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第二部
13.
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正直オルソン伯爵が何を考えているかわからない。
一応父親ではあるがエリカは彼とろくに話したことが無かった。
母親を無理やり手籠めにして愛人にした癖に大事にする事無く弱らせて死なせた。
死因は流行り病だったが、屋敷内で亡くなったのは彼女だけだった。
伯爵とメイドの娘であるエリカが伯爵夫人と異母姉に虐げられ鞭打たれたのだ。
ならば愛人にされた彼女はそれよりも酷い仕打ちをされていてもおかしくない。
記憶の中の母はいつも優しく微笑んでいて、幼い娘に自分の分の食べ物を分け与えていた。
(良く考えたらそれって与えられる食料自体が少なかったってことよね)
そしてそれを更に娘に与えていたなら栄養失調になってもおかしくはない。
母親もエリカと同じようにメイドとして働いていた。
なのに食事もろくに摂れず愛人としての奉仕までさせられていたら衰弱する一方だろう。
オルソン伯爵家が行ったのは緩やかな殺人だ。
主犯は恐らくオルソン伯爵夫人だが、原因を作ったのはオルソン伯爵。
メイドに手を出した事を妻に気付かれた挙句、彼女の支配権である屋敷に置いたままにした。
愛人として庇護する事も無く、寧ろ自分の身代わりのように伯爵夫人の悪意をぶつけさせた。
屋敷を辞めさせて別宅で囲うなどの手段も取れただろうに。
(伯爵は妻の実家に借りがあるから頭が上がらないって伯爵家のメイドたちが噂していたけど……)
だったら尚更愛人なんて作らず妻に媚びへつらって生きていれば良かったのだ。苛立ちと共にそう思う。
先日解雇したマレーナの事を思い出す。
彼女はレオ付きのメイドだったが、家令補佐のブライアンと愛人関係にあった。
色々悪さをした結果罪人のように連れて行かれる事になったが、彼女はその中で一つの復讐を果たしている。
マレーナの実家は彼女にレオを篭絡するよう命じていた。
その手紙を大事に保管し、己が破滅しそうになった際は私に差し出した。
そして自分がメイドと伯爵家当主の間に生まれた子であることを明かした。
自分が破滅する時は実家も巻き込むと計画していたのだろう。
その情報はそのままケビンに伝えたけれど、マレーナの実家にどんな沙汰が下されたかはわからない。
公爵邸に残った彼女の荷物を引き取る者も来なかった。謝罪の訪問や手紙なども届いていない。
もしかしたらマレーナがどうなったのかを彼女の実家はまだ知らないのかもしれない。
そう考えて何故かぞっとした。
(まあ私もマレーナの処遇を聞かされてはいないけれど)
もしかしたら一応はちゃんと家に帰されたマーベラ夫人はかなり恵まれていたのかもしれない。
そんな事を思った。
そしてそんな魔窟めいたアベニウス公爵家と魔王のようなケビンに、オルソン伯爵家は凄まじい無礼を働き済みである。
結婚式前日にローズが婚姻を唐突に拒否をした。
更に代替として差し出したのはオルソン伯爵と愛人の娘だ。
それはケビンの気まぐれと無関心から受け入れられ伯爵家も特に制裁は受けていない。
しかしその奇跡に異母姉のローズは大して感謝していないらしい。
しつこくちょっかいをかけてくる。とうとう手紙では足りずメイドをスパイに潜り込ませようとしてきた。
彼女はやろうとした事のまずさに気付いているのだろうか。
そして伯爵は異母姉の暴走をどれだけ把握しているのだろうか。
今まで散々好き放題させていたのはわかっている。
だが立場の弱いメイドや異母妹のエリカ相手でなくアベニウス公爵家にまで同じようにしたらオルソン伯爵家自体が傾きかけない。
(伯爵家が潰れても一向に構わないけれど私は巻き込まれたくない)
溜息を吐いて私は立ち上がる。
そしてメイドの名を呼んだ。
「アイリ」
「はい」
「オルソン伯爵家にメイドを一人忍び込ませたいのだけれど、適任はいるかしら?」
