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第二部
5.
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その後少し会話をしてレインとは別れた。
彼女が言うにはエリカの異母姉であるローズは今大々的に婿探しをしているらしい。
厳密には彼女自身ではなくその母のオルソン伯爵夫人がだ。
しかし地元では相手が見つからず親戚にも適任がいない。
なので王都で貴族間の仲人役を多々している貴婦人に依頼したのではという話だった。
けれどローズは地元だけでなく王都でも男遊びをしていた。
その為相手が見つからないどころか男たちの笑いものになっているという有様だ。
正直異母姉もだが笑っている男達にも関わり合いたくない。
邪推だけれどその男連中もローズと一度ぐらい遊んでいそうだった。
その上で彼らが既に結婚していても自分たちはまだ大丈夫と考えていても不快感は有る。
異母姉が結婚しようが独身を貫こうがどうでもいい。
しかしそう言えないのが血のつながりというものだろうか。
(前世の記憶を思い出した瞬間に完全に他人になれたならよかったのに)
虐待された記憶はあるし人間的にローズは嫌いだが、関わり合いになりたくないという気持ちが強い。
今の様に物事がある程度順調に進んでいるのなら尚更だ。
けれど向こうはそう思っていないからしつこく手紙を寄越す。
(私が表面上は問題無くアベニウス公爵夫人をやり続けている、それだけの理由で)
もし私がケビンに拒否され公爵邸を追い出されたなら決して関わろうとはしないだろう。
伯爵家に戻ることもきっと許されない。
そして今の私の地位を利用しようとしているのは異母姉のローズだけではない。
オルソン伯爵夫人もだ。
どうやらローズとの結婚に対し「妹がアベニウス公爵夫人」「今ならアベニウス公爵家と縁続きになれる」というメリットを向こうに提示しているらしいのだ。
レインはこの部分を心配して私に報せてくれた。
オルソン伯爵夫人が私やケビンに話を通しているのかと。当然そんなことはなく私は苦笑いで首を振るしか無かった。
ケビンにも一応手紙で報告はしておいた方が良いだろう。お前の家の事はお前が解決しろと帰ってきそうだが。
(アベニウス公爵家と縁続き……そこまでなりたいものかしら)
確かに古くからある名門公爵家でケビンは王家と懇意にしているし何も知らなければ華々しい家系に思えるかもしれない。
ただローズが飽きもせず私に手紙を送りつけている事からそこまで効果てきめんでは無いと思えた。
大体ケビンは私と離婚する予定なのだ。そんな不安定な地位を目当てに婿に来られても困る。
だからこそオルソン伯爵夫人は実娘の結婚に焦っているのかもしれない。私が捨てられれば公爵家の名前を使えなくなるから。
(焦って上手く行くことなんて何も無いのに)
そしてローズの結婚に焦るならもっと前から焦るべきだと思う。
恐らく彼女は同年代の貴族たちから若い娘として扱われていない。そして若くて美しい貴族の娘なら他にもいるのだ。
次期女伯爵の婿という立場に魅力を感じる次男以下はいるだろうけれど、ローズの気性と男好きにどこまで耐えられるのだろうか。
一番良いのはローズが心底惚れた男性に婿へ来て貰う事だろうけれど、多分それが一番難しかった。
きっと私と似たような立場の弱い独身男性が最終的に婿になるのだろう。
そんなことを考えているとロンの部屋に到着する。
戸を軽く叩き名乗るとすぐドアが開いた。
「ようこそいらっしゃいました」
ロン付き侍女のマーサが私にお辞儀をする。それに会釈で返した。
「エリカ姉様、来てくれてありがとう」
ロンが奥から出て来る。控えめな笑顔を浮かべる彼に私も笑顔を返した。
「今日はロン君が描いた絵を見せてくれるのよね、楽しみにしていたわ」
「うん、でも、今見直したらそこまで上手くないかも……」
私の言葉に不安そうになる彼の頭を撫でる。
「そんなことは考えなくていいの、私はロン君の絵を見に来たのだから」
そう言うと彼はホッとした顔になった。
「そっか、そうだよね。売り物にするわけじゃないし」
ロンは安堵した表情になったがその言葉に私は引っかかった。
なんというか、八歳の子供が自分の作品に対してそうコメントするのに違和感を覚えたのだ。
(まあ感性なんて人それぞれだけれど……)
ただ私が彼と同じ年でお絵描きや工作遊びをしていた時、売り物になるかなんて考えた覚えはない。
ロンがしっかりとしているということだろうか。
(もっと子供らしくあって欲しいというのは、私の我儘かしら)
上手な返しが思いつかず、そうねと無難に返事をする。
ロンは無邪気な笑顔になって私を部屋の奥に招く。
