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第一部
49.
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外は予想していたよりもずっと暗くなっていた。
ガーデンライトポツポツと並んでいるがそれは正門までの通り道限定の様だ。
庭の方角には見当たらなかった。
夜に庭に行く用事など無さそうだから当然かもしれない。
(レオ……こんな暗がりを一人で歩こうとするかしら)
漫画内の彼は強気だが怖がりでもあった筈だ。
別荘に遊びに行った回でも怪談話を聞いて眠れなくなったのはロンではなくレオだった。
しかし妙に胸騒ぎがするのだ。
レオは漫画でも妙に要領が悪いというか、意地になって損をする行動ばかり取る。
そしてその悪癖はこの世界の彼も同じようだった。
(正門までの道には居なかった。屋内は使用人が捜しているし池も軽く見て帰ってくれば大丈夫よ)
私が屋敷の玄関前で考えていると扉がゆっくりと開く音がする。
「奥様、お待たせ致しました」
そう告げるカーヴェルの手にはゆらゆら光るカンテラが二つあった。
多分、一つは私の物だろう。
「大丈夫よ」
手を伸ばしてカンテラを受け取る。
前世で息子たちと行ったキャンプを思い出した。
あの時はワクワクしたが今は悪い意味でドキドキしている。
「じゃあ行きましょう」
そう告げて庭へと歩き出す。しかしそれと同時に扉が再び開く。
「お待ちください」
言葉と共に姿を見せたのは黒髪のメイドだった。
「アイリ?」
「夜は冷えますので、コートをお持ち致しました」
そう告げると彼女は私に持っていたコートを着せる。
途端、薔薇の香りが鼻を刺した。
(これ、異母姉のお下がりね……)
ドレスと違い品自体は問題無かったが、薔薇の香りが強烈で着られたものではなかった。
香水瓶の中身をそのままぶちまけたのかもしれない。
なので公爵夫人室の隅にかけて窓を開けつつ匂い飛ばしとルームフレグランス代わりにしていたのだ。
アイリはそれを持って来てくれたのだろう。
そこまで寒さは感じていなかったが身に着けた途端ホッとするような温もりを感じた。
匂いも大分薄くなっている。
「有難う、とても暖かいわ」
私は微笑んで礼を言う。そしてカンテラを手に取ると庭へと再び歩き出した。
しかし何故かアイリもついてくる。良く見たらしっかりカンテラを持っていた。
付いてきてくれるなら追い返す理由も無い。
本当はホルガーたちのところに居て貰っても良いのだが、夜道は予想以上に私を心細くさせていた。
三人で姿が確認できる程度の距離を取りながら歩いていく。
定期的に立ち止まってレオが居ないか確認しながらだ。
丁度いい機会だと思い私はアイリに告げた。
「アイリ、正式に私付きのメイド……いえ、侍女になって貰って良いかしら」
「誠心誠意努めさせて頂きます」
「カーヴェル、そういうことになるわ」
「かしこまりました、では役職の変更手続きはこちらで致します」
「そういえばアイリは清掃担当だから代わりが必要ね」
私にも侍女が早急に必要だが清掃部門も急に一人いなくなるのは困るだろう。
カーヴェルは少し考えた後言った。
「そうですね。レオ様付きのメイドから一人清掃担当に戻せればいいのですが」
「えっ、あの中に清掃担当のメイドがいたの?」
私はレオの子供部屋で見たメイドたちの醜態を思い出す。
「はい、結婚式の少し前に四人辞職しております。その補充を清掃含め別の部署からしたとのことですので」
「つまり、今レオ君のお世話係の人数は」
「現在は七名ですね」
父からの引継ぎで聞きました。カーヴェルの言葉に私は色々な意味で絶句する。
大量に辞めすぎだろうという呆れと、レオのお世話係に七人も必要かという気持ちと、清掃担当が居たとは思えない子供部屋の惨状への疑問。
「……時期的に公爵様と私の結婚が理由かしら?」
「恐らくそうだと思います。辞職したメイドたちは全員貴族出身の淑女たちですので」
「成程、私みたいな人間を奥様扱いしたくないってことね」
マーベラ夫人の態度とメイドの娘の癖にという言葉を思い出しながら溜息を吐く。
あんな風に暴れられるよりは会う前に辞めて貰った方がまだマシかとは思った。
しかしカーヴェルは静かに首を振る。
「いいえ、彼女たちが屋敷から去ったのは恐らく公爵様が結婚されたからです。相手が誰かは特に重要ではないかと」
私は彼の発言に何が違うのかと思い、少し考えて出た結論を口にした。
「……もしかして、辞めたメイドたちは公爵夫人の座を狙っていたってことかしら?」
「年齢と家柄と……大体三女以下の方たちですね。それと辞職理由が揃えたように家の都合でしたので」
「それは……もしかしてお手付きを望んでいたってことかしら」
「本人か家長の意思かはわかりかねますが」
オルソン伯爵に無理やり手籠めにされた母親のことを考えると複雑な気持ちになった。
しかしメイドと結婚した貴族がいることはマーベラ夫人の件で既に知っている。
そこまでケビンなんかと結婚したいのかと突っ込みたくなったが、カーヴェルの言う通り親の命令かもしれない。
上手くいけば公爵夫人か公爵の愛人になれるのだから。
「成程ね。でも私、レオ君のお世話係って七人も要らないと思うのよ」
「同感です」
「ロン君は侍女が一人だけだし。寧ろあちらに補充したいわね。それに私付きの侍女も二人欲しいわ」
マーサとかちゃんと休めているのだろうかと思う。
最低二人いれば交代で休日も取れるだろう。
「かしこまりました。使用人の調整と補充をまず行った方が宜しいですね」
「レオ君の部屋に行った時に一応働いていたメイドは一人だけ。三人はお菓子を食べて笑っていて侍女長は入浴中とのことだったわ」
「入浴中……ですか、この時間に?」
「レオ君が花瓶の水をかけたかららしいけれど。人手は寧ろ余っていて、だから遊んでいた印象ね」
もしお世話係の人員削減に文句を言われたらそのエピソードを使って頂戴。
私はカーヴェルにそう告げた。
ガーデンライトポツポツと並んでいるがそれは正門までの通り道限定の様だ。
庭の方角には見当たらなかった。
夜に庭に行く用事など無さそうだから当然かもしれない。
(レオ……こんな暗がりを一人で歩こうとするかしら)
漫画内の彼は強気だが怖がりでもあった筈だ。
別荘に遊びに行った回でも怪談話を聞いて眠れなくなったのはロンではなくレオだった。
しかし妙に胸騒ぎがするのだ。
レオは漫画でも妙に要領が悪いというか、意地になって損をする行動ばかり取る。
そしてその悪癖はこの世界の彼も同じようだった。
(正門までの道には居なかった。屋内は使用人が捜しているし池も軽く見て帰ってくれば大丈夫よ)
私が屋敷の玄関前で考えていると扉がゆっくりと開く音がする。
「奥様、お待たせ致しました」
そう告げるカーヴェルの手にはゆらゆら光るカンテラが二つあった。
多分、一つは私の物だろう。
「大丈夫よ」
手を伸ばしてカンテラを受け取る。
前世で息子たちと行ったキャンプを思い出した。
あの時はワクワクしたが今は悪い意味でドキドキしている。
「じゃあ行きましょう」
そう告げて庭へと歩き出す。しかしそれと同時に扉が再び開く。
「お待ちください」
言葉と共に姿を見せたのは黒髪のメイドだった。
「アイリ?」
「夜は冷えますので、コートをお持ち致しました」
そう告げると彼女は私に持っていたコートを着せる。
途端、薔薇の香りが鼻を刺した。
(これ、異母姉のお下がりね……)
ドレスと違い品自体は問題無かったが、薔薇の香りが強烈で着られたものではなかった。
香水瓶の中身をそのままぶちまけたのかもしれない。
なので公爵夫人室の隅にかけて窓を開けつつ匂い飛ばしとルームフレグランス代わりにしていたのだ。
アイリはそれを持って来てくれたのだろう。
そこまで寒さは感じていなかったが身に着けた途端ホッとするような温もりを感じた。
匂いも大分薄くなっている。
「有難う、とても暖かいわ」
私は微笑んで礼を言う。そしてカンテラを手に取ると庭へと再び歩き出した。
しかし何故かアイリもついてくる。良く見たらしっかりカンテラを持っていた。
付いてきてくれるなら追い返す理由も無い。
本当はホルガーたちのところに居て貰っても良いのだが、夜道は予想以上に私を心細くさせていた。
三人で姿が確認できる程度の距離を取りながら歩いていく。
定期的に立ち止まってレオが居ないか確認しながらだ。
丁度いい機会だと思い私はアイリに告げた。
「アイリ、正式に私付きのメイド……いえ、侍女になって貰って良いかしら」
「誠心誠意努めさせて頂きます」
「カーヴェル、そういうことになるわ」
「かしこまりました、では役職の変更手続きはこちらで致します」
「そういえばアイリは清掃担当だから代わりが必要ね」
私にも侍女が早急に必要だが清掃部門も急に一人いなくなるのは困るだろう。
カーヴェルは少し考えた後言った。
「そうですね。レオ様付きのメイドから一人清掃担当に戻せればいいのですが」
「えっ、あの中に清掃担当のメイドがいたの?」
私はレオの子供部屋で見たメイドたちの醜態を思い出す。
「はい、結婚式の少し前に四人辞職しております。その補充を清掃含め別の部署からしたとのことですので」
「つまり、今レオ君のお世話係の人数は」
「現在は七名ですね」
父からの引継ぎで聞きました。カーヴェルの言葉に私は色々な意味で絶句する。
大量に辞めすぎだろうという呆れと、レオのお世話係に七人も必要かという気持ちと、清掃担当が居たとは思えない子供部屋の惨状への疑問。
「……時期的に公爵様と私の結婚が理由かしら?」
「恐らくそうだと思います。辞職したメイドたちは全員貴族出身の淑女たちですので」
「成程、私みたいな人間を奥様扱いしたくないってことね」
マーベラ夫人の態度とメイドの娘の癖にという言葉を思い出しながら溜息を吐く。
あんな風に暴れられるよりは会う前に辞めて貰った方がまだマシかとは思った。
しかしカーヴェルは静かに首を振る。
「いいえ、彼女たちが屋敷から去ったのは恐らく公爵様が結婚されたからです。相手が誰かは特に重要ではないかと」
私は彼の発言に何が違うのかと思い、少し考えて出た結論を口にした。
「……もしかして、辞めたメイドたちは公爵夫人の座を狙っていたってことかしら?」
「年齢と家柄と……大体三女以下の方たちですね。それと辞職理由が揃えたように家の都合でしたので」
「それは……もしかしてお手付きを望んでいたってことかしら」
「本人か家長の意思かはわかりかねますが」
オルソン伯爵に無理やり手籠めにされた母親のことを考えると複雑な気持ちになった。
しかしメイドと結婚した貴族がいることはマーベラ夫人の件で既に知っている。
そこまでケビンなんかと結婚したいのかと突っ込みたくなったが、カーヴェルの言う通り親の命令かもしれない。
上手くいけば公爵夫人か公爵の愛人になれるのだから。
「成程ね。でも私、レオ君のお世話係って七人も要らないと思うのよ」
「同感です」
「ロン君は侍女が一人だけだし。寧ろあちらに補充したいわね。それに私付きの侍女も二人欲しいわ」
マーサとかちゃんと休めているのだろうかと思う。
最低二人いれば交代で休日も取れるだろう。
「かしこまりました。使用人の調整と補充をまず行った方が宜しいですね」
「レオ君の部屋に行った時に一応働いていたメイドは一人だけ。三人はお菓子を食べて笑っていて侍女長は入浴中とのことだったわ」
「入浴中……ですか、この時間に?」
「レオ君が花瓶の水をかけたかららしいけれど。人手は寧ろ余っていて、だから遊んでいた印象ね」
もしお世話係の人員削減に文句を言われたらそのエピソードを使って頂戴。
私はカーヴェルにそう告げた。
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