91 / 106
第二部
4.
しおりを挟む
「君の異母姉だけど、結婚相手探しに奮闘しているらしいね」
「えっ」
予想外の事を言われて私は素直に驚く。
ローズが結婚したがってるというのが初耳だし、それをレインが知っていることも意外だった。
「先日私が仕事で王都に行ったことは知っているだろう?」
「ええ」
レインには抱えている患者が数名いて、定期的に訪問診療をする必要がある。
それは屋敷にお抱え医師として招く際に説明を受けたし私も承諾していた。
(王都にわざわざ呼び寄せるなんて余程レインを頼りにしているのね)
もしくは女医という存在を求めているのか。
患者の情報については当然だが詳しく聞かされていないので全ては想像でしかない。
ただ王都という場所は気になる。
原作でレインが突然結婚する相手がこの国の第二王子だからだ。
そして王子ならは恐らく王都に定住している筈。
実際「一輪の花は氷を溶かす」の中でケビンと第二王子クリスが語り合う場面は王都の邸宅や酒場が多かった。
レインと第二王子が現時点でどれぐらい親密なのかはわからないが顔見知りではあるだろう。
(現時点でクリスが彼女へ恋情を伝えているとは思えないけれど)
そんなことを考えながらレインの話を聞く。
「患者から世間話の流れで君とケビンの結婚について聞かれたんだ。変な事は話して無いから安心して欲しい」
「そう、有難う。異母姉の話はその流れで?」
そもそも私とケビンの結婚自体が変な事ではと思ったが黙っておいた。
「ああ、どちらかというと寧ろそちらが本命のようだった。あちらこちらに声掛けして婿探しをしているらしい」
「まあ……」
今更焦るのかという言葉も飲み込む。
異母姉のローズは今年二十四になる。前世なら結婚に焦る年齢では全く無い。
ただこの国では二十歳過ぎて未婚の女性はその「理由」が求められがちだ。
少なくとも貴族や裕福な女性がその年齢で結婚しないのは異常なのだ。
前世の感覚なら余計なお世話だと思うが、この世界で生きてきた異母姉のローズがそれを知らない筈は無い
「年齢を聞いたら私と同じ年らしくてね。私はやっと周囲から結婚しろと一切言われなくなったのにと同情したな」
「レイン先生は結婚願望をお持ちでは無いので」
「そうだね。私には兄も甥もいるし手に職はあるし、無理に結婚はしなくていいかなって」
私なんて娶りたい相手もいないだろうしね。そう男装の麗人は笑う。
いや第二王子に執心されてますけどと言いたくなったが唇を引き結んだ。
「クリス……いや、飲み友達にも君に結婚は無理だって言われてるしね」
「えっ」
「私は背が高い上に華奢では無いが貧弱な体型で女性的魅力に欠けているかららしい」
「そんな……」
「いや、ここまでストレートに言われたわけではないよ。それに確かに指摘通りだし」
レインはそう説明するが私は別に結婚が無理という言葉に驚いた訳ではない。
その発言をした男が第二王子クリスだということに驚愕してるのだ。
「レイン先生はすらりとしてスタイルも良いし誰が見ても美人よ」
確かに彼女は周囲の女性に比べれば背が高いがケビンやカーヴェルよりは低い。
それに男装しているから男性に間違われやすいだけだ。この国でズボンを履く女性自体が滅多にいない。
ドレスを纏い着飾れば間違いなく美女になる。私はそれを知っている。
更に原作で彼女を着飾らせたクリスが知らない訳が無いのだ。
「有難う、でもそれは女性目線だからだろうね。それに結婚願望は無いから別に構わないんだ」
話題を断ち切るようにレインは笑う。そう言われるとこれ以上話を続ける訳にはいかない。
ただ私の中のクリスの評価か下がったのは確かだった。
レインはケビンにずっと片思いしていたから、その思いを断ち切る為にクリスは画策していたのだと考えていた。
けれどそれだけでなくレインに対し女性的で無いと言い続けていたとしたなら。
(レインを誰にも取られたくなかったのか、照れ隠しなのかわからないけれど……どっちにしろ最低だわ)
もしかしたら今のクリスはレインを女性として意識しておらず何かの拍子に突然惚れる展開なのかもしれない。
だとしてもクリスとレインをお似合いだと無邪気に喜ぶ気持ちにはなれない。
(でもレインとクリスが飲み友達だったなんて初めて知ったわ)
そんな気安い関係ならレインと接触してもおかしくはない。
彼女が王都に行った後は変わったところが無いか観察しなければいけない。
「……そう。レイン先生、王都に行く時は教えて頂いていいですか」
「構わないけれど、どうしてだい?」
「子供たちにお土産をお願いしたくて。勿論お金は支払いますので」
「成程、エリカ嬢は優しいね」
私は笑顔でレインに頼む。彼女は疑いもせず承諾した。
(レインを屋敷に招いて良かったわね。スケジュールを知りやすいもの)
彼女には既に色々助けて貰っている。
私に影響のない出来事だったとしても、不幸な結末にならないよう気を配るのは当然に思えた。
「えっ」
予想外の事を言われて私は素直に驚く。
ローズが結婚したがってるというのが初耳だし、それをレインが知っていることも意外だった。
「先日私が仕事で王都に行ったことは知っているだろう?」
「ええ」
レインには抱えている患者が数名いて、定期的に訪問診療をする必要がある。
それは屋敷にお抱え医師として招く際に説明を受けたし私も承諾していた。