何気なくマーサの顔を見る。彼女は少し寂し気な微笑みを浮かべて私を見ていた。
彼女が言うにはエリカの異母姉であるローズは今大々的に婿探しをしているらしい。
厳密には彼女自身ではなくその母のオルソン伯爵夫人がだ。
しかし地元では相手が見つからず親戚にも適任がいない。
なので王都で貴族間の仲人役を多々している貴婦人に依頼したのではという話だった。
けれどローズは地元だけでなく王都でも男遊びをしていた。
その為相手が見つからないどころか男たちの笑いものになっているという有様だ。
正直異母姉もだが笑っている男達にも関わり合いたくない。
邪推だけれどその男連中もローズと一度ぐらい遊んでいそうだった。
その上で彼らが既に結婚していても自分たちはまだ大丈夫と考えていても不快感は有る。
異母姉が結婚しようが独身を貫こうがどうでもいい。
しかしそう言えないのが血のつながりというものだろうか。
(前世の記憶を思い出した瞬間に完全に他人になれたならよかったのに)
虐待された記憶はあるし人間的にローズは嫌いだが、関わり合いになりたくないという気持ちが強い。
今の様に物事がある程度順調に進んでいるのなら尚更だ。
けれど向こうはそう思っていないからしつこく手紙を寄越す。
(私が表面上は問題無くアベニウス公爵夫人をやり続けている、それだけの理由で)
もし私がケビンに拒否され公爵邸を追い出されたなら決して関わろうとはしないだろう。
伯爵家に戻ることもきっと許されない。
そして今の私の地位を利用しようとしているのは異母姉のローズだけではない。
オルソン伯爵夫人もだ。
どうやらローズとの結婚に対し「妹がアベニウス公爵夫人」「今ならアベニウス公爵家と縁続きになれる」というメリットを向こうに提示しているらしいのだ。
レインはこの部分を心配して私に報せてくれた。
オルソン伯爵夫人が私やケビンに話を通しているのかと。当然そんなことはなく私は苦笑いで首を振るしか無かった。
ケビンにも一応手紙で報告はしておいた方が良いだろう。お前の家の事はお前が解決しろと帰ってきそうだが。
(アベニウス公爵家と縁続き……そこまでなりたいものかしら)
確かに古くからある名門公爵家でケビンは王家と懇意にしているし何も知らなければ華々しい家系に思えるかもしれない。
ただローズが飽きもせず私に手紙を送りつけている事からそこまで効果てきめんでは無いと思えた。
大体ケビンは私と離婚する予定なのだ。そんな不安定な地位を目当てに婿に来られても困る。
だからこそオルソン伯爵夫人は実娘の結婚に焦っているのかもしれない。私が捨てられれば公爵家の名前を使えなくなるから。
(焦って上手く行くことなんて何も無いのに)
そしてローズの結婚に焦るならもっと前から焦るべきだと思う。
恐らく彼女は同年代の貴族たちから若い娘として扱われていない。そして若くて美しい貴族の娘なら他にもいるのだ。
次期女伯爵の婿という立場に魅力を感じる次男以下はいるだろうけれど、ローズの気性と男好きにどこまで耐えられるのだろうか。
一番良いのはローズが心底惚れた男性に婿へ来て貰う事だろうけれど、多分それが一番難しかった。
きっと私と似たような立場の弱い独身男性が最終的に婿になるのだろう。
そんなことを考えているとロンの部屋に到着する。
戸を軽く叩き名乗るとすぐドアが開いた。
「ようこそいらっしゃいました」
ロン付き侍女のマーサが私にお辞儀をする。それに会釈で返した。
「エリカ姉様、来てくれてありがとう」
ロンが奥から出て来る。控えめな笑顔を浮かべる彼に私も笑顔を返した。
「今日はロン君が描いた絵を見せてくれるのよね、楽しみにしていたわ」
「うん、でも、今見直したらそこまで上手くないかも……」
私の言葉に不安そうになる彼の頭を撫でる。
「そんなことは考えなくていいの、私はロン君の絵を見に来たのだから」
そう言うと彼はホッとした顔になった。
「そっか、そうだよね。売り物にするわけじゃないし」
ロンは安堵した表情になったがその言葉に私は引っかかった。
なんというか、八歳の子供が自分の作品に対してそうコメントするのに違和感を覚えたのだ。
(まあ感性なんて人それぞれだけれど……)
ただ私が彼と同じ年でお絵描きや工作遊びをしていた時、売り物になるかなんて考えた覚えはない。
ロンがしっかりとしているということだろうか。
(もっと子供らしくあって欲しいというのは、私の我儘かしら)
上手な返しが思いつかず、そうねと無難に返事をする。
ロンは無邪気な笑顔になって私を部屋の奥に招く。
何気なくマーサの顔を見る。彼女は少し寂し気な微笑みを浮かべて私を見ていた。
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