
紅茶を上品に一口飲みアルマ姉さんが言う。
今年三十一歳になる彼女には十歳の子供がいる。
けれど私が子供の頃から変わらず美しい。このままずっと年を取らない気さえしてくる。
美人でしっかり者で最強の姉だ。
「そのラウルという男、マリアンが伯爵と離婚したらもっと騒がしくなるわ」
「それは……私に自分と再婚しろと迫ってくるってこと? 既に二回断り済みだけれど」
「一回断られても懲りないなら三回目もあるでしょうね。でもそれだけじゃないわ」
「それだけじゃない?」
「貴方が離婚した理由をあちらこちらで吹聴する可能性があるからよ。兄じゃなく自分を好きになったからだって」
姉さんに言われてラウルとの会話を思い出す。
彼がフェリクスの元婚約者たちに対して語っていたことを。
「確かに私にも兄の婚約者たちが自分を好きになってしまった。ただ優しくしてただけなのにって言っていたわ」
「その自慢話に今度は貴方も加わるのよ。兄の妻が自分を好きになってしまったって」
「嫌すぎる……名誉毀損で訴えられないかしら?」
「訴えて勝ってもその間に出回った噂は消えないわ。それにこちらが公爵家であちらが伯爵家なわけだから」
「うん、公爵家が権力で伯爵家を黙らせたと思われる可能性もあるわけだね」
私とアルマ姉さんの会話にリンツ兄さんが加わる。
身分の高さがマイナスに動く時があるのかと内心驚いた。
「騒ぐ前に圧力かける方法もあるけどマリアンの話を聞いた限りかなり鳥頭みたいだし」
「公爵家の人間の前では小さくなっても居なくなったらすぐ忘れて喋ってしまうってことか」
二人の会話を聞きながら私も口を開いた。
「それは多分……あるかも。あと彼って言われたことを自分に都合よく曲解するのよ」
「一番嫌なタイプね。物理的に舌を切るのが一番良さそう」
「それは最終手段にしようよ姉さん。フェリクスの弟はその自信を徹底的に壊せば大人しくなるんじゃないかな」
「自信ね……二十七歳出戻り無職なのに十九歳のマリアンに惚れられてると思い込む根拠って何かしら。謎過ぎるわ」
「私だけじゃなく女性は全員自分を好きになるものって考えているみたい」
「ってことは私に対しても勘違いするかもしれないってこと?嫌すぎる」
アルマ姉さんの言葉に私は曖昧に頷いた。
しかもラウルは三十歳のフェリクスのことをおじさんと馬鹿にしていた。
三十一歳の彼女に対しどんな暴言を吐くか分かったものではない。
それを告げていいか迷っていると、アルマ姉さんが閃いたように手を打った。
「ラウル・アンベール……思い出したわ! 確か貴族学校の初等部で絶世の美少年と騒がれていたわね」
「そうなの? 私はそこまででもないと思うけれど……」
確かにラウルの顔は整っていると思う。けれど絶世と言われると首を傾げてしまう。
どちらかといえばフェリクスの方が男性として魅力的な外見では無いだろうか。
そんな私に呆れたようにアルマ姉さんが言った。
「マリアン、カロルを美形の基準にしてたら何見ても芋よ」
「まあカロルに比べればな……そうだ、フェリクスの弟には俺とカロルで会いに行くよ」
そうすればマリアンが顔の良さで自分を選ぶことは無いと思い知るだろうから。
リンツ兄さんは名案を思い付いたように明るく言った。
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