(王都にわざわざ呼び寄せるなんて余程レインを頼りにしているのね)
もしくは女医という存在を求めているのか。
患者の情報については当然だが詳しく聞かされていないので全ては想像でしかない。
ただ王都という場所は気になる。
原作でレインが突然結婚する相手がこの国の第二王子だからだ。
そして王子ならは恐らく王都に定住している筈。
実際「一輪の花は氷を溶かす」の中でケビンと第二王子クリスが語り合う場面は王都の邸宅や酒場が多かった。
レインと第二王子が現時点でどれぐらい親密なのかはわからないが顔見知りではあるだろう。
(現時点でクリスが彼女へ恋情を伝えているとは思えないけれど)
そんなことを考えながらレインの話を聞く。
「患者から世間話の流れで君とケビンの結婚について聞かれたんだ。変な事は話して無いから安心して欲しい」
「そう、有難う。異母姉の話はその流れで?」
そもそも私とケビンの結婚自体が変な事ではと思ったが黙っておいた。
「ああ、どちらかというと寧ろそちらが本命のようだった。あちらこちらに声掛けして婿探しをしているらしい」
「まあ……」
今更焦るのかという言葉も飲み込む。
異母姉のローズは今年二十四になる。前世なら結婚に焦る年齢では全く無い。
ただこの国では二十歳過ぎて未婚の女性はその「理由」が求められがちだ。
少なくとも貴族や裕福な女性がその年齢で結婚しないのは異常なのだ。
前世の感覚なら余計なお世話だと思うが、この世界で生きてきた異母姉のローズがそれを知らない筈は無い
「年齢を聞いたら私と同じ年らしくてね。私はやっと周囲から結婚しろと一切言われなくなったのにと同情したな」
「レイン先生は結婚願望をお持ちでは無いので」
「そうだね。私には兄も甥もいるし手に職はあるし、無理に結婚はしなくていいかなって」
私なんて娶りたい相手もいないだろうしね。そう男装の麗人は笑う。
いや第二王子に執心されてますけどと言いたくなったが唇を引き結んだ。
「クリス……いや、飲み友達にも君に結婚は無理だって言われてるしね」
「えっ」
「私は背が高い上に華奢では無いが貧弱な体型で女性的魅力に欠けているかららしい」
「そんな……」
「いや、ここまでストレートに言われたわけではないよ。それに確かに指摘通りだし」
レインはそう説明するが私は別に結婚が無理という言葉に驚いた訳ではない。
その発言をした男が第二王子クリスだということに驚愕してるのだ。
「レイン先生はすらりとしてスタイルも良いし誰が見ても美人よ」
確かに彼女は周囲の女性に比べれば背が高いがケビンやカーヴェルよりは低い。
それに男装しているから男性に間違われやすいだけだ。この国でズボンを履く女性自体が滅多にいない。
ドレスを纏い着飾れば間違いなく美女になる。私はそれを知っている。
更に原作で彼女を着飾らせたクリスが知らない訳が無いのだ。
「有難う、でもそれは女性目線だからだろうね。それに結婚願望は無いから別に構わないんだ」
話題を断ち切るようにレインは笑う。そう言われるとこれ以上話を続ける訳にはいかない。
ただ私の中のクリスの評価か下がったのは確かだった。
レインはケビンにずっと片思いしていたから、その思いを断ち切る為にクリスは画策していたのだと考えていた。
けれどそれだけでなくレインに対し女性的で無いと言い続けていたとしたなら。
(レインを誰にも取られたくなかったのか、照れ隠しなのかわからないけれど……どっちにしろ最低だわ)
もしかしたら今のクリスはレインを女性として意識しておらず何かの拍子に突然惚れる展開なのかもしれない。
だとしてもクリスとレインをお似合いだと無邪気に喜ぶ気持ちにはなれない。
(でもレインとクリスが飲み友達だったなんて初めて知ったわ)
そんな気安い関係ならレインと接触してもおかしくはない。
彼女が王都に行った後は変わったところが無いか観察しなければいけない。
「……そう。レイン先生、王都に行く時は教えて頂いていいですか」
「構わないけれど、どうしてだい?」
「子供たちにお土産をお願いしたくて。勿論お金は支払いますので」
「成程、エリカ嬢は優しいね」
私は笑顔でレインに頼む。彼女は疑いもせず承諾した。
(レインを屋敷に招いて良かったわね。スケジュールを知りやすいもの)
彼女には既に色々助けて貰っている。
私に影響のない出来事だったとしても、不幸な結末にならないよう気を配るのは当然に思えた。
1,360
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
なぜ、私に関係あるのかしら?
シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」
彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。
そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。
「…レオンハルト・トレヴァントだ」
非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。
そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。
