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新たな友達は野球部の間宮くん
しおりを挟む素顔を雫に見せた事で彼はなぜか僕の推しになると宣言し、今まで以上に色々な事を助けてくれるようになった。
「推しの幸せを守るのは俺の役目だから」
なんとなく以前の友人関係も気兼ねしないで話せたので良かったけれど、今は今で雫との距離も近くなり、兄弟のような距離感に感じて嬉しかった。
苦しかった中学時代が嘘のような高校生活。
未だにふとした瞬間にいじめられていた時を思い出して苦しくなる時もある。
でもこうやって友達との時間を積み重ねていけば、少しは自分を好きになって自信が持てるようになるかな。
そういう意味でもずっとそばにいてくれる雫の存在は、とても心強い。
そんな日常の幸せを噛み締めつつ、歯科検診の後は内科検診が待っていた。
新学期は色々とやらなくてはならない事が目白押しだ。
「今日は内科検診か……なんか毎日色々ある感じするな」
「でもそのおかげでジャージ登校だから嬉しいよ」
「確かに!楽だよな~~」
僕たちが教室でそんな話をしていると、隣りの席の間宮真司という男子に話しかけられる。
「高嶺の腕、白……」
彼は自己紹介の時に野球部でピッチャーって言っていたような……いかにもスポーツマンといった感じで体格がとても大きく、日焼けした褐色の肌に頭を丸坊主にしていて、あまり口数が多くない。
そんな彼が突然ポツリと言葉を発したので、僕も雫も一瞬固まってしまう。
「間宮は野球部だから、さすが黒々としてるな~~」
雫が笑って返すと、間宮君は「そうか?」と自分の腕をまじまじと眺めている。
何だかその姿が可愛くて思わずクスッと笑ってしまい、思っていた事を伝えてしまった。
「黒くてカッコいいよ。僕も間宮君みたいに男らしくなりたいな」
「いや、亮はそのままでいいんだ。推しだから」
「そ、そうかな」
雫は目を輝かせてそう言ってくれるので、変に卑屈になりそうな自分が出てこなくて済んだ。
今の自分でいいって言ってくれる人がいるのは、とても幸せな事だ。
そして思いもよらず、間宮君からも嬉しい言葉を言ってもらえたのだった。
「高嶺は綺麗だからいいんじゃないか」
「へ?」
「白いなって言ったのは綺麗だから言ったんだし」
「そ、そうなんだ……」
「ああ」
間宮君はあまり表情が変わらないので、どう思って言ってくれたのか分からなかったけど、どうやら良い意味で言ってくれていたらしく、彼の言葉に顔が緩んでしまう。
こんなに恵まれていていいのかな……周りにいい人がいっぱいいて、嬉しいな。
「ありがとう」
「俺、亮の事永遠に推すわ」
「え、なんで?!」
僕が幸せ過ぎて2人にお礼を言うと、雫がよく分からない事を言い、間宮君が吹き出す……間宮君の笑った顔、初めて見たかも。
この学校を選んで本当に良かったかもしれない。
そんな事を思いながら、内科検診の為に教室を後にしたのだった。
~・~・~・~・~・~
内科検診は男子が体育館で、女子は多目的室で一斉に行われたので、全クラスの男子全員がズラリと並んでいて、物凄い人数が集まっていた。
この高校は各学年10組まであるから、この中に結人もいるはず……なんだかんだ言ってこういうのに参加しているんだよね。
こういう行事がない日は休んでいるのかもしれないけど。
クラスが違うのでさすがに毎日顔を見る事も出来ず、学食で会わない日は休んでいるのかなと思ってしまう。
身長、体重を計測し終えて問診を終えると先生方に速やかに教室へと戻るように促されるので、僕と雫と間宮君は一緒にクラスへと戻るべく階段を上っていた。
すると上級生が内科検診の為に下りてきている事に気付かず、肩がぶつかった衝撃で足元がグラついてしまう。
「わっ…………」
「高嶺!!」
――――ズザァァッ!!――――
階段を2、3段落ちたところの踊り場で間宮君が受け止めてくれて、どうやら事なきを得たようだった。
カシャン――――
落ちた衝撃で眼鏡まで落としてしまい、自分の顔が露わになる。
間宮君の顔が目の前に……しかもしっかり目が合い、めちゃくちゃこちらを凝視している。
どうしよう、見られてしまった。
間宮君が揶揄ってきたりする人ではないと思っているのに、中学時代のトラウマは簡単には解消されるはずもなく、緊張と焦りで呼吸が少し浅くなってくる。
思わずぎゅうっと目を瞑り、自分を落ち着かせようとした、その時。
「おい、亮!!」
階下から結人の声が聞こえてきて、物凄い速さで上ってきたかと思うと瞬時に眼鏡をかけ直してくれたのだった。
「結人……」
あんなに拒絶されていたのに、ピンチになると現れて眼鏡をかけ直してくれるなんて……嬉しさでじんわりと目尻に涙が浮かんできた。
やっぱり僕は結人との学生生活を諦める事が出来ない。
どうしても昔のような彼との関係を取り戻したいと思ってしまうんだ。
それだけが、辛かった中学時代での僕の目標だったから。
「間宮君、ありがとう。結人もありがとう。助かったよ」
「…………気を付けろ」
ぶっきらぼうにそう言い放ち、階段を一段飛ばしで上って行ってしまう結人の後ろ姿を眺めながら、前ほど悲しい気持ちにはならなかった。
きっとこうやって交流をしていけば、また前みたいに――――願望にも近い気持ちを胸に抱きながら体を起こす。
「よいっしょ」
「亮、大丈夫?怪我してないか?」
雫が怪我の心配をしながら体中見てくるので、「大丈夫だよ」と笑顔で返した。
体勢を立て直したので教室に戻ろうとすると、間宮君が微動だにしないので声をかけたのだった。
「間宮君?もしかしてどこか怪我でもしちゃった?」
「……あ、いや、俺は大丈夫だ」
「よかった!凄く助かったよ、ありがとう」
「ああ、いや……礼はいいんだ」
間宮君が動きだしたので、今度こそ一緒に教室に戻ろうとまた階段を上り始めた。
そう言えば間宮君に眼鏡外した顔を見られたんだった……でも口数が少ない人なので、何も言われる事もなく、ホッとしている自分がいる。
高校では割と素顔を見られても平気なのかもしれない。
まだ完全に外すのは勇気がいるけれど……そんな事を考えていると、後ろを歩いていた間宮君が珍しく声をかけてくる。
「高嶺」
「なに?」
「あー……呼びにくいから俺も亮って呼んでいいか?」
僕はまた親しい友人が出来たように感じ、喜びが溢れてしまい、彼の手を握りながら「もちろん!」と返した。
「じゃあ僕も真司って呼んでいい?」
「あ、ああ」
やった!と喜びを爆発させていると、隣りの雫が「俺は亮(推し)が幸せそうで嬉しいよ」と笑ってくれる。
ずっと再会したいと思っていた人に会えて、優しい友人まで出来て……幸せ過ぎる展開に泣きそうになるのを堪えながら、皆で教室へと戻ったのだった。
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