私がそう言うとアイリは一瞬目を見開いたが、すぐに何名かのメイドの名を挙げた。
一応父親ではあるがエリカは彼とろくに話したことが無かった。
母親を無理やり手籠めにして愛人にした癖に大事にする事無く弱らせて死なせた。
死因は流行り病だったが、屋敷内で亡くなったのは彼女だけだった。
伯爵とメイドの娘であるエリカが伯爵夫人と異母姉に虐げられ鞭打たれたのだ。
ならば愛人にされた彼女はそれよりも酷い仕打ちをされていてもおかしくない。
記憶の中の母はいつも優しく微笑んでいて、幼い娘に自分の分の食べ物を分け与えていた。
(良く考えたらそれって与えられる食料自体が少なかったってことよね)
そしてそれを更に娘に与えていたなら栄養失調になってもおかしくはない。
母親もエリカと同じようにメイドとして働いていた。
なのに食事もろくに摂れず愛人としての奉仕までさせられていたら衰弱する一方だろう。
オルソン伯爵家が行ったのは緩やかな殺人だ。
主犯は恐らくオルソン伯爵夫人だが、原因を作ったのはオルソン伯爵。
メイドに手を出した事を妻に気付かれた挙句、彼女の支配権である屋敷に置いたままにした。
愛人として庇護する事も無く、寧ろ自分の身代わりのように伯爵夫人の悪意をぶつけさせた。
屋敷を辞めさせて別宅で囲うなどの手段も取れただろうに。
(伯爵は妻の実家に借りがあるから頭が上がらないって伯爵家のメイドたちが噂していたけど……)
だったら尚更愛人なんて作らず妻に媚びへつらって生きていれば良かったのだ。苛立ちと共にそう思う。
先日解雇したマレーナの事を思い出す。
彼女はレオ付きのメイドだったが、家令補佐のブライアンと愛人関係にあった。
色々悪さをした結果罪人のように連れて行かれる事になったが、彼女はその中で一つの復讐を果たしている。
マレーナの実家は彼女にレオを篭絡するよう命じていた。
その手紙を大事に保管し、己が破滅しそうになった際は私に差し出した。
そして自分がメイドと伯爵家当主の間に生まれた子であることを明かした。
自分が破滅する時は実家も巻き込むと計画していたのだろう。
その情報はそのままケビンに伝えたけれど、マレーナの実家にどんな沙汰が下されたかはわからない。
公爵邸に残った彼女の荷物を引き取る者も来なかった。謝罪の訪問や手紙なども届いていない。
もしかしたらマレーナがどうなったのかを彼女の実家はまだ知らないのかもしれない。
そう考えて何故かぞっとした。
(まあ私もマレーナの処遇を聞かされてはいないけれど)
もしかしたら一応はちゃんと家に帰されたマーベラ夫人はかなり恵まれていたのかもしれない。
そんな事を思った。
そしてそんな魔窟めいたアベニウス公爵家と魔王のようなケビンに、オルソン伯爵家は凄まじい無礼を働き済みである。
結婚式前日にローズが婚姻を唐突に拒否をした。
更に代替として差し出したのはオルソン伯爵と愛人の娘だ。
それはケビンの気まぐれと無関心から受け入れられ伯爵家も特に制裁は受けていない。
しかしその奇跡に異母姉のローズは大して感謝していないらしい。
しつこくちょっかいをかけてくる。とうとう手紙では足りずメイドをスパイに潜り込ませようとしてきた。
彼女はやろうとした事のまずさに気付いているのだろうか。
そして伯爵は異母姉の暴走をどれだけ把握しているのだろうか。
今まで散々好き放題させていたのはわかっている。
だが立場の弱いメイドや異母妹のエリカ相手でなくアベニウス公爵家にまで同じようにしたらオルソン伯爵家自体が傾きかけない。
(伯爵家が潰れても一向に構わないけれど私は巻き込まれたくない)
溜息を吐いて私は立ち上がる。
そしてメイドの名を呼んだ。
「アイリ」
「はい」
「オルソン伯爵家にメイドを一人忍び込ませたいのだけれど、適任はいるかしら?」
私がそう言うとアイリは一瞬目を見開いたが、すぐに何名かのメイドの名を挙げた。
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