「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」
この判断によって、どうなるかなども考えずに…
※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。
※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、
※ 画像はAIにて作成しております
『外見しか見なかったあなたへ。私はもう、選ぶ側です』
鷹 綾
恋愛
「お前のようなガキは嫌いだ」
幼く見える容姿を理由に、婚約者ライオネルから一方的に婚約を破棄された
公爵令嬢シルフィーネ・エルフィンベルク。
その夜、嫉妬に狂った伯爵令嬢に突き落とされ、
彼女は一年もの間、意識不明の重体に陥る――。
目を覚ました彼女は、大人びた美貌を手に入れていた。
だが、中身は何ひとつ変わっていない。
にもかかわらず、
かつて彼女を「幼すぎる」と切り捨てた元婚約者は態度を一変させ、
「やり直したい」とすり寄ってくる。
「見かけが変わっても、中身は同じです。
それでもあなたは、私の外見しか見ていなかったのですね?」
静かにそう告げ、シルフィーネは過去を見限る。
やがて彼女に興味を示したのは、
隣国ノルディアの王太子エドワルド。
彼が見ていたのは、美貌ではなく――
対話し、考え、異論を述べる彼女の“在り方”だった。
これは、
外見で価値を決められた令嬢が、
「選ばれる人生」をやめ、
自分の意思で未来を選び直す物語。
静かなざまぁと、
対等な関係から始まる大人の恋。
そして――
自分の人生を、自分の言葉で生きるための物語。
---
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
頑張らない政略結婚
ひろか
恋愛
「これは政略結婚だ。私は君を愛することはないし、触れる気もない」
結婚式の直前、夫となるセルシオ様からの言葉です。
好きにしろと、君も愛人をつくれと。君も、もって言いましたわ。
ええ、好きにしますわ、私も愛する人を想い続けますわ!
五話完結、毎日更新
いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!
夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。
しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。
ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。
愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。
いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。
一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ!
世界観はゆるいです!
カクヨム様にも投稿しております。
※10万文字を超えたので長編に変更しました。
婚約者様への逆襲です。
有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。
理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。
だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。
――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」
すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。
そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。
これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。
断罪は終わりではなく、始まりだった。
“信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。
悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません
れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。
「…私、間違ってませんわね」
曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話
…だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている…
5/13
ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます
5/22
修正完了しました。明日から通常更新に戻ります
9/21
完結しました
また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる