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19.女帝からの提案
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長兄と長姉が名案を思い付いたように楽し気にしている。
フェーヴル公爵家の次男。カロル・フェーブル。
今年二十五歳になる彼は美男美女揃いと言われるフェーブル家の中で現状一番の美男子だ。
私が通っていた貴族学校でも初等部から高等部まで彼のファンクラブめいたものがあった。カロル兄さんは何年も前に卒業しているというのに。
ラウルも顔は良いが、カロル兄さんと比べれば圧倒的に見劣りする。
二人は顔が取り柄のラウルに超絶美形のカロル兄さんを会わせることで自信を打ち砕くつもりらしい。
話を聞かないラウル相手にそこまで上手くいくだろうかと少し不安になった。
「でもカロル兄さんまで侮辱されるかもしれないわ。あの男の自己肯定感は多分この国で一番よ」
「大丈夫よ、その時は権力を使うから。カロルは嫌がらせ手段の一つに過ぎないわ」
アルマ姉さんが優雅に微笑む。
自分の知らないところで手段の一つに決定された次男に心の中で詫びた。
「それにカロルに話したら頼まなくても伯爵邸に突撃すると思うわ。マリアンを一番可愛がっていたし」
「フェリクスにマリアンが一目惚れした時も、同じ系統の顔なら絶対勝てるのにって悔しがっていたしな」
「寧ろリンツやカロルに見慣れたから逞しくて精悍な外見のアンベール伯爵にときめいたのじゃないかしら」
「一理ある。マリアンの次の縁談を探す時は父に頼んで男らしい容姿の青年を……」
話が変な方向に行きそうになり私は慌てて二人を止める。年が離れているせいかこの二人は時々私の親代わりみたいな発言をする。
まだ離婚もしていないのに新しい縁談とか気が早いなんてものじゃない。それに出戻った私にそんなすぐ縁談なんて来るだろうか。
「ちょっと待って、まだ私結婚しているのよ。それに離婚してすぐに縁談なんて……!」
「やあね、離婚してすぐ再婚とかあのお父様がさせる筈無いじゃない。娘には甘すぎるぐらい甘い人よ」
「それが今回は裏目に出た訳だが……確かに今は円満に離婚できることに尽力しよう」
「円満ねえ……リンツ、今からカロルたちに手紙を書いて出して頂戴。実家に集まるようにって」
「それはいいが……今からか? 父さんには?」
「ええ、今すぐよ。父さんたちにもお願い」
アルマ姉さんが柔らかくしかし有無を言わせない笑顔で命じる。
特に不満げな様子も無くリンツ兄さんは部屋から出て行った。
兄さんは次期公爵家当主だが姉さんは女帝の貫禄だ。結婚してから益々格が上がった気さえする。
二人きりになった室内で、アルマ姉さんは突然深呼吸した。
その行動に私にも緊張感が走る。何か重大なことを言われるか、もしくは真剣に叱られるかのどっちかだからだ。
そして今の私はどちらにも心当たりがある。
フェリクスの外見だけに惚れて結婚して、相手から冷たく扱われて出戻って来た形なのだから。
しっかり者の長姉にしてみればそんな頭の悪い末妹に説教なんてしてもし足りないだろう。
しかしアルマ姉さんは予想外の事を私に言った。
「ねえマリアン……貴方、白い結婚制度って知ってる?」
初耳だそんな制度。私は素直に首を振った。
フェーヴル公爵家の次男。カロル・フェーブル。
今年二十五歳になる彼は美男美女揃いと言われるフェーブル家の中で現状一番の美男子だ。
私が通っていた貴族学校でも初等部から高等部まで彼のファンクラブめいたものがあった。カロル兄さんは何年も前に卒業しているというのに。
ラウルも顔は良いが、カロル兄さんと比べれば圧倒的に見劣りする。
二人は顔が取り柄のラウルに超絶美形のカロル兄さんを会わせることで自信を打ち砕くつもりらしい。
話を聞かないラウル相手にそこまで上手くいくだろうかと少し不安になった。
「でもカロル兄さんまで侮辱されるかもしれないわ。あの男の自己肯定感は多分この国で一番よ」
「大丈夫よ、その時は権力を使うから。カロルは嫌がらせ手段の一つに過ぎないわ」
アルマ姉さんが優雅に微笑む。
自分の知らないところで手段の一つに決定された次男に心の中で詫びた。
「それにカロルに話したら頼まなくても伯爵邸に突撃すると思うわ。マリアンを一番可愛がっていたし」
「フェリクスにマリアンが一目惚れした時も、同じ系統の顔なら絶対勝てるのにって悔しがっていたしな」
「寧ろリンツやカロルに見慣れたから逞しくて精悍な外見のアンベール伯爵にときめいたのじゃないかしら」
「一理ある。マリアンの次の縁談を探す時は父に頼んで男らしい容姿の青年を……」
話が変な方向に行きそうになり私は慌てて二人を止める。年が離れているせいかこの二人は時々私の親代わりみたいな発言をする。
まだ離婚もしていないのに新しい縁談とか気が早いなんてものじゃない。それに出戻った私にそんなすぐ縁談なんて来るだろうか。
「ちょっと待って、まだ私結婚しているのよ。それに離婚してすぐに縁談なんて……!」
「やあね、離婚してすぐ再婚とかあのお父様がさせる筈無いじゃない。娘には甘すぎるぐらい甘い人よ」
「それが今回は裏目に出た訳だが……確かに今は円満に離婚できることに尽力しよう」
「円満ねえ……リンツ、今からカロルたちに手紙を書いて出して頂戴。実家に集まるようにって」
「それはいいが……今からか? 父さんには?」
「ええ、今すぐよ。父さんたちにもお願い」
アルマ姉さんが柔らかくしかし有無を言わせない笑顔で命じる。
特に不満げな様子も無くリンツ兄さんは部屋から出て行った。
兄さんは次期公爵家当主だが姉さんは女帝の貫禄だ。結婚してから益々格が上がった気さえする。
二人きりになった室内で、アルマ姉さんは突然深呼吸した。
その行動に私にも緊張感が走る。何か重大なことを言われるか、もしくは真剣に叱られるかのどっちかだからだ。
そして今の私はどちらにも心当たりがある。
フェリクスの外見だけに惚れて結婚して、相手から冷たく扱われて出戻って来た形なのだから。
しっかり者の長姉にしてみればそんな頭の悪い末妹に説教なんてしてもし足りないだろう。
しかしアルマ姉さんは予想外の事を私に言った。
「ねえマリアン……貴方、白い結婚制度って知ってる?」
初耳だそんな制度。私は素直に首を振った。
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